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F-35イスラエル空軍実戦投入を公表!実戦証明完了と今週末の航空自衛隊三沢基地七機体制

2018-05-23 20:09:01 | 防衛・安全保障
■史上初のF-35戦闘機実戦参加
 現在秋田県沖にて初の日米F-35戦闘機による共同訓練が実施中ですが、このF-35について興味深い報道が。

 イスラエル空軍はF-35戦闘機を実任務に投入した、AFP通信が昨日22日にイスラエル空軍司令官の発言“我々は2度F35を用いて、中東地域で攻撃を行った。これを実行したのはわれわれが世界で初めてとなる”として報じました。空軍司令官はアミカム-ノーキン空軍大将で1987年に空軍士官学校卒業後F-15操縦要員、南レバノン戦争に参加しています。

 F-35戦闘機はアメリカが国際共同開発を行った世界で最も新しい統合打撃戦闘機、航空自衛隊も運用を開始した第五世代戦闘機です。部隊配備が開始されたばかりであり、アメリカ空軍ではF-16戦闘機、F-15戦闘機の後継機に位置付けられていますが、アメリカ空軍や海軍、海兵隊でも実戦投入はありません、イスラエル空軍実戦投入が史上初となりました。

 重要なのは“我々は2度F35を用いて中東地域で攻撃を行った。これを実行したのはわれわれが世界で初めてとなる”、“Adirアディール戦闘機はすでに作戦行動に就いており、戦闘任務に従事している”、とイスラエル空軍が自ら発表した事で、逆の視点からは攻撃を受けた側がステルス性を有するF-35の攻撃を把握できていなかった、との点にあるでしょう。

 イスラエルはシリアやレバノンから高い頻度でロケット弾攻撃を受け、その都度反撃していますが、ステルス性を有するF-35による航空攻撃、攻撃を受けた側も巡航ミサイルによるものか特殊部隊による攻撃か把握でき無かった、この為イスラエル軍はF-35の優位性を誇示するために、自ら既に二回の実任務を実施していると発表した、これは重大な事です。

 空軍が発表した背景には、実任務に際し従来機の被害が増大していた背景もあります。イスラエルの国土は四国と同程度と狭隘ですが、周辺国からの軍事圧力に対し空軍力と機甲戦力を重視しており、F-15戦闘機55機、F-15I戦闘爆撃機25機、F-16戦闘機235機を装備、現在F-35戦闘機50機の取得計画を進めています。数は多いがF-15A等旧式機も残る。

 空爆任務は、シリア領内からの攻撃やイラン革命防衛隊系武装勢力ハマスへの反撃として実際に実施している一方、損耗が発生しており、特にロシアからの軍事援助を受け、高い防空能力を持つシリア空爆ではF-16戦闘機が今年も撃墜される等、被害が生じており、空軍の損耗を回避する観点からステルス性を有するF-35投入を求める世論も実際ありました。

 実戦証明、第五世代戦闘機F-35のイスラエル空軍による実戦投入、これは同時にF-35は欠陥機ではないかとの憶測が広がる中、で重要です。元々F-35が欠陥機と呼ばれるようなった背景には、度重なる仕様変更で高性能化した事が開発費を高騰させた点とソフトウェア開発の遅延が誤解されていましたが、少なくともシリア空爆の能力は照明されました。

 実戦証明“バトルプルーフ”というものは、カタログスペックという数値だけの性能ではなく、様々な不確定要素と生命が賭される戦闘という極限状態においての実測値であり、喩えカタログスペックの半分程度であってもバトルプルーフとして実測値が証明された装備の方が自分が使う立場となった際に故障しないか、命中するか、稼動するか、重要です。

 航空自衛隊は現在、三沢基地にて初のF-35戦闘機参加の日米共同訓練を実施中です。本訓練は9日から24日まで航空自衛隊F-35A戦闘機1機と米海兵隊F-35B戦闘機8機が参加し、秋田県沖の日本海や青森県沖の太平洋上において実施、日米ステルス機による初の訓練であると共に航空自衛隊にとって最新鋭のF-35を初めて参加させる訓練でもあります。

 航空自衛隊は42機を調達中です。小野寺防衛大臣の15日定例記者会見では明々後日の26日にもF-35Aの引渡を受け、7機体制となり、更に2018年度中に3機が引き渡される事となっています。F-35は航空自衛隊抑止力維持に必要な第五世代戦闘機であり、この同型機が実戦証明を果たした事は、我が国防衛力の観点からも一定の意味があるといえましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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