■米軍再編と日米関係
今に始まったことではないが、北朝鮮のミサイル発射準備問題や陸上自衛隊のイラク復興事業終了派遣部隊撤退と並び、米軍再編関連のニュースが多く組まれ、また報道として扱われている。
自衛隊と米軍の関係が今後一層密接なものとなるということに危機感を煽る論調や、日本側費用負担を国民一人当たりの費用負担に当て嵌めて論述するメディアもあり、些かメディアの過熱報道の様相を呈していると感じるのは小生だけであろうか。
本論から先んじて論述すれば、米軍との一体化に関しては自衛隊が国土防衛という本質的任務を達成する為には実戦経験を有する軍隊との関係性が重要であるし、装備品体系の相互依存関係を考えれば一体化ということは不可避ともいえる、少なくとも国民的コンセンサスに基づく独自防衛構想でもなければ対案たりえないであろう。また、米軍の世界戦略に取り込まれる、との議論に関しても今日の国際関係を考えれば多かれ少なかれその関係性の中に存在し、敵対的友好的という相違もさることながら、米国の国際戦略がグローバルなものである限り、米国の国際戦略や世界戦略との関係性は必至のものであろう。
他方、費用負担に関しては所謂思いやり予算に含まれる経費一部分担金がドイツやイギリスと比較した場合の観点からやや多い観は否めないが、外務省の展開する二国間関係によって成立したものである事から、防衛予算から捻出されているものではあるが、両国の世論や交渉過程から考えるものであり、高い安いというものとは別次元から考えるべきものであろう。
■米軍再編の日本分担金
米軍再編に関する移転や代替費用建設費用に関して、7000億円という日米防衛閣僚会談の数値から三兆円という数値まで差異があるものの、方向としては財源を防衛予算から捻出という点では一致を見ているようである。こうした中、日本における財政状況は年々厳しさを増し、防衛予算に関しても制約が年々増加している。
対して、自衛隊に関しては冷戦終結以降緩慢となった装備品世代交代が転換期を迎える時期にあり、目下使用されている装備品の耐用年数の関係上、近代化が必要な磁気を迎えている。特に、新防衛大綱により装備品定数が縮減されたことは記憶に新しいが、軍事装備体系の世代交代に伴う価格上昇はインフレ率や経済成長率を差し引いて余りある度合で進展しており、この点から大綱水準の引き下げによっても対応が困難となる状況に進展しつつあり、加えて、この米軍再編に伴う経費負担の問題が生じている訳である。
■転換期の自衛隊
従来の自衛隊にあっては、本土直接武力侵攻における国土防衛任務、そして広範に展開する商船通商網維持の観点からのシーレーン防衛、付随的なものとして国内における大規模災害に対する緊急対蹠的な任務が付与されていたものの、これに対して1990年代より国際平和維持活動や国連平和維持活動が加わり、更に2000年代よりテロとの戦いという新規命題、加えて弾道ミサイル防衛という部分が書き加えられた。
こうした中で、防衛予算から米軍再編に伴う分担金捻出を行う場合、特に自衛隊は米軍を護る為の軍事機構ではないため、特に拙速な判断は避け、予算措置を講ずる必要があるといえよう。
HARUNA