■軍事技術が任務継承へ指向
おうりゅう就役からかなり時間が経ちましてマスク姿の引き渡し式の際以上に新型コロナウィルス感染症が広がっている最中ではありますが、続きを。
自衛隊潜水艦へ旧海軍軽巡洋艦の艦名を踏襲させるべきとした論点の根拠の一つ、潜水艦と軽巡洋艦の任務への共通点について。軽巡洋艦は潜る事は出来ませんが航空機が普及する以前の海戦においては単独で通商破壊任務を展開した場合、これを捕捉する事は容易ではありません、速力も早く派遣されたとしても離脱する事は十分可能であった為です。
潜水艦は日本海軍が潜水艦相当に充てるべき駆逐艦を主力艦支援に充当した為に主力艦の護衛に限界が生じ、この結果少なくない航空母艦や巡洋艦を潜水艦により撃沈される戦訓がありますが、潜水艦が猛威を振るったのは通商破壊であり、大西洋船団護衛戦を挙げるまでも無く、撃沈された艦船の総数では太平洋でも軍艦等よりも商船の被害の方が多い。
潜水艦による主力艦への攻撃は、不可能ではありませんが難しい。レイテ沖海戦、ジュットランド沖海戦と並び歴史上最大規模の海戦となった1944年のフィリピン近海での日米艦隊決戦でも、主力部隊である栗田艦隊がアメリカ海軍潜水艦の襲撃を受け旗艦愛宕を含め主力の重巡洋艦が大打撃を受けましたが、ここで潜水艦が襲撃に成功したのは、何故か。
日本海軍がフィリピンの狭水道において夜間速力を14ノットに落とした状況下、アメリカ潜水艦が危険を冒して19ノットで追い抜き、襲撃位置へ展開できたためで、現代の艦艇は夜間も必要で在れば高速航行を行う事は普通ですし、潜水艦がこれだけ高速航行したならばソナーにより探知可能、しかも原子力潜水艦でなければ高速航行を長期継続できません。
したがって、第二次世界大戦での潜水艦の戦果は多分に当時の技術によるところが大きいでしょう。現代の潜水艦の任務はなにか、多種多様に上りますが総論として接近拒否、つまりフォークランド紛争におけるイギリス原潜がアルゼンチン海軍巡洋艦を撃沈したことでアルゼンチン海軍の行動を封じたように相手の制海権行使を拒否するという任務がある。
警戒艦。実は第二次世界大戦や第一次世界大戦の巡洋艦が担った任務の一つに艦隊決戦に先行しての情報収集に当る偵察任務が挙げられまして、日本の天龍型軽巡洋艦やのちの古鷹型重巡洋艦なども偵察巡洋艦としての運用が意識されたものでした。さて、その巡洋艦の任務ですが昨今、巡洋艦という区分は例外的となりつつありますが、後継を担うものが。
原子力潜水艦は艦隊に先行しての情報収集を担う警戒艦としての運用を、特にアメリカ海軍空母打撃群では担っています。もちろんこうした視点以外にも既に第二次世界大戦中には日米ともに潜水艦を大規模侵攻作戦に先んじての偵察任務へ重用していましたが、同時に当時は軽巡洋艦の任務を水中速力の大きな原子力潜水艦が担っている事は、軍事技術が任務継承へ指向した共通点です。
潜水艦は敵制海権下へ浸透できる例外的な存在ですので、この能力を駆使しプレゼンスを誇示する、という任務が筆頭に挙げられ、これは航空機が実用化される以前の軽巡洋艦と重なる用途が現在の潜水艦に重なり、だからこそ、潜水艦に河川名、軽巡洋艦名の継承という選択肢を提示しました。軽巡洋艦は5500t型だけで15隻あり、艦名候補は豊富です。
この試案は、3900t型護衛艦建造が一つの背景にあります。元々3900t型護衛艦はFFMといい、河川名を冠した沿岸用護衛艦の艦名が再来するものと考えられていたのです、この際には基準排水量が2000tから3000t台となるように推測されており、まさか基準排水量3900t、満載排水量で5000tを越える大型護衛艦になるとは考えられていませんでしたため。
FFM,新しい3900t型護衛艦は概算要求においてDE-XからFFMとなり、沿岸用護衛艦としてのDEではない新しい区分であることが明示されています。FFM注目するのはDD-XではなくFFM,つまりDE-XでもDD-Xでもない新区分を示すものです。あきづき型護衛艦、あさひ型護衛艦は共にDD,造艦史に則れば駆逐艦秋月型の次の量産艦はどう進むのか、と。
松型駆逐艦、FFMは護衛艦あさひ型よりも小型化する為に小型護衛艦という印象を持たれる方も多いようですが、それでも満載排水量で6000t弱の規模になると考えられ、この規模の水上戦闘艦を二桁の単位で量産できる国は世界中でもそれほど多くはありません。すると松型駆逐艦の襲名は考えにくく、そしてDE小型護衛艦の艦名襲名も画定はしません。
したがって、あきづき型の基準排水量5000tよりは減じた3900t型護衛艦、しかし、DE,沿岸用護衛艦あぶくま型は基準排水量2000tでしたので、河川名を踏襲しない可能性があるのです。FFMの新しい護衛艦に河川名を使わないならば潜水艦に使った方が良い。周辺国への配慮という視点で批判はあるかもしれませんが、配慮しても実る保証は過去稀有ですし、ね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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おうりゅう就役からかなり時間が経ちましてマスク姿の引き渡し式の際以上に新型コロナウィルス感染症が広がっている最中ではありますが、続きを。
自衛隊潜水艦へ旧海軍軽巡洋艦の艦名を踏襲させるべきとした論点の根拠の一つ、潜水艦と軽巡洋艦の任務への共通点について。軽巡洋艦は潜る事は出来ませんが航空機が普及する以前の海戦においては単独で通商破壊任務を展開した場合、これを捕捉する事は容易ではありません、速力も早く派遣されたとしても離脱する事は十分可能であった為です。
潜水艦は日本海軍が潜水艦相当に充てるべき駆逐艦を主力艦支援に充当した為に主力艦の護衛に限界が生じ、この結果少なくない航空母艦や巡洋艦を潜水艦により撃沈される戦訓がありますが、潜水艦が猛威を振るったのは通商破壊であり、大西洋船団護衛戦を挙げるまでも無く、撃沈された艦船の総数では太平洋でも軍艦等よりも商船の被害の方が多い。
潜水艦による主力艦への攻撃は、不可能ではありませんが難しい。レイテ沖海戦、ジュットランド沖海戦と並び歴史上最大規模の海戦となった1944年のフィリピン近海での日米艦隊決戦でも、主力部隊である栗田艦隊がアメリカ海軍潜水艦の襲撃を受け旗艦愛宕を含め主力の重巡洋艦が大打撃を受けましたが、ここで潜水艦が襲撃に成功したのは、何故か。
日本海軍がフィリピンの狭水道において夜間速力を14ノットに落とした状況下、アメリカ潜水艦が危険を冒して19ノットで追い抜き、襲撃位置へ展開できたためで、現代の艦艇は夜間も必要で在れば高速航行を行う事は普通ですし、潜水艦がこれだけ高速航行したならばソナーにより探知可能、しかも原子力潜水艦でなければ高速航行を長期継続できません。
したがって、第二次世界大戦での潜水艦の戦果は多分に当時の技術によるところが大きいでしょう。現代の潜水艦の任務はなにか、多種多様に上りますが総論として接近拒否、つまりフォークランド紛争におけるイギリス原潜がアルゼンチン海軍巡洋艦を撃沈したことでアルゼンチン海軍の行動を封じたように相手の制海権行使を拒否するという任務がある。
警戒艦。実は第二次世界大戦や第一次世界大戦の巡洋艦が担った任務の一つに艦隊決戦に先行しての情報収集に当る偵察任務が挙げられまして、日本の天龍型軽巡洋艦やのちの古鷹型重巡洋艦なども偵察巡洋艦としての運用が意識されたものでした。さて、その巡洋艦の任務ですが昨今、巡洋艦という区分は例外的となりつつありますが、後継を担うものが。
原子力潜水艦は艦隊に先行しての情報収集を担う警戒艦としての運用を、特にアメリカ海軍空母打撃群では担っています。もちろんこうした視点以外にも既に第二次世界大戦中には日米ともに潜水艦を大規模侵攻作戦に先んじての偵察任務へ重用していましたが、同時に当時は軽巡洋艦の任務を水中速力の大きな原子力潜水艦が担っている事は、軍事技術が任務継承へ指向した共通点です。
潜水艦は敵制海権下へ浸透できる例外的な存在ですので、この能力を駆使しプレゼンスを誇示する、という任務が筆頭に挙げられ、これは航空機が実用化される以前の軽巡洋艦と重なる用途が現在の潜水艦に重なり、だからこそ、潜水艦に河川名、軽巡洋艦名の継承という選択肢を提示しました。軽巡洋艦は5500t型だけで15隻あり、艦名候補は豊富です。
この試案は、3900t型護衛艦建造が一つの背景にあります。元々3900t型護衛艦はFFMといい、河川名を冠した沿岸用護衛艦の艦名が再来するものと考えられていたのです、この際には基準排水量が2000tから3000t台となるように推測されており、まさか基準排水量3900t、満載排水量で5000tを越える大型護衛艦になるとは考えられていませんでしたため。
FFM,新しい3900t型護衛艦は概算要求においてDE-XからFFMとなり、沿岸用護衛艦としてのDEではない新しい区分であることが明示されています。FFM注目するのはDD-XではなくFFM,つまりDE-XでもDD-Xでもない新区分を示すものです。あきづき型護衛艦、あさひ型護衛艦は共にDD,造艦史に則れば駆逐艦秋月型の次の量産艦はどう進むのか、と。
松型駆逐艦、FFMは護衛艦あさひ型よりも小型化する為に小型護衛艦という印象を持たれる方も多いようですが、それでも満載排水量で6000t弱の規模になると考えられ、この規模の水上戦闘艦を二桁の単位で量産できる国は世界中でもそれほど多くはありません。すると松型駆逐艦の襲名は考えにくく、そしてDE小型護衛艦の艦名襲名も画定はしません。
したがって、あきづき型の基準排水量5000tよりは減じた3900t型護衛艦、しかし、DE,沿岸用護衛艦あぶくま型は基準排水量2000tでしたので、河川名を踏襲しない可能性があるのです。FFMの新しい護衛艦に河川名を使わないならば潜水艦に使った方が良い。周辺国への配慮という視点で批判はあるかもしれませんが、配慮しても実る保証は過去稀有ですし、ね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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