■五月十四日千僧駐屯地祭
明後日の五月十四日は第三師団司令部が置かれた千僧駐屯地祭である。
第三師団は近畿地方一帯をその管区内に収める部隊である。
師団駐屯地祭ということで普段は中々目に出来ない第三師団を構成する各種装備品や師団隷下部隊の各種車輌をつぶさに見る事が出来る。
なお、当日は簡単な手荷物検査を受ければ誰でも終了時刻である1500時まで立ち入る事が出来、自衛隊が装備している装備品や、日ごろの訓練の一端を訓練展示で見る事が出来る貴重な機会である(写真は信太山)。
■師団とは何か
初歩的ながら、多く質問されるのが師団とは何かということだ。
ここからは昨年十月に実施された名古屋の第十師団記念行事の写真を用いる。
師団とは、一方面の作戦全般を独力において遂行可能な戦略単位である。
現代の戦闘は、近接戦闘を行い地域占領を行う歩兵(普通科)と、協同行動をとりつつ直接火力支援・対戦車戦闘を行う機甲科、そして長距離火砲を用いた全般支援を介して敵の火力制圧を行う砲兵(特科)、こうした戦闘部隊の前進支援や防護施設構築を行う工兵(施設科)と各種兵站支援を行う施設科により遂行される。
こうした戦闘行動を実施するのが戦術単位である旅団、若しくは連隊戦闘団である。
戦術単位を主攻と、それを掩護する助攻、そして主攻の交代や決戦(攻勢若しくは防禦によって戦闘に決着をつける決断により実施される)に備えた予備部隊と、その支援部隊を統括した大部隊を師団と呼称する。
■師団駐屯地祭とはどのようなものか
師団駐屯地祭は、姫路のような特科だけの駐屯地、今津のような機甲科主体の駐屯地、福知山や信太山のような普通科主体の駐屯地祭とは異なり、全ての職種が参加し、式典を行う。従って、戦車や榴弾砲、装甲車は無論のこと、対砲レーダーや対空ミサイル、人命救助システムや野外手術車といった珍しい装備品も式典に参加し、防衛出動以外にも災害派遣などで使用される装備品が展示される。
■駐屯地祭の進行
第十師団司令部のある守山駐屯地は名鉄瀬戸線守山自衛隊前駅から近い為徒歩で行く事ができるが、千僧駐屯地は、JR福知山線伊丹駅や阪急電鉄伊丹駅から距離があり、徒歩での移動は困難である。しかし、この両駅から15分~20分間隔で自衛隊が運行する無料シャトルバスがあり、これを利用すると良いだろう。
駐屯地につくとまず手荷物検査がある。同時多発テロ以降、こうした配慮が必要となったのは残念なことであるが、開かれた式典を行ううえで必要なことだろう。行事は部隊整列が1000時より開始されるが、その一時間前には駐屯地は開放されており、視界良好な立体席や、駐屯地内を散策すると観閲行進に備え整列している車輌を見る事が出来る。なお、くれぐれも立ち入り禁止地域には立ち入らないように気をつけなければならない。
1000時が近付くと、部隊入場に備え各職種の隊員が整列を始める。小銃を路上に並べ隊員が一糸乱れぬ整列をした様は中々壮観であり小気味良いものだ。
式典は指揮官訓示が行われ、続いて来賓紹介や自治体首長や国会議員の訓辞が行われる。なお、2005年度末に第三師団は即応近代化師団に改編され、重装備を大幅削減し都市型戦闘に対応した普通科主体の師団に改編された為、この点が訓示されるのだろう。
訓示終了後は、部隊が退場し、観閲行進の始まりである。駐屯地祭を観ていると第十師団隷下の部隊はこのとき駆け足で退場するが、第三師団はどうであろうか。(確か昨年第七師団も駆け足だったが、中部方面隊記念行事では整然と行進して退場していた)
観閲行進は徒歩部隊の行進から開始される。普通科連隊三個を基幹とする第三師団である為普通科が徒歩行進を行うが、この際には連隊長が乗車した82式指揮通信車が先頭を走り、後ろを各種装備を持った普通科隊員が行進する。
行進に併せ音楽隊の演奏が行われるが、徒歩部隊の行進が終了するとテンポの早い軽やかな演奏に変わる、車輌行進の開始である。普通科部隊も軽装甲機動車や高機動車によって車輌化されているが、重迫撃砲中隊や対戦車中隊も後進に加わり、こうした装備が群れを成して走る様は中々こみ上げてくるものがある。
しかし、その後、更にインパクトの強い特科、機甲科や各後方支援職種になるため、圧倒されている場合ではない。こうして、車輌行進が終盤に近付くと、団扇を叩くような音が聞こえる。祝賀飛行だ、ヘリコプターの編隊が上空を通過し、式典のとりを務めるわけだ。
観閲行進が終了すると、音楽演奏や太鼓演奏が行われるが、式典の行われたグラウンドでは作業が開始される、というのも、この後に空包を用いた訓練展示が実施される為である。
大阪市が近い、という理由ではないだろうが、第三師団の訓練展示はサービスに富んでいる事で知られる。
通常の訓練展示は、仮想敵部隊が一角を占拠、これに対し偵察部隊が斥候を行い、判明した目標に対しヘリコプターによる観測や攻撃を行い、普通科連隊の情報小隊がヘリボーンにより降下、また敵部隊に対して特科火砲が攻撃を加える。高射特科や対戦車中隊の車輌が展開し掩護する事も行う。特科火砲の攻撃は空包を用いるのだが、155㍉もの榴弾砲である為、凄い迫力である、その砲焔はかなり大きく写り、空気の振動となって見学者に発砲を知らせる。百聞は一見にしかず、この文字通りの光景である。
普通科の前進が始まると戦車も、ともに前進し、機銃による掃射を加え、停止・発砲!という動作を繰り返す。
戦車砲も突如発砲する瞬間は場内から歓声と驚きの声が同時に沸きあがる。従来は74式戦車と徒歩の普通科部隊であったのが、今日では軽装甲機動車による機動運用を展示する。
一般的な訓練展示は銃剣突撃にて終了だが、最近は部隊の個性が反映される。実施されるまでのお楽しみ、というわけだ。あの先崎陸将が師団長を務めた部隊であるし、期待ができよう。ゲリラコマンド対処の展示であれば、この後、若しくは冒頭に敵が建造物を占拠し、これに対して部隊が突入するという展示が行われるが、場合によっては仮想敵部隊が装甲車輌を保有し、我が戦車部隊に攻撃を仕掛けるという描写も見られる。
訓練展示は1145時頃から実施され、状況終了まで十五分ほどであるが、ストーリー性があり、迫力もある、そして十五分がいつもよりも長く感じる瞬間である。
これが終了した後は、装備品展示が行われ、各種装備品を間近に見る事が出来るが、この頃には各種装備はチビッコたちの遊び場になるため、詳細な写真は1500時間際の人通りが少なくなった後か、若しくは朝一番に撮ってしまうというのがいいだろう。
模擬店なども設置され、文字通り駐屯地祭、といった状況である。また駐屯地資料館も見学できる場合があり、過去の装備品や駐屯地の歴史、旧帝国陸軍の装備や資料も展示されているので、こちらも是非見ておきたい。
以上が師団駐屯地祭の流れである。
■静浜基地航空祭
なお、
静岡県にある静浜基地航空祭が同日実施される。
小生も展開を検討したのだが、距離的な関係もさる事ながら、即応近代化師団改編後の第三師団をみよう、ということで断念した。T-3初等練習機のラストフライト、しかも“帝國海軍風”スペシャルカラーのT-3が飛ぶとのみ確認情報もあったのだが、断念した。「千僧は遠いけど静岡なら」という方は是非お出かけを薦めたい。また、次週五月二十一日には
HARUNA
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滋賀県の大津駐屯地祭、月末五月二十八日には東千歳の第七師団記念行事と京都府の大久保駐屯地祭(小生は東千歳展開)が実施されるので、興味のある方は是非どうぞ。