◆そつなくこなす船乗りと水上戦の意外と難しい基本
海軍に徴兵されていた留学生の話、何故海上自衛隊は艦隊陣形をしっかりととれるのか。
海軍機構にとり、艦隊行動を行うにも水上戦を実施するにも艦隊陣形は基本であるのですけれども、意外と難しいものらしく、同じく基本であるべき出入港も近年躍進目覚ましい海軍の艦艇が何度も接岸やり直しを行ったという話を聞けば、日本やアメリカと違い海軍初心者なのか、と思ってしまうもの。
舞鶴展示訓練では展示訓練の最後に行われる展示として艦隊陣形の行動展示が行われました。もっとも、お気づきの方もいるでしょうが前回の艦艇が横一列に並んだ様子の写真は単横陣という接近しての対水上戦闘に際しての一斉会敵に有利な陣形なのですけれども。
単縦陣、艦隊行動の最も基本的な陣形で旗艦、もしくはその一隻前の先導艦を中心に一列に続く陣です。観艦式などで単縦陣で進む艦隊を先頭近くの艦から眺めますと、延々と水平線へ向かい延びる艦隊の威容に圧倒されます。複数の艦艇が参加する際には先頭近くから見てみたい陣形のひとつ。
基本である単縦陣を元に様々な陣形、例えば旗艦を中心に攻撃に移る際の梯形陣や、現代では艦隊陣形以外は離隔距離を大きく採るため意義は薄れていますが逆V字に展開し防御を張る弓型陣へ、それぞれ転換することが出来、現代の対水上戦でも誘導弾発射等に際し、陣形の転換能力は比較的重要だったりする。
ちなみに、展示訓練観閲式の後に一列が順次大きく回頭した艦隊運動は逐次回頭で航行序列を維持したまま艦隊を転換することが可能だ。一斉回頭として艦隊の航行序列を逆として一挙に方向転換を図る方策もあるのだけれども、写真の、あたご、が陣形変換へ増速を始めた。艦艇の速力さや波浪影響があり、これは意外と難しい。
北大路機関が幾度も使用するイージス艦二隻の並んだ様子はこの瞬間に撮影、乗艦しているのは、イージス艦こんごう型四番艦ちょうかい、追い抜こうとしているのがイージス艦あたご型一番艦あたご。イージス艦二隻を一枚に収めるべく、甲板上をお急ぎで駆け回ったのもいい思い出です。
ちょうかい、を陣形転換へ洋上で追い抜く、あたご。陣形転換は、別の陣形へ各艦が移動する距離と変針の時機がそれぞれ異なるので、艦長を目指すには海象と艦特性と連携を同時に全て条件を呑みこみ理解し、適切な行動をとれなければならない。そして基準艦に指名された時に基準艦が時機を誤れば全艦隊に影響するので、責任は重大だ。
護衛艦ちくま、が追い抜く。艦隊陣形や艦隊行動は、現代ではヘリコプターの洋上戦への応用が基本となっているため、その発着に必要な艦の航行方式も併せて求められることとなり、海洋は広大だけれども、陣形が大きく乱れたならば防空や索敵の隙を生むので、意外と繊細な行動が求められるという。
艦隊行動は中枢艦や船団護衛を行う際の数kmの距離を採って輪陣形を組むことがもう一つの基本なのだけれども、併せて対水上戦では誘導弾を同時着弾させるため、迅速に陣形を攻撃位置へ転換させなければならない。ただ、ここで隙を生むと近傍に潜水艦が展開していた場合攻撃を受けてしまう、艦隊行動の需要性はこういう側面も含む。
護衛艦あまぎり、が追い抜いてゆく。後9栄冠が迫るとどうしてもその護衛艦だけをズームしてしまうのだけれども、甲板上がそれほど混雑していなかったので、乗艦している艦の艦橋を思い切って広角でフレームに入れてみると、こういう写真になる、ということ。これは今回の試み。
それにしてもいい天気だ、前日まではかなり曇っていたので、艦橋は此処まで軍艦色が際立たなかったし、青空でもなかった。曇れば逆光のリスクが少なくなるのだけれども、順光の理想的な写真に仕上がらない、というもろ刃の剣となる。上空を日本海より北方へ飛行してゆく飛行機雲も雰囲気を高めてくれる。
展示訓練参加部隊は、こうして陣形を続いて解き、それぞれ出港した港へ戻る。舞鶴基地の舞鶴展示訓練なのだけれど、舞鶴警備管区から多くの観覧者を招いているので、舞鶴基地へはもちろん、敦賀港や西舞鶴港などへわかれてゆかなければならないのだ。
舞鶴展示訓練の展示は此処までなのですけれども、舞鶴基地はまだまだ遠く、実はここから小さな催しなども行われる。舞鶴基地へ戻るまで、もう少し舞鶴展示訓練の青空を背景とした写真特集は続きます。これらの様子は、また機会を改めて次回に紹介することとしましょう。
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