■舞鶴展示訓練2007
海上自衛隊舞鶴地方隊、第3護衛隊群を中心として実施された舞鶴展示訓練。本日は7月29日に実施された訓練を掲載したい。
舞鶴展示訓練は、二日間にわたって第3護衛隊群旗艦のヘリコプター護衛艦「はるな」艦上より撮影した。基本的に実施内容は同じであるので、二日目の展示訓練特集は、ハイライトというべき写真を厳選して掲載したい。なお、今年度(2008)の展示訓練は第3護衛隊群の護衛艦多数がハワイへ環太平洋合同演習に派遣されており、地方隊HPをみても現段階で開催の予定は記載されていない。
第一日に続いて乗艦するのは旗艦、第一日目と同じく「はるな」。旗艦に相応しい威容を誇る二門の5インチ砲とヘリコプター護衛艦ならではの巨大な後部航空機設備が本艦の特徴だ。満載排水量は6800㌧、海上自衛隊にあって最古参の護衛艦である。
『はるな』に続き、出港準備が進められているのは、舞鶴地方総監座乗のイージス護衛艦『みょうこう』。
満載排水量9500㌧の船体には、98発の各種ミサイルとイージスシステムに関する諸設備が搭載されており、世界的に見ても有数のポテンシャルを有する『こんごう』型ミサイル護衛艦の三番艦である。
第63護衛隊の一隻として訓練中の新鋭イージス艦『あたご』。満載排水量10000㌧と海上自衛隊最大の護衛艦である本艦は、ヘリコプター運用能力を有しており、航空関係設備を配置する関係からミサイルの垂直発射装置(VLS)の多くを前甲板に移している、その結果、艦のシルエットは、いわゆる富士山型となっており、美しいのが特徴だ。
展示訓練において受閲部隊の旗艦を務める『はるな』、その艦上に鍛冶3群司令以下司令部幕僚が並ぶ。背景にみえる巨大なパラボラアンテナは5インチ砲を操作する射撃指揮装置1型。加藤総監は、『みょうこう』艦上。『みょうこう』は舞鶴地方隊の護衛艦では無いが、やはり指揮官は大型の艦でなければ格好が付かないということか。この点は士気の面からも重要である。
加藤総監に対して敬礼!喇叭が鳴り響き艦橋の乗員一同も不動の姿勢。強力な水上戦闘艦が列を組み日本海の中心で堂々の航過、水平線まで透る大海原を背景に、動く護衛艦、この感慨は、実際に展示訓練や観艦式を観覧しなければ感じられない独特な空間域だ。
『みょうこう』、満載排水量9500㌧、ガスタービン四基の出力は10万馬力に達し、多目標の経空脅威にたいして同時対処が可能なイージスシステムを搭載、近年の改修により弾道弾迎撃能力を有するに至った本艦は、文字通り日本国の基本権や平和、主権を好ましからざる強制力から防御する盾である。
護衛艦『みねゆき』、舞鶴地方隊第24護衛隊の護衛艦で、護衛艦隊用の汎用護衛艦として建造された『はつゆき』型の3番艦、満載排水量は4000㌧に達し、各種ミサイルやヘリコプター運用能力と格納庫を備え12隻が量産された。本型の整備より海上自衛隊の洋上作戦能力を大きく前進させた護衛艦。
ミサイル艇「わかたか」、ミサイル艇機動展示における一枚。満載排水量240㌧の船体には16200馬力の強力なガスタービンエンジンが搭載されており、44ノットの俊足を活かして対艦ミサイルによる一撃離脱を任務とする。また、76㍉単装砲を搭載しており、哨戒任務に際しては工作船侵入などに対しても十分な能力を発揮することが期待されている。
乗員が自衛艦旗を振ってくれている。こちらも観覧者が手を大きく振ったり、帽子を振ったりしていた。ミサイル艇は舞鶴警備隊に所属しており、護衛艦を含む艦船に不可欠な基地機能の維持や不審者の侵入、破壊活動から基地機能を防護することが、その任務である。
海上保安庁の巡視船「ほたか」。北朝鮮工作船侵入事案を受けて建造された高性能巡視船で、高い速力と巡視船としては強力な武装に加えて防弾設備や攻撃を受けた際のダメージコントロール機能を有している。この種の艦艇は、例えば哨戒艇として、高速輸送艇として海上自衛隊にも必要な装備である。
観閲飛行とともに飛行展示を行うP-3C哨戒機。戦術コンピューターと連動させ潜水艦を音波から探知するソノブイ、そして機体後部に搭載された磁気感知装置により水中目標を発見するこの哨戒機は、日本の海上交通路を脅かす潜水艦に対しては猛禽の如く威圧力を発揮する。海上自衛隊はこの航空機100機を導入、80機を運用中。
P-3Cを広角レンズで撮影。天候の関係で、第一日目には2機が参加したP-3Cも、二日目には1機のみが参加していた。ただし、この日は航空自衛隊のF-15Jが視界不良のため参加できず、固定翼航空機として事実上唯一の参加となっていた。その分を補うように、大型機とは思えないほどの自由自在な機動飛行を展示してくれた。
続いてSH-60J哨戒ヘリコプター。護衛艦に搭載される哨戒ヘリコプターも潜水艦には厄介な相手である。総合力ではP-3Cに劣るものの、艦載の哨戒機としては世界最高といって差し支えない性能を有しており、頭上にこういった哨戒ヘリコプターが展開していること自体、潜水艦の行動を大きく制約する、何故ならば、その時点で潜水艦が行動すれば確実に発見されるからだ。
70~300㍉手ブレ補正レンズを利用して撮影している小生だが、写真のように哨戒ヘリコプターなどは近距離まで近寄ってきてくれるので、携帯電話のカメラ機能でも、撮ることができる。やはり他人の一枚よりも自分で撮った一枚のほうが思い出に残るものなのかな、と(携帯電話のカメラ機能には映像の録画機能があるので、そちらのほうが一眼レフよりもある意味、いいモノが撮れるかもしれない)。
哨戒ヘリコプターSH-60J。近年では7.62㍉機銃を搭載し、人員防護用の防弾板を取り付けるなどして、対潜哨戒以外にも工作船にたいする対処も可能となってきている。また、新型のSH-60KであればヘルファイアーASMにより小型高速目標に対する制圧能力を付与されつつある。
ミサイル艇によるフレアーの発射展示。ミサイル艇は対艦ミサイルや航空攻撃にたいして、例えばCIWSや短SAM管制機能というような充分な防御力を付与させることは、船体の大きさからも難しい。フレアーは、赤外線誘導ミサイルに対して高熱の物体を発射することで、船体への命中を逸らすことが目的で、このほかアルミ箔を加工した電波攪乱物質を投射するチャフなどを中心に、加えて高速性能によりミサイルから船体を護る。
フレアーが海面に着水し、白煙が海面にたなびいている。白煙越しに見るミサイル艇は、3インチ砲やステルス性を考慮して船体を直線で構成するなど、なかなか頼もしくみえる。舞鶴地方隊の3隻あるミサイル艇は、護衛艦と比べれば打撃に特化した運用ではあるが、日々、練度の向上に努めている。
近年、諸外国をみるとミサイル艇から、例えば広域哨戒や戦力投射が可能となるヘリコプター運用能力を有するコルベットへの代替が行われている。単一用途から多用途へ、というのが世界の趨勢の一つともいえる。他方、例えばスウェーデンの沿岸砲兵部隊などは、ミサイル艇と人員輸送に用いる襲撃艇、そして対潜掃討も可能な小型の哨戒艇を組み合わせて、長大な海岸線を防護している。今後の地方隊の展開には、こういった観点から興味が持たれる。
SH-60Jの航過飛行。展示訓練もいよいよ終わりが近付いている。新型のSH-60Kは高性能ではあるものの、同時に調達価格が高くなる為、SH-60Jの90機を50機ほどで代替するとされている。他方、面で哨戒を行う為にはある程度数が必要であり、この点、ハイローミックスの構想があるのかを含め、今後はどのようになるのかな、と。
SH-60Jと航空自衛隊、海上自衛隊が救難ヘリコプターとして運用するUH-60Jは、同じエンジン(T700-IHI-401C)を用いているので、この点の共通化がコストに影響するのでは、と。さて、そんな考えとは裏腹に機上と艦上から搭乗員と観覧者が思い切り手を振って合図を送りあう。お互い近いので、声も届くほど、思わず歓声もあがってくる。SH-60Jはこの後、舞鶴航空基地に向かって帰路についてゆく。
こうして、二日間にわたり行われた舞鶴展示訓練は終了し、舞鶴基地に向けて艦艇も帰路についた。なお、本日掲載の29日分の掲載記事は、三回に分けて連載した28日分の記事に掲載できなかったアングルなどをより分けて掲載したので、詳細は、そちらの方も併せてご覧いただければ幸いである。
舞鶴基地に入港すると、さっそく空包発射展示に用いられた『はるな』の主砲は整備に入っていた。同時に、この日も電灯艦飾が行われる為準備が行われていた。小生、実はかなりこの電灯艦飾は撮影したかったのだが、舞鶴線と嵯峨野山陰線の終電は非常に早く、鉄道線により展開した小生は撮影を断念した。しかし、二日にわたり見学した展示訓練により、海上自衛隊の日々の訓練の一端を垣間見ることが出来たという実感が残った。
HARUNA
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