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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

FFG-X米次期水上戦闘艦計画-伊フィンカンティエーリ社案に決定!沿海域戦闘艦に続き整備

2020-05-04 20:06:59 | 先端軍事テクノロジー
■西アルバロデバサン級に類似
 アメリカ海軍は空母護衛や哨戒監視と対潜戦闘や船団護衛などに当る将来戦闘艦FFG-X構想を推進中です。

 アメリカ海軍がフリーダム級/インディペンデンス級沿海域戦闘艦に続く小型水上戦闘艦艇構想FFG-Xについて、アメリカ海軍協会USNIによればイタリアのフィンカンティエーリ社が提案した案が採用されたとのこと。高速哨戒艦というべき従来の沿海域戦闘艦を引き継ぐアメリカ海軍の将来小型水上戦闘艦は満載排水量6000t規模のフリゲイトとなった。

 ミサイルフリゲイト、FFG区分はミサイルフリゲイトに区分され、当面は10隻が建造の上で最終的に20隻の建造が予定されています。FFGは満載排水量6000t規模で新型のEASRレーダーとイージスシステム派生のCOMBATSS-21戦闘情報処理装置を搭載し、32セルのVLSにNSM新型ミサイルやスタンダードSM-2を搭載、ヘリコプターも搭載します。

 アーレイバーク級ミサイル駆逐艦、所謂イージス艦はアメリカ海軍の主力艦であり既に86隻の建造が決定しています。しかし一番艦アーレイバークが竣工した1991年当時、世界を二分した米ソ冷戦構造は終焉を迎えており、対称的に米ソ軍事圧力が抑えていた民族や部族間の歪が世界規模での地域紛争やテロ事案の増大を招いており、対応が求められました。

 フリーダム級/インディペンデンス級沿海域戦闘艦は、3000t前後のアメリカとしては小型船体に50ノットの高速性能と艦内の多機能区画を置き、基本兵装は57mm砲とSEA-RAM個艦防空ミサイルのみながらSH-60規模のヘリコプター2機と1410平方mの多機能区画を有し、ストライカー装甲車一個中隊の緊急展開や機雷戦システムMCMを搭載可能です。

 沿海域戦闘艦、しかし成功とは言い難い。沿岸作戦の時代は沿海域戦闘艦計画中に中国海洋進出とロシア海軍の再興及び欧州ロシア対立という新時代を迎え、潜水艦には無力で対艦ミサイルさえ搭載しない沿海域戦闘艦は高すぎる哨戒艇と掃海艇程度の任務しか就けず、重武装の中国新型フリゲイトに翻弄される状態となります。こうしてFFG-X計画が発動したのですね。

 フィンカンティエーリ社はカルロベルガミーニ級という非常に独特の、先進的と表現するべきなのでしょうか、上部構造物を有する水上戦闘艦を提案していました。カルロベルガミーニ級は欧州共同開発FREMM計画の潮流を受け継ぐ21世紀型水上戦闘艦の位置陣として建造され、船体を共通とした上で、広域防空艦型と汎用対潜型とに分けられています。

 リデル級原子力駆逐艦、ロシアの最新鋭計画と何か似た雰囲気を有するカルロベルガミーニ級、一見して不思議な雰囲気を湛えた水上戦闘艦で、この採用は意外な印象でした。しかし、もっと意外なのはアメリカ海軍境界の発表したフィンカンティエーリ社案のCGが、スペイン海軍イージス艦、アルバロデバサン級と特異点が非常に良く似ているのですよね。

 アルバロデバサン級はSPY-1Fレーダーを搭載した小型イージス艦で、こんごう型やアーレイバーク級が満載排水量9000t前後の大型艦であるのに対して、垂直発射装置VLSの数を抑えイージスの目というべきSPY-1レーダーも小型艦用のSPY-1Fという素子数を抑え、満載排水量は6000t、護衛艦あきづき型と同程度で建造費も抑えたものとしています。

 FFG-X構想におけるアルデロデバサン級ですが、この設計に今回のFFG-Xに選定されましたフィンカンティエーリ社は基本的に関わっていません、アルバロデバサン級を建造したメーカーはスペインのナバンティア社、昔のバサン社です。そして、アルバロデバサン級についてもジェネラルダイナミクス社が提携して簡略型をFFG-X構想に提案している。

 日米同盟の観点からはアルバロデバサン級の採用が理想的、と考えていました。太平洋地域ではその派生型であるホバート級ミサイル駆逐艦がオーストラリア海軍において運用中ですし、FFG-Xはイージス艦程の広域防空を想定しませんが、アルバロデバサン級派生型ならばSPY-6レーダー後日搭載も可能です。スプルーアンス級とタイコンデロガ級の様に。

 イタリアのフィンカンティエーリ社カルロベルガミーニ級、一番艦就役が2013年ですのでアルバロデバサン級の一番艦竣工2002年より新しく、そしてカルロベルガミーニ級は扶桑のパゴダマスト、ではないですが所謂最新の塔型マストを採用し重厚で不思議な形状となっているのに対し、やはりCGではアルバロデバサン級のようなモノポールマストを持つ。

 CGだけでは如何とも言い難いのですが、ファンネル形状や艦橋構造物の窓の数などが一致していまして、艦砲はアメリカ海軍要求通り57mm砲となっており、SPY-1Fレーダーだけが円盤状の小型レーダーに置換えられている、CGが違うのか、もしくは資本提携などが在ったのかとも考えたのですがそういったものはなく、少々不思議に思いました次第です。

 30FFM、海上自衛隊もいよいよ本年より3900t型護衛艦として多機能艦の進水式を迎えます。満載排水量はFFG-Xと30FFMは同程度ですが、武装は30FFMが艦砲の口径が127mmである以外はほぼ同程度、一方でFFG-Xにはない多機能区画を有しています。これは艦内容積の圧迫を部分的に意味し、FFG-Xの水上戦闘艦回帰は大きな関心事といえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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