日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

伝統と革新性

2011-04-11 12:36:30 | ビジネス
昨日、テレビを見ていたら2つの老舗企業が取り上げられていた。
と言っても、同じ番組では無い。
たまたま同じ時間帯で違う番組で、取り上げられていたのだった。

一つの老舗企業は、今回の「東日本大震災」で被災した岩手県陸前高田市の老舗醤油会社
老舗といっても、企業規模とてしては中小企業。
昔ながらの伝統的手法で、手間ひまをかけ丁寧な醤油づくりをしてきた会社だ。
番組では、その被災した老舗企業の若い社長と社員たちの姿を追った内容だった。
その中で印象的だったのは、津波で流された「経営理念」を書いた掲示板が見つかり、社員の方々が見つけたときの嬉しそうな表情をされていたコトだ。

その企業の「経営理念」には、お金儲けについての言葉は一切ない。
「従業員と地域社会の中で、醤油づくりを通して健全な関係を持ち社会に貢献する」という内容のことが3項目ほど書かれていた。
その「時代にぶれない経営理念」が社員一人ひとりに、シッカリと理解されてきたからこそ「老舗」の看板があるのでは?と感じた。
それだけではなく、その理念を理解している社員がいれば、会社の再建は大丈夫だ、と確信に似たようなものを感じたのだった。

事実、被災したことを知ったお客様から「醤油づくりができるようになってからで結構ですから」という内容の手紙と共に、前払いとして代金が送られてくるという。
それだけお客様一人ひとりと信頼関係ができているからこそ、「この企業を応援したい」という思いが、顧客にあるのだろう。

もう一つは、石川県にある真鍮製の茶器などを製作する老舗メーカー「能作」が取り上げていた。
これまで高い鋳造技術を持って真鍮製品を作ってきたが、新機軸として錫100%の製品作りを始める過程や現在についての内容だった。
錫という金属の特性など、まったくの素人の私にはわからないが、どうやら「錫100%の製品作り」というのは、冒険どころではなく無謀な挑戦ということらしい。
だが、その挑戦をあえてするコトができるのも、やはり老舗の力なのだと思う。
むしろ、真鍮製品を作ってきた技術があるからこそ、無謀な挑戦ができたのだと。
そして「伝統」という文化があるからこそ、革新的な挑戦ができたのでは?と改めて思ったのだ。
「伝統」という懐の深さが、新しいチャレンジを可能としている、と言えるのかもしれない。

2つの企業は決して大きな企業では無いが、「伝統」という文化があり、その文化があるからこそ社会から信頼され、革新的な新しい挑戦ができたり、再建への道を歩み始めるコトができるのでは無いだろうか?
もしかしたら、「日本の底力」というのは、そのような「伝統」という懐の深さなのかもしれない。