■台湾巡視船侵入事案
今月10日の台湾漁船領海侵犯事案に対して船名確認のために海上保安庁巡視船が接近、接触し、漁船が沈没した事故を受けて、尖閣諸島の領有権を1970年代頃から主張している台湾では一部市民の間で対日抗議が過熱している。
海上保安庁によれば、16日未明、台湾の反日活動家を乗せた民間船舶1隻が、台湾の巡視船9隻を伴い日本の領海に侵入したとのことだ。これまでの抗議活動家による領海侵犯のような私人の不法行為ではなく、海上警察という純然たる国家機関による不当な領海侵犯が行われるのは極めて異例。なお、台湾の巡視船というのは、台湾海上警察のものとみられ、人員約800名、巡視船約40隻を保有しており、このほか、財務部税関局には人員約650名、哨戒艇15隻が配備されている(10年くらい前のデータ、最新データが書架群に埋もれてるんで代用、最新データなどご存知の方、コメント欄にお教えいただけると幸い)。日本の海上保安庁の402隻(警備救難用業務船の数、この他、海洋情報業務船や航路標識業務船など37隻を保有)と比べると数では劣るものの、哨戒艇として運用されるため、武器を搭載している。
朝日新聞Web版(16日1017時更新分)によれば、海上保安庁の発表として、16日0350時頃、尖閣諸島魚釣島西南西76kmの海域に尖閣諸島に向かう4隻の船舶を発見、4隻は台湾の漁船“全家福6”と台湾の巡視船3隻で、日本の領海12浬に接近したことから海上保安庁巡視船は0500時頃から音声、電光掲示板などで警告を実施、しかし台湾船は前進を止めず、0553時頃、沖縄県尖閣諸島沖の領海12浬に侵入した。その後、別の巡視船6隻の領海侵犯を海上保安庁が発見した。こうして尖閣諸島に領海侵犯した台湾船は、漁船1隻、巡視船9隻となった。
海上保安庁の巡視船は台湾船に対して速やかに領海外に出るよう警告、台湾漁船1隻は0650時から0730時頃まで抗議の横断幕を掲げながら魚釣島の沖合い1kmを航行、その後0836時、進路を変え領海外に退去したという。台湾巡視船もこれに続き0844時までに領海侵犯した10隻全てが領海外に退去した。台湾漁船から活動家の上陸は無く、また台湾巡視船も台湾船の領海侵犯を不法行為取り締まりの継続追跡権の行使というかたちではなく、現段階での発表を見る限り、単なる領海侵犯を行ったものと思われる。第11管区海上保安部では警戒を続けている。
読売新聞Web配信(16日0053時配信)によれば、今回領海侵犯した漁船は、台湾の民間団体“中国統一連盟”の活動家が乗船しており、先日の海上保安庁巡視船と台湾漁船の衝突事故に対して抗議し、尖閣諸島に対する台湾の主権を示すとして15日夜に台湾北部から出港、同船には活動家12名の他、台湾のメディア関係者など30名が乗船していたとのこと。10日の衝突事故以来、台湾では過激な発言が相次いでいる。
具体的には、6月13日産経新聞Web配信記事(13日2017時配信)では、台湾の劉兆玄行政委員長が、日本との領有権問題では開戦の可能性を排除しないという姿勢を示しており(開戦という表現は後の記者会見で撤回している)、台湾総統府は12日に改めて、尖閣諸島は台湾領土であるという声明を発表している。また、産経新聞以外の日本主要メディアは伝えていないが(ここ重要)、台湾海軍の艦船に立法委員らを乗せて尖閣諸島近海に展開するという計画も記載している、もしこれが現実となれば、過去の原潜侵入事案などの事例に従い日本政府は海上自衛隊に対する海上警備行動命令など強い対応を執る事になろう。
HARUNA
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