北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

米予算均衡法、歳出強制削減により空軍全航空団の作戦機三分の一が飛行停止へ

2013-04-19 23:10:07 | 防衛・安全保障

◆アフガン作戦維持と技量維持図るも即応性は低下

 米予算均衡法に基づく政府支出強制歳出削減は空軍訓練体系に重大な影響を与えました。

Gimg_7407 報道の際には少々耳を疑いましたが、空軍全航空団の三分の一が飛行停止となり、これを以て予算縮減を達成しようというものです。この報道を見る場合、戦略軍の爆撃機を除く核運用基盤や警戒態勢に本土弾道ミサイル防衛体制構築などは大きく縮小されることはないのでしょうが、逆に言えば縮小の皺寄せがほかの部隊に行く、ということ。

Bimg_3076 横田基地日米友好祭と岩国航空基地フレンドシップデイの中止が検討されていましたが、このうち5月5日の岩国については正式に中止が発表されました。しかし、米軍全体からの訓練体系への影響を見た場合、この行事中止というものもほんの僅かな表面化、というべきなのかもしれません。

Img_2673 国防総省は米本土及び欧州と太平洋地域に展開する空軍部隊に対し、全航空団の戦闘機及び爆撃機と早期警戒管制機について、三分の一を飛行停止とする決定を行ったわけです。飛行中止はCNNの報道ではA-10攻撃機とB-2爆撃機にF-16戦闘攻撃機とF-22戦闘機、など。

Himg_4209 歳出強制削減は本会計年度では米政府全支出のなかで850億ドル、邦貨換算で8兆3300億円に達するのですが、米国防費はGDP換算で4%を超えているため連邦支出への比率も大きく、強制削減の支出中で半分を求められています。半分とは言いますが、我が国の防衛費に匹敵するもの。

Img_2861 この訓練停止は陸海空軍全てに同程度の影響が及ぶのですが、空軍では三分の一の飛行訓練中止を決定しつつ、飛行時間の縮減にあって、三分の一の航空団をそのまま単純に訓練停止するのではなく、シュミュレータの活用と飛行停止の期間をローテーションすることで飛行技量維持へ必要な最小限の飛行時間は確保するもよう。

Img_0770 ローテーション方式を行うのは、飛行資格を維持するために必要な飛行時間が厳格に規定されており、この時間を満たさなければ飛行資格が失効してしまうためで、これを一から再取得しようとした場合には、予算の執行が国防権限法に基づく水準に戻された際、逆にコストが増大してしまうからです。

Img_8706 この飛行時間の縮小ですが、三分の一の縮小という部分から考えますと、全空軍の訓練体系を空軍州兵規模に抑え、技能維持と運用体制を両立させる規模、という事になるのでしょう。予備役の空軍部隊と言いますと、日本では馴染みがりませんが米軍では空軍予備役軍団という組織があり三個軍、うち第10空軍などは戦闘機を運用している実戦部隊というもの。

Img_2848 空軍予備軍団隷下の航空団では即応体制は採られていないものの戦闘に対応する戦闘飛行隊が維持されていますし、このほか州兵空軍のような組織もあります。ですから、空軍が将来に渡り影響を受けるような運用体系への打撃とはならないのかもしれません。
Yimg_9061 ただ、即応体制という意味では影響はあるようです。空軍戦闘航空団の司令官は緊急事態が発生した場合に対応できなくなる可能性が示唆されました。緊急事態と言いますと、朝鮮半島や台湾海峡への抑止力低下というものが筆頭に上がりますが、このほかの地域でも湯時の際に即応対処が出来なければ初動に後れを取り、これが結果対応の長期化を招くのですから。

Gimg_2570 このほか、アフガニスタンでの任務遂行に必要な予算支出は維持されるとのことで、ローテーションが行われる背景にはこうしたものもあるようです。アフガニスタン派遣部隊で歳出削減措置を採った場合に戦況が悪化するというリスクを回避するというもくてきから、これは当然の措置でしょう。

Img_8874 この歳出削減ですが、アメリカの国防費はGDP比率で4%以上の水準を推移し、テロとの戦いは2001年以降延々と継続、アフガニスタン派遣などはアメリカ建国以来最長の派遣ともいわれています。以上を鑑みますと、多少致し方ないのではないか、と思いつつ、安全保障情勢の緊迫化が進む我が国としては複雑と言わざるを得ません。

Img_3847f 安全保障状況に影響が出た際、実際には出つつあることが我が国周辺への国籍不明機接近の増加などで表面化しているのですが、アメリアの安全保障への依存度、例えば東日本大震災が世界の経済と先端産業の日本への依存度を痛感した事例と同じこととなるのでしょうか。

Img_4160 また併せて、今後もアメリカの歳入が改善される抜本的可能性が無ければ、日本への防衛負担増大の要求が強くなるほか、自由貿易協定の推進面を含めたアメリカの経済活性化の道筋に関する枠組み作りに反映されることとなるため、我が国も外交防衛政策を慎重に見極めてゆかねばなりません。

Img_1781 最後にもう一つ、この規模の削減が海軍航空隊に対しても行われた場合、空母航空団の技量維持に影響が出ないのか、安全面で関心事が出てくるでしょう。空母発着艦の必要な技量は大きく、これは事故の有無に直結しているのですから、ね。併せて抑止力の低下が我が国安全保障へどうした影響があるのかを冷静に見極め、対応を考えてゆくことが必要でしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする