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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

映画『日本沈没』の再制作に関する一考察

2006-06-14 17:01:06 | 映画

 4月のセキュリタリアン(防衛庁広報誌)だったか、第一ヘリコプター団が映画『日本沈没』の撮影協力で参加したことを知ったが、いよいよ七月、『日本沈没』の公開が迫っている。

 さて、SF通ならば、若しくはSFという概念を知っていれば小松左京の『日本沈没』『首都消失』『復活の日』『さよならジュピター』『エスパイ』といった映画化作品群を聞いた事が無いという人はいまい。特に、『日本沈没』は映画化は二度目(原作が発表された1973年に映画化、テレビドラマ化もされた)、今回の監督は平成ガメラシリーズの特技監督、ローレライの監督を務め、伝説的なアニメ作品となったGAINAXのエヴァンゲリオンの製作にも携わった樋口真嗣氏で、定評在る特撮のノリでのパニック作品は、小松ファンでなくとも待ち遠しい今年度最注目作品の一つである。

Fh010002  なお、原作は地殻変動によりユーラシアプレートと太平洋プレートに狭間にある日本列島が、大規模な地すべりにより海面下に沈むというもので、映画化の際には原作に描かれた東京大地震や富士山噴火といったスペクタクルシーンが凄かったものの、原作で7000万人助かったのが予算の都合で3500万人になるなど(そういえば角川の『復活の日』は生存者が一桁減っていたような)、若干腑に落ちない点はあったものの、やはり迫力のあるものであった。

 特に小松氏の作品の真骨頂は、作品自体の着眼点ではなく、経済誌記者を経験した事もある氏の膨大な情報力から来る“説得力”の一言に尽きよう。小生は、本ブログを展開する程度に若干の軍事に関する知識を有しているものの、特に軍事面にだけ着目しても原作を読む限り(未来をテーマとした作品は別として)説得力があり、政治、経済からお茶の間まで描いた創造力(創造力もさることながら)には脱帽の一言に尽きる。

Scan20111  さて、残念ながらリメイクされた『日本沈没』については、小生が有している情報は伝聞情報の域を出ないため、若干、話のベクトルを変えて小松氏の作品について述べたい。

 小松左京短編集というものがあるが、彼は職業が駆け出しの時代、娯楽に奥さんにラジオを買うこともできず、仕方なく原稿用紙何枚かに短編小説を書いて出勤したという話や、京大文学部時代から小説を書き始め、中々売れず友人の機転(?)で廃品回収に出し、焼酎で一杯やったなどのこともあり、“書き溜めた”量は膨大なもので、特に主人公と数名を除き世界中から一斉に人が消滅した異常事態を描いた『こちらニッポン』や、文化大革命により世界から隔離されていた中共に宇宙人が侵略し、対応が後手後手に廻るうちに主人公の新聞記者が大きな時代の波に飲み込まれていく『見知らぬ明日』、少年向けの娯楽冒険小説というべき『見えないものの影』などなど、映画化が期待される作品は非常に多い。

Scan20115  温故知新というべきか、こうした埋もれた名作も映画化が検討される事を望んでやまない。また、未来における木星太陽化計画を巡る様々な出来事を描いた『さよならジュピター』、これは映画化を前提としたノベライズ作品であったが、特撮技術が向上した今日であればどのような作品になるのか、樋口真嗣氏の力でこちらもリメイクを期待したいところだ。更に、物理的に首都東京が世界から隔絶されてしまい、残った日本が冷戦という国際情勢下で如何に動くかを描いた大作ながら、映画化に際しては低予算に泣いた『首都消失』のリメイクも期待したりする。原作を読まれれば、政治、経済、軍事と各々の関心分野に引き込まれるだろう。小生としてはソ連両用戦部隊の北海道接近、訓練名目で出動する北部方面隊と暫定首都名古屋の緊張など、秀逸であった。

 だが、なによりも小松氏の新作を期待してしまう今日この頃である。

 ちなみに、筒井氏のパロディ、『日本以外全部沈没』もトルネードフィルムにて映画化、九月公開予定である。これもある意味期待できる作品だ。

 HARUNA

 (本ブログの評論及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (2)
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