北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

平成18年度 千僧駐屯地祭 重箱の隅

2006-05-15 20:52:54 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

 今回は、昨日の駐屯地祭における様々な注目点を、重箱の隅をつつくような形で紹介したい。しばしお付き合いいただきたい。

■対人狙撃銃

写真は訓練展示における写真で、新編された対人狙撃班の隊員で、普通科連隊の本部管理中隊に所属している。対人狙撃銃M-24を携行した隊員である。

Img_2127  何かの雑誌に「野生のガチャピン発見」とあったが、確かにそのような印象を受けるこの服は、ギリスーツといわれる。

 狙撃において重要な点はその射撃技量のみで決まるものではなく、目標発見能力、自己位置秘匿能力などが必要となる。特に、狙撃銃は発射する弾丸以上の攻撃能力を有しないため、発見されれば優勢な火力によって制圧される公算が高く、また優先目標を発見できなければ、有効な戦闘を展開する事が出来ない。一種特殊部隊的な能力が求められるのが狙撃手である。特に、従来の64式小銃に照準眼鏡を搭載したものは、運用する部隊付狙撃手も独立した部隊運用が為されるのではなく、普通科部隊と行動を共にし、必要に応じて脅威排除を行うのが任務であった為、いわば米軍の能力証明射手のような運用が為されていた。これが今後は独立運用される対人狙撃班となっていくのだろう。

Img_2129  使用する小銃は米軍でも使用されているM-24である。7.62㍉小銃弾を使用するもので、ボルトアクション式、800㍍ほどの有効射程能力を有する。装弾数は五発であるが、照準眼鏡の倍率などについては確認できなかった。装備品展示では第37連隊のものが展示されていたが、樹脂製ケースに収められた状態で細部の撮影は残念ながら禁止であった。

 近年、特にイラク治安作戦の戦訓から米軍では連発式の狙撃銃への移行が計画されており、部隊の能力証明射手などはM-14を、また30口径仕様のM-16が開発されている。そもそも、M-24は民間型M-700が安価であった為採用されたものである為、日本の場合必ずしもM-24でなくとも、例えばSATの使用するドイツ製PSG-1でもよかったのでは、と思う。

■連隊長

 第三師団記念行事は、観閲行進では第十師団と比較した場合、その規模が若干縮小されている事は述べたが、イラク関係の報道で知られるアノヒトが観閲行進に参加していた。

Img_2014  写真は第七普通科連隊長、佐藤正久1佐。

 イラク復興業務支援隊隊長として知られるが、同時に化学戦におけるわが国の権威として知られ、湾岸戦争以後の戦間期におけるイラク査察任務などにも参加し、化学科出身初の陸上幕僚長となる可能性が高い。

 昨年の福知山駐屯地祭ではイラク復興人道支援という看板を掲げた高機動車が行進し、市中行進では暗視ゴーグルを装備し行進、近接戦闘訓練展示では、ホイールローダーのバケットに普通科隊員を乗せ建造物突入展示や、携帯放射器によって仮設陣地を焼き払うなど、物凄い展示が行われたという。行けば良かった・・・。

■過渡期にある近代化

 対人狙撃銃の装備により、近代化が進んでいるようにみえる第三師団であるが、近代化が過渡期の部分もあることが、今回の駐屯地祭で見る事が出来た。

Img_2100  64式小銃を構える偵察隊員。

 89式小銃は戦闘職種を中心に装備化が薦められているが、第三師団では更新は完了していないようだ。戦闘職種である機甲科に、偵察隊は所属されている。64式小銃は30口径弱装弾を使用しているため、SS-109規格の22口径弾を使用する89式小銃と比較し、威力などの面で劣る点が指摘される(ただし、貫徹力の面の話で、射程などの面では通常型30口径弾はSS-109を凌駕する)。予算は有限である。しかし、軽装甲機動車も、第十師団と比較し、装備開始がかなり遅れたことを考えれば、政経中枢師団というものがどのような運用を考えているかに若干の疑問を感じてしまうのは小生だけであろうか。

Img_2113  写真は62式機関銃、同じく第三偵察隊に装備されている。

 部品数が非常に多く部品脱落や装填不良、排莢不良で名高いが、1968年に不良部分が多すぎたため改善型が出され、今に至る。

 しかし、62式言うこと機関銃とか、CRCを塗ったら引き金を引かなくとも出続けたとか、色々な話を聞いた銃である(人によっては名銃)。ライセンス生産されたMINIMIに関しても問題を聞くが、機関銃は近接戦闘における基幹火器である、こうした点はなんとかならないものであろうか。

■装備品展示

 既報であるが、装備品展示について紹介したい。車輌展示に関しては、軽装甲機動車や93式近距離地対空誘導弾、87式対戦車誘導弾、155㍉榴弾砲FH-70、74式戦車、小火器や新型の野外炊事具(着火用のガソリンが不要となった)等が展示されていた。しかし、ここでは以下の二点に絞り解説したい。

Img_2104_1  化学防護服が展示されていることは多々あるものの、その体験試着が行える事は意外と少ない。

 00式化学防護服はトーレイ(だったかな)により製作されたもので、神経ガスを含むあらゆる化学剤に対応でき、同時に完全密閉式ではなく通気性を有する。戦闘防護服に関して伝え聞くところでは匍匐前進時に化学剤が浸透してくるという話を聞いたが、神経ガスの場合は拡散が早い為、恐らく糜爛剤を示すのだろう。手にとって、若しくは着用していると、確かにその可能性は全くは否定できないものの、想定は不要だろう。理由は裾の部分がゴム留めされているので、完全密閉されたものではない事から出た話であろうと思うが、そこから入り込むほどの量の化学剤が撒かれるとは考えにくい為だ。まあ、浸透圧の高いサリンに無力なドーレン気密服を使用するよりは安全であろう。

Img_2095_1  その隣にあった暗視ゴーグル体験使用コーナー。暗視ゴーグルの体験使用も小生は初めてみたものだ。

 てっきり、ガス天幕かと思った、そういうと隊員に笑われた。ガス天幕とは新隊員の前期教育で実施される。ガスマスクの重要性を知る為、ガスマスクを装着しテントの中で催涙ガスを充満させ、あえてそこでマスクを取る、涙を流しながらその重要性を知るというものであったが、流石に体験させることはないか。

 暗視ゴーグルは使ってみた経験で伸ばした手のひらが指先までようやく見える程度、視野は何度くらいだろうか、人の顔は良く見えたが、視野は非常に狭かったのが印象だ。価格は300万円ほどで、新型の単眼式の配備が進んでいるとのことだ。

HARUNA

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