■自衛隊オスプレイも岩国到着
自衛隊向けV-22オスプレイ可動翼輸送機岩国到着の話題を先日紹介しましたが、今回はその搭載車輛完成の話題を。
カワサキATV,報道によれば汎用軽機動車として水陸機動団用特殊小型車両がカワサキモーターズ社に2019年、発注されていましたがこのほど防衛省へ納入されたとのこと。これは所謂バギー然としたオフロード用の小型汎用車両です。その納入車両は報道写真を見るかぎり、高い信頼性で隊員に好評であるトヨタ製高機動車をそのままコンパクト化した趣き。
カワサキATVは国産汎用車を防衛用に採用したものであり、優れた民生品はそのまま応用する、という視点では英断といえましょう。願わくば、自走性能が高いカワサキATV,可能であれば少数配備に留まらず、空挺団に全国の偵察隊や連隊本部管理中隊の情報小隊などにも広範な配備が望ましいですね。偵察機材はオートバイより積めますし、機銃も搭載可能です。
汎用軽機動車は水陸機動団が通常の車両を使用できない環境下での運用を想定しています。その環境とは。陸上自衛隊では島嶼部防衛能力強化へ水陸機動団を新編するとともにその翼としてV-22可動翼輸送機を導入しました。V-22は従来のヘリコプターと比較して極めて高い巡航速度と航続距離を有していますが一つだけ難点があります。余り積めないという。
V-22の難点、それは機内容積で、キャビン部分は全長7.37mと最大幅1.80m、高さも最大1.83mまでしかありません。従って車両を搭載する場合は最大でも幅1.72mまでと高さは1.68mまでという制限があります。これはCH-47J輸送ヘリコプター機内に搭載できる高機動車が全長4.91mと車幅2.15mですからこの大きさはV-22機内には全く収まりません。
グロウラーITV、V-22を多用するアメリカ海兵隊ではV-22の機内容積に併せて専用の四輪駆動車を開発しました。海兵隊にはかつてM-151ケネディジープという小型車両が大量配備されていましたが、全幅1.63m、ぎりぎりは入りそうに見えますが座席などを取り外す必要があり、搭載は現実的でなく結局既存車のデッドストック活用では対応できなかった。
ITVシリーズ、M-1161ITV-LSVがスカウト用の機銃搭載型、M-1163ITV-PMが重迫撃砲牽引車、グロウラーはこの二種類が調達されています。グロウラーは車幅1.51mとなっていまして、座席を折り畳んだV-22であれば充分搭載できるものではありました。しかし、実際にはこのグロウラー、搭載はできるのですが、ぎりぎりで若干時間を要するともいう。
ポラリスMRZR,アメリカ陸軍では特殊部隊向けにポラリス社製全地形車両の導入を決定、この決定は空軍特殊部隊なども踏襲してゆくこととなります。ポラリスMRZRは上記のグロウラーよりも車幅が更に抑えられており、これは従来の汎用車両の系譜ではなく、特殊部隊用のFAV軽高速攻撃車両というバギー的な車両の延長線上にある車両といえるもの。
FAVは1980年代の陸軍緊急展開部隊構想の一端として導入されたもので、第9軽歩兵師団が日米合同演習に東富士演習場や北海道大演習場へ持ち込んだものですが、乗車した場合は余りに泥飛沫が凄くオートバイの方がまし、という代物でした。なおこの緊急展開部隊構想では、陸軍が海兵隊の採用したLAV-25軽装甲車試験採用も軽量という事で行っている。
LAV-25のほうは一時貸与にて沙汰やみになり、ストライカー装甲車として日の目をみたのは冷戦後、改めて緊急展開が求められたミディアム旅団構想の際でした。他方FAVは湾岸戦争においてイラクへ浸透した特殊部隊が多用していますが、あくまで特殊車両という扱い。他方、後継となったポラリスMRZRについては逆に海兵隊が注目する事となりました。
アメリカ海兵隊は2010年代後半にポラリスMRZRを各海兵連隊へ20両程度を配備させたとのことで、一説には空軍特殊部隊がCV-22オスプレイでのMRZR運用成果の高さを評価し、海兵隊もMV-22用に採用した、ともいわれています。そして自衛隊も、V-22をアメリカに続いて導入することとなり、何らかの車両搭載が求められることに、となってゆく。
カワサキATVが採用された背景は不明ですが、ポラリスMRZRとともにカワサキATVも市販車として販売されています、そして驚くのは半分程度という抑えられた取得費用で調達できる、という事でしょうか。実は専用車両というものは高くなるものでして上記のグロウラーITVなどは専用設計であることから、実にハンヴィーの倍近い費用を要している。
自衛隊向けのV-22が先日岩国航空基地へ搬入されまして、すでに搭乗員教育はアメリカ本土で実施されているため、まもなく部隊が置かれる千葉県の木更津駐屯地へ回航されることとなるのでしょう。そして機体が配備されたのに併せて、搭載車両が発表された、という構図です。陸上自衛隊では61式特殊運搬車以来の特殊輸送車、ということかもしれない。
61式特殊運搬車という、山岳戦用車両を自衛隊は1950年代末期に開発していました、国土防衛を考える場合に火砲を山間部で輸送する車両が必要だ、という認識です。しかし特殊すぎて速度が遅く、重火器を遅い特殊車両で輸送するくらいならば逆に軽い火砲をジープで運ぶという選択肢により試験生産されたのみ。対して今回は上手く行きそうですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
自衛隊向けV-22オスプレイ可動翼輸送機岩国到着の話題を先日紹介しましたが、今回はその搭載車輛完成の話題を。
カワサキATV,報道によれば汎用軽機動車として水陸機動団用特殊小型車両がカワサキモーターズ社に2019年、発注されていましたがこのほど防衛省へ納入されたとのこと。これは所謂バギー然としたオフロード用の小型汎用車両です。その納入車両は報道写真を見るかぎり、高い信頼性で隊員に好評であるトヨタ製高機動車をそのままコンパクト化した趣き。
カワサキATVは国産汎用車を防衛用に採用したものであり、優れた民生品はそのまま応用する、という視点では英断といえましょう。願わくば、自走性能が高いカワサキATV,可能であれば少数配備に留まらず、空挺団に全国の偵察隊や連隊本部管理中隊の情報小隊などにも広範な配備が望ましいですね。偵察機材はオートバイより積めますし、機銃も搭載可能です。
汎用軽機動車は水陸機動団が通常の車両を使用できない環境下での運用を想定しています。その環境とは。陸上自衛隊では島嶼部防衛能力強化へ水陸機動団を新編するとともにその翼としてV-22可動翼輸送機を導入しました。V-22は従来のヘリコプターと比較して極めて高い巡航速度と航続距離を有していますが一つだけ難点があります。余り積めないという。
V-22の難点、それは機内容積で、キャビン部分は全長7.37mと最大幅1.80m、高さも最大1.83mまでしかありません。従って車両を搭載する場合は最大でも幅1.72mまでと高さは1.68mまでという制限があります。これはCH-47J輸送ヘリコプター機内に搭載できる高機動車が全長4.91mと車幅2.15mですからこの大きさはV-22機内には全く収まりません。
グロウラーITV、V-22を多用するアメリカ海兵隊ではV-22の機内容積に併せて専用の四輪駆動車を開発しました。海兵隊にはかつてM-151ケネディジープという小型車両が大量配備されていましたが、全幅1.63m、ぎりぎりは入りそうに見えますが座席などを取り外す必要があり、搭載は現実的でなく結局既存車のデッドストック活用では対応できなかった。
ITVシリーズ、M-1161ITV-LSVがスカウト用の機銃搭載型、M-1163ITV-PMが重迫撃砲牽引車、グロウラーはこの二種類が調達されています。グロウラーは車幅1.51mとなっていまして、座席を折り畳んだV-22であれば充分搭載できるものではありました。しかし、実際にはこのグロウラー、搭載はできるのですが、ぎりぎりで若干時間を要するともいう。
ポラリスMRZR,アメリカ陸軍では特殊部隊向けにポラリス社製全地形車両の導入を決定、この決定は空軍特殊部隊なども踏襲してゆくこととなります。ポラリスMRZRは上記のグロウラーよりも車幅が更に抑えられており、これは従来の汎用車両の系譜ではなく、特殊部隊用のFAV軽高速攻撃車両というバギー的な車両の延長線上にある車両といえるもの。
FAVは1980年代の陸軍緊急展開部隊構想の一端として導入されたもので、第9軽歩兵師団が日米合同演習に東富士演習場や北海道大演習場へ持ち込んだものですが、乗車した場合は余りに泥飛沫が凄くオートバイの方がまし、という代物でした。なおこの緊急展開部隊構想では、陸軍が海兵隊の採用したLAV-25軽装甲車試験採用も軽量という事で行っている。
LAV-25のほうは一時貸与にて沙汰やみになり、ストライカー装甲車として日の目をみたのは冷戦後、改めて緊急展開が求められたミディアム旅団構想の際でした。他方FAVは湾岸戦争においてイラクへ浸透した特殊部隊が多用していますが、あくまで特殊車両という扱い。他方、後継となったポラリスMRZRについては逆に海兵隊が注目する事となりました。
アメリカ海兵隊は2010年代後半にポラリスMRZRを各海兵連隊へ20両程度を配備させたとのことで、一説には空軍特殊部隊がCV-22オスプレイでのMRZR運用成果の高さを評価し、海兵隊もMV-22用に採用した、ともいわれています。そして自衛隊も、V-22をアメリカに続いて導入することとなり、何らかの車両搭載が求められることに、となってゆく。
カワサキATVが採用された背景は不明ですが、ポラリスMRZRとともにカワサキATVも市販車として販売されています、そして驚くのは半分程度という抑えられた取得費用で調達できる、という事でしょうか。実は専用車両というものは高くなるものでして上記のグロウラーITVなどは専用設計であることから、実にハンヴィーの倍近い費用を要している。
自衛隊向けのV-22が先日岩国航空基地へ搬入されまして、すでに搭乗員教育はアメリカ本土で実施されているため、まもなく部隊が置かれる千葉県の木更津駐屯地へ回航されることとなるのでしょう。そして機体が配備されたのに併せて、搭載車両が発表された、という構図です。陸上自衛隊では61式特殊運搬車以来の特殊輸送車、ということかもしれない。
61式特殊運搬車という、山岳戦用車両を自衛隊は1950年代末期に開発していました、国土防衛を考える場合に火砲を山間部で輸送する車両が必要だ、という認識です。しかし特殊すぎて速度が遅く、重火器を遅い特殊車両で輸送するくらいならば逆に軽い火砲をジープで運ぶという選択肢により試験生産されたのみ。対して今回は上手く行きそうですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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