DAICON FILM渾身の作品というべきか、八岐之大蛇は実は三千年前に送られてきた宇宙人の侵略兵器であった!現代に甦った八岐之大蛇と防衛軍が壮絶な死闘を繰り広げる!偶然、中古で見つけた絶版の傑作を、やや高かったが定価の半額ほどで購入した。
舞台は神話のふるさと、山陰の米子市。突如現れた巨大怪獣に対して防衛軍第13連隊の毛利大佐は戦車やロケット火砲を駆使して果敢に反撃、壮絶な戦いに燃え上がる米子市!
といいますか、まあ、小生、何せ自主制作映画ですし・・・とたかをくくっていたのですが、自主制作と侮る無かれ!さすがは特技監督を樋口真嗣、監督を赤井孝美がやっているだけあって、ストーリー的にも特撮的にも非常に見応えがあるものでした。役者が素人なので、それがそれで何か、北野武の映画みたいないい味を出しているのである。
普通科隊員が64式小銃をもっているのがいたりAK47の隊員がいるのは気のせい、連隊なのに戦車隊がいるのは管区隊編成の状況を維持しているからだろう。
各種装備には、新型の84式戦車(74式に暫定的に複合装甲つけた?もしくはM-1にメルカヴァ風砲塔搭載したもの?)がアーケードを疾走して道路がメチャメチャになるシーンも良い味出してる。観測ヘリが撃墜され、どうせ当たらないだろうケド、知~らねってHIMARS(というか単なる新型多連装ロケット)発射したりして市内に大被害、マスコミと防衛軍の確執など、唸らされるものも多い。
撮影では各所に自衛隊が出てくるが、恐らく駐屯地祭の際に撮影したのだろう。防衛軍出動の際に指揮官毛利大佐が訓示するシーンに併せて出てくる様子は、明らかに千僧駐屯地のものであった。道路の向うにある建造物群や二重の歩道橋など、恐らく間違いないだろう。また、登場する自衛隊車輌は第三施設大隊の所属、第三特科連隊第五大隊(昨年度末で廃止になったぶたいですね)、駐屯地祭から所属駐屯地(大久保や今津)に戻る様子をそのまま「防衛軍出動」に仕立て上げている。こんなシーンも阪急電車で一本!さすがはご当地大阪のDAICONフィルムである!怪獣に止めを刺すべくロケット砲による射撃シーンもまあ、設定としては日本原の特科連隊(ロケットはないけどネ)というものなのだろうが、駆動部分は105榴のそれに酷似していた。装備品展示の際にFH-70とかクルクルさせてくれるけど、そんな感じで撮影したのだろう。蛇足ながら思い出したのが1980年代前半に第三師団に所属していたという知人がけっこういるのだが、もしかして端の方に写ってたりするのかな?と。
戦車の砲撃では歯が立たず(どうでもいいけど、「どけぇッそこの民間人ッ!」ってシーンにラーゼフォン第一話を思い出した。多分影響はあるのだろう)、「我が部隊には無いが有事である!」として出撃を要請したのはAH-1S.確か公開された1984年ってコブラが配備されたばかりの時期である。よく映像撮れたなあ~、って、俺もAH-64Dを三月に撮ったばかりだった。多分そんなノリと駐屯地祭のシーンを組み合わせたのだろう。航空部隊出撃シーン(コブラの他にOH-6の発進シーン)は、管制塔の形状から八尾ではなく明野で撮影したようである。大阪から近鉄電車で一本!さすが大阪から始まったDAICON フィルムだ!
しかし、ロケットの誤爆シーンは凄い。国道九号線沿いに山陰放送、高島屋、米子市役所、米子国際球場、湊山公園を次々に爆砕、遂には連隊戦闘団本部も誤爆してしまい、「クーデターかも!?」っていう連隊参謀の進言で遊撃隊を派遣、特科部隊本部を急襲!
何がどうなったか別として遊撃隊が突入「貴様らのクーデター計画はお見通しだッ!」となるのだが、既に多連装ロケットの13斉射を加え大惨事(後ろのレーダーをみると、明野駐屯地で三月にスクラップになって放置されていたレーダーにソックリ)。友軍相撃により戦車部隊にも損害が出て(アーケード街走って自滅したり、怪獣にやられた以外にも損害が結構出てた)膠着した戦闘をヘリがTOW攻撃により怪獣を米子城址から海に落とし、宇宙人が「価値観が違う」と帰ってしまって一件落着。
作品が作品なら、キャラもキャラ、手柄一番取りを掲げ操縦主のヘルメットを足で蹴り上げながら「帰れ蚊トンボども~」とヘリに絶叫する戦車隊長吉川少佐、「命中精度悪くても良いか命令だし」、と撃つロケット砲兵隊長三輪大尉、一旦敵が動かなくなると撃破撃破!と喜び宴会の準備を始め、再度活動開始の報告を受けると「宴会は中止ッ!会計科は撤収!」と叫ぶ連隊幕僚、「私は人道上何も問題なく戦後最大の手柄を上げた」と喜ぶ連隊長毛利大佐。味が出ていてよろしい!
ううむ、目茶苦茶だけど面白かった。この面白さは観ていただかないと伝わらないかな?と。皆さんもお暇でしたら是非どうぞ。「惑星大怪獣ネガドン」も然り、自主制作とは奥が深いのだ。
HARUNA
(評論及び自衛隊写真は北大路機関の著作物である、ポスターに関しては公示のものである為著作権上の点は不詳であるが、転載はご遠慮下さい)