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尖閣諸島防衛への一視点⑯ 那覇第15旅団、離島防衛の中隊戦闘団と第1混成群再編案

2013-04-27 23:30:51 | 防衛・安全保障

◆離島防衛、情報・火力面で独立した中隊が必要

 今回は3月16日に紹介した那覇駐屯地第15旅団の増強案について、もう少し考えてゆきましょう。

Rimg_1251 第15旅団は沖縄県を防衛警備管区とする旅団で、第1混成団を拡大改編、沖縄という離島の特性から上級部隊である西部方面隊より独立した地域防空部隊として高射特科連隊と改良ホークを装備、離島災害派遣を主眼として航続距離のおきな多用途ヘリコプターと輸送ヘリコプターを装備していますが、今後は冷戦時代になかった規模での脅威に対応するべく増勢を考えてゆかねばならない時代を迎えてしまいました。

Img_0878 前回は対馬警備隊に範を採った警備隊を配置する方策を提示しましたが、警備隊が駐屯していない離島への侵攻の可能性も当然考える必要があり、全ての離島に沿岸監視隊を警備隊を配置することは人員規模等の面で難しく、どうしても数個警備隊と沿岸監視隊が上限となってしまうところ。

Img_3088 特に沿岸監視隊を置いたとしても沿岸監視隊が着上陸の危険性を報告した場合に、即座に増援部隊を展開させなければ沿岸監視隊の警備能力は自隊警備に限られてしまいますし、警備隊であっても基幹戦闘部隊は中隊規模、従って即座に隷下へ増援部隊を組み込まなければなりません。

Img_4266 そして離島防衛の特殊性、特に対馬のような大きな離島一つを防衛する場合と比較し、今回の尖閣諸島を含めた南西諸島全域を防衛警備する場合、相互連携を行うには陸上機動を行うことが出来ない、という大きな問題があり、師団や旅団について、上級部隊が支援を行うことが難しい、という点が最大の特色です。

Bimg_2564 例えば、特科連隊第五大隊の全般支援部隊や情報中隊、例えば高射特科部隊の情報小隊や第二中隊の短距離誘導弾、例えば師団や旅団の飛行隊、これらは戦闘任務を展開する連隊戦闘団に直接組み込まれるのではなく、師団が重要と考える局面に対し、連隊戦闘団を支援する目的で師団長が直接運用するもの。

Img_6556 例えで最も分かりやすいのは対空戦闘、対空レーダー装置と低空レーダー装置、共に師団や旅団の防空の目となり、師団の任務管区の対空脅威を警戒する装備ですが、費用も大きいため各高射特科大隊か旅団高射特科中隊へ各一基のみしか装備されていません。南西諸島へ、このままの態勢で野戦防空体制を構築した場合、沖縄本島か先島諸島か尖閣諸島何れか一か所しか対空警戒を行えません。

Img_1405 それならば、北海道から一個旅団引き抜いて先島諸島に配置するか、宮古島分屯基地を中心に先島諸島に新しく第16旅団を編成して高射特科中隊を置けばいいではないか、と思われるかもしれませんが、元々そんなに予算があるのならば苦労は無く、解決策とはなり得ません。

Img_3793 そこで必要なのは、中隊規模の戦闘部隊で自己完結能力をある程度図る、という事です。普通科中隊は小銃小隊に対戦車小隊と迫撃砲小隊があり、87式対戦車誘導弾や81mm迫撃砲を有していますし、通信班も中隊本部に盛り込まれていて、中隊本部には携帯地対空誘導弾も装備されているほど。

Bimg_5366 こうした中隊規模の部隊に対し、近年欧州やアメリカで開発され、道東の装備が技術研究本部でも研究されているとされる小型の多機能レーダ装置、可搬性があり対迫レーダ装置の機能と近距離での対空レーダ装置の機能を併せ持つ装備品がありますが、こちらを装備、旅団の支援をある程度独力で対処できるものとします。

Dimg_5141 また、対戦車小隊へ現在全国の対戦車小隊への配備が予定されている中距離多目的誘導弾、一両の発射装置で自己完結運用が可能なこの新装備の配備を急ぎ、特に着上陸阻止に際し重要な間接照準能力を強化するべく、誘導用レーザ照射装置を充分配備することで、着上陸に際し、迅速に沿岸撃破を図る能力を付与する。

Mimg_1693 加えて旅団の中枢から場合によっては数百kmの距離を置いて中台が独自での戦闘行動を展開するにあたっての要件である情報通信能力を維持するべく、可搬式の音声衛星通信能力のみの現状では不十分であり、データ通信による共同交戦能力のネットワークに中隊を置くに十分な衛星データ通信能力を有する通信班の配置も重要となるでしょう。

Img_9840 可能であれば射程が大きな重迫撃砲の小隊を配置することが望ましいのですが、81mm迫撃砲と二個小隊編成とすることは中隊の能力と重複してしまい、迫撃砲小隊を四個班編成から六個隊編成に拡充し、二門を遠距離火力として保有するか、81mm迫撃砲を60mm迫撃砲に置き換え、小隊本部の直掩火力とするか、何れにせよ考える必要はあります。

Img_1381 中隊本部、対戦車小隊、迫撃砲小隊、高射特科小隊、通信小隊、数個小銃小隊、中隊あたりの装備はかなり大きくなってしまいますが、重量面では空中機動、CH-47J/JAで輸送が可能なものでそろえたならば第15飛行隊に加え西部方面航空隊に木更津第一ヘリコプター団の支援を受ければ迅速に展開可能です。また、おおすみ型輸送艦一隻でも全戦闘部隊を完結して収容可能ですので、複数の輸送艦が必要な現状の連隊戦闘団よりも即応性が高くなります。

Img_0534 第15旅団には隷下部隊として第51普通科連隊が配置されているのですが、上記中隊戦闘団は連隊戦闘団編成とな馴染まない部分も多いため、第1混成団の第15旅団改編と共に名称が改められた第1混成群の呼称を第51普通科連隊とは別に配置し、四個乃至五個中隊戦闘団を混成群隷下に配置、運用することが考えられるでしょう。

Img_2035 第51普通科連隊は沖縄本島の防衛を重視すると共に旅団直轄部隊を中心に従来型の連隊戦闘団を組み機動運用を行うとし、逆に即応部隊として第1混成群を中隊戦闘団毎に順番で待機態勢を採らせる、という方式で即座の増援部隊には混成群があたる、という方式が理想でしょう。

Aimg_0792 無論、離島防衛には戦闘ヘリコプターによる打撃力が最も理想な選択肢の一つではありますが、ヘリコプターには滞空時間の制約があることからその火力投射に持続性が無く、併せて地域確保能力が全くないため、瞬発的な火力投射以外に能力が発揮できません。必要性はあるのですが万能ではない、ということ。

Gimg_6354 地域確保能力というこの点で、例えば空中機動旅団と呼ばれた第12旅団は直轄の対戦車中隊を維持しています。第15旅団も離島着上陸部隊の殲滅を目指すのであれば瞬発火力の投射が重要ですので戦闘ヘリコプターの能力をいかに投入するかが重要となるのですが、離島防衛として着上陸を阻止するのであれば、こちらの地域確保能力と持続能力も無視できない重要性を持つのです。

Mimg_1407 第15旅団を増強する必要はかなり大きいのですけれども、併せて単純に第51普通科連隊に続いて第52普通科連隊を創設するのではなく、中隊ごとに独立した運用が可能な職種混成部隊として第1混成群を、群という名称が問題ならば第15混成連隊、というようなものを編成する検討もあっていいのではないでしょうか。

北大路機関:はるな

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コメント (2)
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