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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】韓国とポーランド,FA-50block10とFA-50block20はFA-50GFとFA-50PL

2024-11-19 20:11:54 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 わが国はT-4練習機後継機開発へようやく動き始めましたが練習機関連という事で今回は韓国のTA-50ゴールデンイーグルとFA-50の話題を。

 ポーランドが導入しているFA-50戦闘機について重大な錯誤があった模様です。それは稼働率の問題やミサイル運用能力に関するもので、KAI韓国航空宇宙産業との間で交わされた契約文書は正文としての英文に明記されていますが、ポーランド側の解釈幅の問題から韓国防衛事業庁が反論の声明を発表する異例の事態となっています。

 FA-50戦闘機の性能についてポーランド側は当初の想定されたものと異なることに反発しているようですが、ポーランドが2022年ロシアウクライナ戦争勃発時に急遽調達計画を立ち上げ、2022年内に取得が可能な戦闘機を求めたため、韓国空軍向けTA-50超音速練習機にFA-50戦闘機用火器管制プログラムを搭載した機種を緊急供与しています。

 TA-50練習機を再塗装し上記の火器管制システムを搭載の上輸出する事はポーランドとの間で2022年内納入に際しての留意事項として合意されていたはずですが、ポーランド空軍はこれがFA-50block10水準の機体であることを契約上見落としていたかたち。自衛戦闘能力を持つ攻撃機か、制空戦闘に対応できるかという性能の差があります。■

 ポーランド空軍が導入しているFA-50戦闘機のblock10問題、2022年に契約し2022年内に引き渡しを行うという、21世紀には中々考えられない緊急取得を行った構図ですが、先ずポーランドにはFA-50block10を配備し、つなぎとしての役割と共に続いて新造したFA-50block20を輸出するという契約はポーランド自身も発表していたものでした。

 FA-50block10とFA-50block20の相違点はAMRAAMのような中距離空対空ミサイルの運用能力の有無を示しています。Block10ではレーザー誘導爆弾の運用能力と共にAIM-9Mサイドワインダー空対空ミサイルの運用能力が付与されていますが、AIM-9Mミサイルの射程は18kmであり、Su-30やMiG-29などとの間では一方的に追い込まれます。

 ポーランド空軍にはAIM-9Xは配備、これはAIM-9の第四世代のもので射程は40㎞、中間指令誘導と画像素子誘導方式併用であり、FA-50block10にはINS誘導装置が無い、西側空軍では冷戦時代に第三世代までのAIM-9を大量備蓄しているため問題は生じませんが、旧共産圏のポーランドには備蓄がなく、搭載ミサイルが無い状態となっています。■

 ポーランド空軍向けFA-50戦闘機AMRAAM運用能力について。韓国防衛事業庁は異例の公式声明を発表しました。ポーランド側の主張としてFA-50戦闘機全てのAMRAAMミサイル運用能力が付与されるものと理解しているようですが、初期の輸出したblock10仕様のものはFA-50GFとして制式化され、この契約にAMRAAMの条項はない、と。

 FA-50GFそのものの性能は高く、AIM-9サイドワインダーミサイル運用能力は勿論、リンク16データリンクシステムに対応するとともにNATO規格のIFF識別装置を搭載し、GPSとINS慣性航法装置を統合したEGI航法装置を搭載、スナイパーポッド搭載能力がありペイヴウェイⅡレーザー誘導爆弾の運用能力があり、12機を調達する契約だ。

 FA-50PL、ポーランドが導入するblock20相当の機体はFA-50PLで、AIM-120C7-AMRAAMミサイルの運用能力を持つものですが、この運用能力についてアメリカ政府が了承したのは2022年9月23日であるため、もともと契約成立の時点で開発段階であることはポーランド側も理解できたはずで、また契約にも明記されているとのこと。■

 ポーランド国内ではFA-50GF戦闘機稼働状況に関する誤報道が為され、韓国防衛事業庁が公式に反論を出す状況となりました。それはポーランド軍が導入した11機が不稼働状態である、というものです。これについて韓国防衛事業庁は、韓国からポーランドへ輸出した予備部品がポーランド税関で通関手続きの停滞に見舞われた為としている。

 通関手続きの不備により予備部品が空軍へ納入できなかったために稼働不能の機体が出ているが、11機ではなく6機、それも一時的に予備部品到着まで不稼働となったものであり、10月までに11機が稼働状態に復帰しているとのこと。FA-50はNATOではポーランドのみが採用している機種であり、NATO部品プールには予備部品がありません。

 FA-50GFの原型であるFA-50block10はT-50超音速練習機の派生型として開発されたものですが、練習機故に航続距離は1800㎞と抑えられているものの、中小国空軍がもちいる航空機としては価格が安く、充分な性能を持ちます。ただ、AMRAAMを運用できるblock20と混同することで、過剰な期待が発生している、その椿事というべきでしょう。

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