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【日曜特集】第33普通科連隊-久居駐屯地創設61周年祭(6)普通科の戦闘力(2013-04-21)

2020-09-13 20:00:30 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■第33普通科連隊突撃に前へ
 普通科部隊の訓練展示は特科が敵の動きを圧し込め戦車が敵装甲部隊の動きを封じた、いよいよ普通科の時間がやってきます。

 相互に支援しつつ、一斉伏せる。89式小銃と手榴弾に9mm拳銃、実のところこうしたものが市街地戦闘ではおおきな比重を有する部分もあるのでして、平野部の多くが市街地という日本、専守防衛を考えるならば市街戦を重視し国内の都市に籠もる選択肢も、ある。

 敵弾幕下の交互躍進は危険が伴う、訓練でも手を捻挫しやすいし肩も脱臼しやすい、なにしろ全体重をかけて早駆けから伏せるのですから、手の向きや膝肘の関節を考えて伏せなければ怪我をしてしまう。簡単そうに見えてサバイバルゲームで真似をすると要注意だ。

 車と航空機と伏せ撃ちと躍進機動という、これもまた自衛隊らしい情景が展開される。一方が前進するさなかにもう一方が伏せて射撃を展開し敵を牽制する、陸上戦闘の基本の一つ。地形を読み遮蔽物を探し、相手視点になりその先をつく、普通科というものは奥深い。

 普通科隊員の前進とともに梱包爆薬も展開している。早駆けは教範で20m程度づつ躍進しなければ危険という。そして敵前では最後には匍匐前進だ、肩肘片膝だけを付いて素早く進む第一匍匐、けっこう汚れる場所が偏るのでどんな機動を行ったのかが直ぐにわかる。

 FH-70の空包射撃、眩しい発砲焔とともに障害処理支援射撃だ。白リン弾などで敵陣地を煙覆してしまえば、我がほうの障害処理への危険は大きく減退します、敵に近づいた普通科隊員は第二匍匐という片足腿を着いてもう少し姿勢を低くしつつ敵に迫ってゆく。

 障害処理支援にて89式小銃25丁とMINIMI3丁が一斉に火を噴く、軽火器とはいえこれだけの数がそろえばかなり心強い、そして一部は第三匍匐という腰のあたりと肩肘を着いて更に姿勢を低く前進してゆき、素早く射撃姿勢を採って即座に射撃できるよう油断せず。

 89式小銃もこれだけそろうとなかなかの弾幕を張れる。89式小銃は必要ならば06式小銃擲弾により敵を制圧することも可能、これは小銃銃口に装着し空包ににた擲弾薬筒で発射、300m程度先の目標を制圧させることも可能です、訓練展示では出てきませんけれども、ね。

 M-1破壊筒と梱包爆薬の障害処理への前進だ。M-1破壊筒は鉄条網などを破壊する定番、梱包爆薬は爆薬を文字通り梱包したもので障害物などを爆破することもできますし、地雷原を誘爆させることも。軍隊で一番火薬を使うのは砲兵や戦車より工兵であったりします。

 第一線を超越して施設作業小隊が進む。連隊戦闘団を編成する場合には普通科連隊へ師団施設大隊から施設中隊が配属されることもある、いまは方面施設に集約されていますが、75式装甲ドーザ装置や92式地雷原処理車、一部に施設作業車という便利な装備もあります。

 M-1破壊筒と梱包爆薬、M-1破壊筒は点火をイメージする赤いコードが目立っています。実戦では前述の通り、障害構築は陣地構築と一体となっていますので、これはかなり危険だ、場合によっては遅滞のための障害、というものもあります。陣地は用途により異なる。

 鉄条網にM-1破壊筒を挿入する、実戦ならば大爆発、ということになりますので、設置したらば遮蔽物に素早く隠れなければなりません。もちろん、これを実物でやると周辺のマンション窓ガラスが大変なことになりますから、展示のみ。訓練場も限界はあるのだ。

 障害除去の最中、普通科隊員は匍匐によりじりじりと迫ってゆく、第四匍匐というのがいちばん馴染み有る匍匐、というところか。いや、第四匍匐って朝にお布団から目覚まし時計に向けて這ってゆく姿勢と似ているのですよね、ベッドなどでも地形に対応、寝た姿勢に近い。

 爆破成功、梱包爆薬が地形障害をも啓開した。いよいよ訓練展示は終盤へ向かいます、仮設敵陣地を守る防御線を丸裸にしたのですから、戦車と火砲が支援し、そのまま前進してゆけばよい。もう少し国民理解あれば、こうした長期戦のような戦いを国土で避けられる。

 匍匐前進もいろいろある。第五匍匐は第四匍匐よりも姿勢を低くしていまして、顔面を地面にほとんど着け、もう危機的な少しでも姿勢をあげれば敵の射撃を受ける状況で地面に潜らんがばかりの姿勢でそれでも移動、同じところにいたらば撃たれる状況を回避する。

 FH-70の突撃支援射撃で発砲焔が閃く、やはり発砲焔が写ると達成感があります、初めて撮影に成功したのは2005年、FH-70の空包射撃でした。ちなみに生まれて初めて発砲焔全般の最初の一枚を撮影したのは2005年富士総合火力演習の90式戦車実弾射撃の際でした。

 最終弾落下、地上戦闘の決着をつけるのは陸上戦闘の本質が土地の収奪にある点に帰結し、我が国土を占領した敵を陣地から銃剣で引き吊り出す事にある、攻撃準備射撃の最終弾落下とともに間髪入れず普通科部隊が小銃に銃剣を装着、それこそ一斉になだれ込んでゆく。

 74式戦車が最終弾落下とともに躍進機動を開始した、背景にV-107が、戦車と空中機動、という情景を醸しています。V-107ヘリコプターも自衛隊の一時代を築いたものでして、これはCH-47に置き換わっていますが一回ぐらい久居でCH-47空中機動展示を見てみたい。

 着剣とともに89式小銃を手に間髪入れず立ち上がる、小隊長が先ず範を示し、班長が時機を読みとる。前時代的と思う無かれ、結局のところ無人機がどう発達しようとも、ミサイルの射程が世界を覆うとも、修練する先というものは人の技術、そして胆力、といえる。

 戦車の前進とともに一個小隊が全員射撃を開始した。74式戦車の最高速度は53km/h、しっかりと無限軌道が地面を食い込んで確たる躍動へ展開させ、その上で普通科隊員たちも近接戦闘を担うべく、先ず、射撃態勢をとりつつ、いつの間にか小銃着剣されていますね。

 突撃に前へッ。突撃へ移行します、先ほどの匍匐前進は攻撃発起点へ着実な前進を進めるとともに被我の射撃、我がほうの特科部隊の射撃をも意識したものであり、155mm砲弾の最終弾落下とともに部隊の主導権は特科や施設から普通科が主役という時間を迎えました。

 戦車が鉄条網の残滓を踏みつぶし普通科隊員も我先にと前へ、74式戦車は旧式ではあるのですが、正面装甲の防御力は近接戦闘では今なお強く、対戦車ミサイルなど最低射程距離の内側に入ってしまえば普通科部隊の強靱な防盾役割も果たす、ただ10式戦車も欲しいが。

 74式戦車が射撃する、発砲焔写らず、しかし迫力は凄い、なにしろ左右上下に遠近にと全ての瞬間に状況は躍動へ進んでいるのですから寸秒視点視野を転じている内に久居訓練場の至る所で状況動く、望遠ズームレンズ越しに全てを把握することはもはやできないほど。

 MINIMIと89式小銃とともに隊員は鉄条網を越える、M-1破壊筒で爆破しこじ開けたという想定の地点を、普通科隊員が飛び越えてゆく。これ、一見しますと簡単そうですが、フル装備の普通科隊員の装備と柔らかい足場で長い距離を集中力とともに進まねばならない。

 横隊に広がり敵の抵抗を小銃射撃で破砕してゆく、陣形をくむ様子は古代戦術のような印象でして、一応はガンハンドリングとして訓練を実施しているのですが、知識や思考を省いて習慣として技術を文字通り身につけていなければ、という視点で訓練を積んでいます。

 仮設敵倒れた真上を前進へ、撃った、狙った、撃った、当てた、そして前へ。こうして仮設敵陣地へ小銃小隊がなだれ込んだところで、状況終了となりました。仮設敵を制圧し、当面の敵を撃破した、という想定なのでしょう。訓練場には状況終了のラッパが鳴り響く。

 状況終了、UH-1Jが戻ってきた。ここから駐屯地祭は式典と観閲行進に訓練展示、という一連の流れが終了しまして、そしてこれから訓練展示へ。あけの駐屯地の第10飛行隊よりUH-1J多用途ヘリコプターが広い訓練場へ装備品展示のために舞い降りた、一般公開行う。

 装備品展示のFH-70、ここからは道路を越えて隣接する久居駐屯地にて。久居駐屯地は陸軍歩兵33連隊の兵営跡地に戦後自衛隊が第33普通科連隊をおいていまして、駐屯地の歴史は1907年から百年以上にもわたる歴史を紡いだ。しばし駐屯地の中へ装備品展示を巡る。

 61周年記念行事。2013年のこの日は陸上自衛隊久居駐屯地として創設されてから61周年を迎えることとなりました。全国の師団と旅団隷下には普通科連隊が三個、元混成団は2個、一部は即応機動連隊ですが、配置され、こうした陣容で“その時”に備えているのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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