北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ながと-むつ,イージスアショア代替に提案するSBX-1海上配備Xバンドレーダ方式海上拠点型

2020-06-18 20:06:32 | 防衛・安全保障
■イージス艦でも陸上型でもなく
 ミサイル防衛の観点からイージスミサイル防衛システムの即応体制は必要です、毎年広島長崎慰霊の日に安寧を祈る分、核の脅威は一番知っているのですから。

 海上配備ミサイル防衛システム"ながと""むつ"。山口県と秋田県へ建設が計画されていたイージスアショアミサイル防衛システムが、発射するスタンダードミサイルSM-3ブースタの落下管制技術目処が立たないとして突如中止となりましたが、アメリカのSBX-1のようなSBX海上配備Xバンドレーダ方式を用いれば、問題は解決するのではないでしょうか。

 イージスアショア、弾道ミサイル防衛の切り札と言うべき装備は複数のイージス艦と連接することにより同時多数の弾道ミサイル攻撃に対応するとともに、将来拡張性としてE-2Dなどとのデータリンクにより広域防空に資する点でした。その最大の問題点は陸上配備型、ということよりも巡航ミサイル飽和攻撃等万一の際も移動できない固定式という点でした。

 ニセコ要塞じゃああるまいし。日本本土に固定式のミサイル防衛システムを構築することは、イージスアショアそのものを敵が先行して撃破しようとした場合にこちらの迎撃ミサイル以上のミサイルを集中する飽和攻撃により無力化する懸念があります。もちろんこれを言い換えれば、それだけ相手に日本攻撃を行う際のハードルを上げる事と同義ですが。

 弾道ミサイル防衛に関してのイージスミサイル防衛システム。しかし冷静にみてゆきますと、イージスシステムそのものをミサイル防衛に転用する技術は、北朝鮮ミサイル実験を受け、日本政府が小泉政権時代から日米共同開発を主導したもの。開発当時は弾丸を弾丸で落とすようなものと技術的困難さを指摘されたものですが、技術は進歩するものでした。

 スタンダードSM-3のキネティック弾頭、宇宙空間で極超音速にて飛来する弾道弾を待ち受け、相手が衝突した運動エネルギーだけで粉々に破壊するという技術は、開発が困難ではありましたが実現しています。蛇足ながら最新のミリ波レーダーと遠隔操作銃塔を応用した場合、今の技術では飛来する弾丸を弾丸で、機銃弾で落とすことも実質は可能、という。

 秋田県と山口県へ建設予定であったが中止されたイージスアショア。しかしイージス艦では難しい、という実状もあります。弾道ミサイル防衛だけを考えるのならば、艦砲や対艦ミサイル、30ノット高速性能や対潜戦闘能力は必要ではなく、言い換えるならば最新鋭のパソコンをWebにつながず文章作成のみに用いるようなオーバースペックが挙げられます。

 まや型イージス艦の増勢という選択肢もありますが、海上自衛隊の人員不足は深刻が指摘され既に十年以上が棚上げされており、いよいよ重大事故発生となりうる懸念さえあります、イージス艦を増勢するにしても基地業務を一部民間委託したうえでさえ、海上自衛官の定員を少なくとも500名、可能であれば800名は増員しなければ現実的ではないのです。

 SBX-1。アメリカのSBX-1のような海上配備Xバンドレーダーを原型とした、洋上石油掘削プラットフォーム上にイージスアショアをおいた場合はどうか。海上に埋め立てるのではなく、半潜水式の洋上構造物として。もちろん日本の技術ではメガフロートのようなものでもよい。こうしたものにイージスアショアを設置すれば、落下など問題はありません。

 洋上石油掘削プラットフォーム。これは環境汚染などが問題となりますが、汚染は掘削により生じるものであり、自動車が動かさなければ温室効果ガスを出さないようにこちらも環境汚染の問題はありません。そして洋上構造物型のものは海上設置型と異なり、それ本体が浮体構造物であるため、万一の際には自力低速航行や曳航での移動が可能なのですね。

 陸上自衛隊が運用するイージスアショア。海上自衛隊の人員不足が問題となっている点は前述しましたが、イージスアショアは陸上自衛隊が引き受ける事となっています。陸上自衛隊にイージスシステム運用実績がないために、今後は海上自衛隊イージス艦での訓練支援などが課題となりそうですが、まだ陸上自衛隊には余裕が僅かにあるという解釈です。

 SM-6。陸上防衛の観点から、イージスアショアは有用です、それはスタンダードSM-6という広域防空ミサイルを運用出来るためで、240kmから目標高度によっては370km以遠の航空目標を迎撃可能です。240kmというと山口県の北長門海岸公園沖に配備した場合、兵庫県姫路市や熊本県天草が防衛圏内に、370kmならば京都府南部まで圏内に入ります。

 石油掘削プラットフォームは、外見に比して非常に頑丈に設計することが可能です。その理由はもっとも需要の大きな地域に北海油田やバレンツ海があり、氷山衝突を想定しているためで、優先順位が航行よりも強靱を第一とするため。問題は件のSBX-1は基部製造がなんとロシア製、日本の造船技術で建造する場合はもう少し違った設計もあり得ましょう。

 陸上防衛の観点からイージスアショアをみた場合は、本土防空要塞というべき、いやSM-6は対艦ミサイルとしても運用でき、本土戦略防衛要塞となり得ます。最大の難点は動けない機動力皆無という点でしたが、SBX-1方式を採るならば、万一の際には回避し、本土直接武力侵攻の際には、むつ湾や瀬戸内海へ退避し、ミサイル防衛継続が可能となるのです。

 ながと、むつ。こうした名称を上掲しましたが、もともとミサイル防衛、特にイージス艦によるイージスミサイル防衛は海上自衛隊の専門分野です、そして艦名ながと、という艦名は前に護衛艦いずも建造に際し政治的理由から採用しなかった名称なのですね。海上自衛隊の任務を陸上自衛隊が担う、この観点からも長門と陸奥の継承は相応しい名称と思う。

 長門国と陸奥国、旧律令制度のこの地域が防衛上最適というのも奇遇、山口県沖にイージスアショアながと、秋田県沖へ配備するものをイージスアショアむつ。SBX-1を例に挙げますと基準排水量は50000tありまして、これは旧海軍の長門型戦艦を上回るもので名前負けはしていません。こうしたものを陸上自衛隊が配備する代替案は検討されて然るべきとおもいます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (11)
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