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榛名備防録:IRフレアーとはなにか,エンジンの熱源追う赤外線誘導ミサイルの命中から逃れる重要手段

2022-07-18 07:00:54 | 先端軍事テクノロジー
■榛名防衛備忘録
 先日"IRフレアーってなんですか""デコイとは"という後半の方は哲学的とも取れる話題を振られましたので一つ整理してみました。

 タリウムなど特性の物質に赤外線が照射されると電子を発信する、これは1901年にインドのジャガディッシュチャンドラボース博士が発見しました。これを元にタリウムと硫黄の混合物やモリブデン等を用いた感光性半導体など、熱を感知する化合物が実用化され、特に軍事用途では赤外線は可視光線ではない為に夜間でも見通す技術として注目されます。

 硫化鉛やアンチモン化インジウムとテルル化水銀カドミウムなどを用いた光電子増倍管、赤外線を検知する物質は様々な研究により、初期のタリウムよりも精度が高いものが発見されてゆくのですが、軍事分野としては革命的発見でした。当初は対空聴音器に代わる防空警戒手段として注目されますが、レーダーの開発とともに過去のものとなる、しかし。

 赤外線を検知する技術は、赤外線の特性として可視光線よりも空気中で減衰する率が低く、戦闘機の空対空ミサイルなどに応用される事となります、赤外線を検知し電子情報化するとともにその発信源に向け飛翔する、特に航空機を狙う場合はエンジンが猛烈な赤外線、燃料を燃焼させている為に周りと温度が異なり、航空機を狙うミサイルとして有用でした。

 太陽に向けて急上昇する、夜はどうするのかというような問題はさて置き、初期の赤外線誘導ミサイルに対してはミサイルとは真逆の方向から太陽に向けて急上昇すると、ミサイルは太陽から発する赤外線を照準し狙われた航空機は生き延びる事ができました。ただ、探知技術が発達するとミサイルは戦闘機と太陽を見分けられるようになってゆくのですね。

 赤外線フレアーは、要するに周りにエンジンの熱源よりも高温のものが存在しない為にミサイルが追尾してくるのだから、それならばより強力な熱源を航空機は発したならばミサイルはそちらに誘導されるのではないか、特にフレアーを発して同時に急激なミサイルとは逆の方向へ飛翔する事で回避できるのではないか、こうした視点から開発されました。

 赤外線誘導技術は、例えば赤外線を点としてではなく画像として認識する技術や、そもそも誘導技術にはレーダー誘導方式など赤外線フレアーを意に介さない誘導方式もあり、こちらにはチャフという金属片を散布するのですが、相手が赤外線誘導を用いる限り、フレアーを大量に発射する事である程度は回避出来る為、重要な対ミサイル手段となっている。

 ソフトキル、ミサイル等に攻撃を受けた場合にミサイルを直接撃墜せず自己への命中を回避する手段はソフトキルと呼ばれ、フレアーやチャフ等のデコイ、護衛艦などには膨張筏にレーダー反射板を装着し海洋に展開させるデコイ、そして電子妨害装置やレーザー照射によりミサイルの誘導装置を幻惑する技術などが開発され、ミサイル攻撃に備えています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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