本日、所用にて陸上自衛隊某駐屯地へ展開した。展開の理由は、挨拶を主たる目的であるが、軍縮国際政治を研究する小生にとり、駐屯地司令がハーグでも活躍をした化学兵器軍縮に関する専門家であるとのことで、お話を聞かせていただくという目的もあった。
小生は、平和学に対するリアリズムの付与も重要な研究分野とし、軍備管理以外にも広義の意味での安全保障政策研究や自衛隊組織研究も行っているものの、やはり第一線で国民の生命財産を護る重責を預かるだけあり、その気合の入り方は並ならぬものであり、感服尊敬の一言に尽きる貴重なお話を聞かせていただいた。
さて、中部方面隊管区では、若狭湾の原子力発電所密集地域や、東海・東南海・南海地震対象地域を警備管区に含めている事もあり、防災は重要な任務の一つである。例えば第三師団を普通科重視の政経中枢型即応近代化師団に改編した遠因の一つに災害時におけるマンパワーの確保もあったことと思う。
駐屯地祭などにおける自治体首長の挨拶を色々と拝聴した限りでは、確かに部隊の精強化や団結の強化を訓示しているものの、やはり災害派遣について言及している。地方自治法の骨子が住民への行政サービスである事を考えたならば妥当ではあるものの、本日、駐屯地司令のお話を聞いた限りでは、災害対処は緊急対処的な部分は自己完結能力を以て任務に当たる自衛隊の分野ではあるものの、恒久的な、云わば戦略的な対策全般は自治体に任せられた責任分野である事を認識した。
報道番組などでは、あたかも自衛隊の出動があれば、全て円満解決というような誤解が為されているが、やはり主役となるのもは自治体であると感じた。この点、現況に満足することなく災害対策を充実させていく事が必要となろう。
災害時は何が起こるか予測困難な事例が極めて多く、この点、例えば鳥インフルエンザに対する災害派遣は重要な防疫実地経験の機会となったことを挙げつつも、対して東海村臨界事故に言及した際、指揮官は部下の生命全般に責任を持っているその重責をひしひしと感じた。しかし、文民統制を徹底する自衛隊にあって、その生命を左右する命令を発令する人間は自衛官ではなく政治家である事も感じた。
詳細はあえて掲載しないものの、やはりある種の訓練に対して、中央官庁における古典的という以外ないような縄張り意識と闘争のようなものがあることを聞いた。
政治はいかにあるべきか、そして自治体の本質的役割は、補完的に自衛隊に何が求められるか、国民保護法や有事法制(行政サービス維持困難となる大規模災害も無論有事である)等が整備される中、行うべき事は山積されているように感じたが、一方、平時における努力が“減災”につながる、と本日改めて確信した次第である。
HARUNA