北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】無人機ガーディアンの躍進と擲弾筒から発射Ninox無人機にHero-30徘徊弾薬

2020-09-14 20:20:21 | インポート
■週報:世界の防衛,最新9論点
 今回は無人機や航空機装備の話題を中心に防衛の話題を視てゆきましょう。しかし最初におつたえるするのはインポート記事ではなく北大路機関記事です。

 自民党総裁選が本日開票され菅氏377票-岸田氏89票-石破氏68票と自民党内での圧倒的支持を集め現在官房長官を務めている菅義偉氏が新総裁に選ばれました。国会議員票とともに地方票でも菅氏89票-石破氏42票-岸田氏10票と過半数の支持を集めました。新総裁は16日に行われる衆議院内閣総理大臣指名選挙を経て第99代内閣総理大臣に就任します。

 安倍総理大臣の持病悪化に伴う7年8カ月という憲政史上最長の安定政権からの総裁交代、新型コロナウィルスCOVID-19のコロナ禍下での景気後退やポストコロナ時代に懸念される中国と各国対立を見据えての米中隣国としての日本の役割、首都圏人口集中と少子高齢化時代に新しい成長戦略を如何に日本と世界に示せるか、重責への手腕を期待しましょう。
■中国海軍最大規模の演習へ
 防衛関係の各国情勢、先ずは海洋監視の無人機重要性を示す我が国周辺での大規模軍事演習の話題から。

 中国人民解放軍は9月22日から26日まで朝鮮半島西方の黄海において大規模な海軍実弾演習を実施するとのこと、訓練海域は民間船舶など航行禁止となる。この訓練には航空母艦を中心とする水上戦闘艦部隊に加えミサイル爆撃機や偵察機等も参加するとしている。人民解放軍によれば2020年に実施される軍事演習としては最大規模になるとしている。

 訓練海域は山東省青島東方海域とともに中国東部江蘇省連雲港においても設定、演習の規模が垣間見えよう。黄海での大規模な演習は今回が初めてではないが空母参加は2016年から、しかし2017年8月に実施されて以来、周辺国を過度に刺激しない観点から避けられていたが今回三年ぶりに実施される。演習海域は朝鮮半島や九州沖縄及び台湾海峡にも近い。
■ベルギー軍MQ-9B導入
 ベルギー軍がMQ-9無人偵察機を導入するとの事です。が、写真は横田で撮ったより大型のRQ-4しかありませんのでご了承ください、五島列島で試験運用の際に撮影に行けばよかったか。

 ベルギー軍はMQ-9B無人偵察機4機と関連機材を1億8900万ドルで導入すると発表しました。これは8月15日にMQ-9を生産するGA社が発表したもので、1億8900万ドルの契約にはMQ-9B無人偵察機4機と地上管制装置2セット、消耗品や整備器材や教育支援等を含むとされ、この契約は2024年3月31日までに器材の納入を期限としています。

 MQ-9Bはスカイガーディアンと称されるものでMQ-9Aリーパーの改良型とされています、全幅は24mで高度15000mを40時間に渡り滞空する能力があり、民間機が運用される空港などでも運用可能となるよう、MQ-9シリーズとしては初めてアメリカ連邦航空局FAAより飛行型式証明を付与されているほか、自律飛行で大西洋無着陸飛行等も実施しました。
■台湾にガーディアン輸出
 ガーディアン無人機はベルギーに加えて台湾でも配備の道筋が見えてきました。台湾は永くP-3C哨戒機増強を希望していましたが海洋監視に無人機を考えている模様です。

 アメリカ政府は中華民国台湾政府へガーディアン無人偵察機有償供与を交渉中のようです。ガーディアン無人偵察機はMQ-9リーパー無人攻撃機の非武装型で武装を搭載しない分燃料を多く搭載する為航続距離を1万1100kmと長大なものです。北東アジア地域では長崎県五島列島での運用試験を経て海上保安庁が広域巡回用に複数導入を計画しています。

 ガーディアン無人偵察機は台湾の中華民国陸軍へ配備されるとみられ、ガーディアン4機と地上管制装置及び整備器材、そして訓練支援費用や地上訓練装置を含む費用は6億ドル程度となる見込みです。ただ、高性能の無人偵察機導入は米中対立を激化させる事が必至であり、ロイター等が報じたほかに駐米中華民国外交代表部からの公式発表はありません。
■エアフォースワン危機一髪?
 エアフォースワンが限定的ですが危険にさらされている可能性があるとのこと。ありそうなエアフォースワンの写真がピンボケなので日本の政府専用機で代用だ。

 トランプ大統領が搭乗するエアフォースワンへ小型無人機が異常接近したという事件があり、アメリカ空軍が調査を進めています。事件は8月16日にワシントンDC近郊のアンドリュー空軍基地近くで発生、飛行中のエアフォースワンから同乗者がX字型で一部が黄色い無人機が確認できたとのこと。アンドリュー基地等コロンビア特別区は飛行禁止です。

 空軍は17日に無人機が飛行していた事への目撃情報がある事を声明で発表し、調査を開始しています。ただ、ワシントンDCコロンビア特別区は小型無人機が飛行していた場合にアンドリュー空軍基地のセンサーシステムが感知し警戒する態勢が維持されているのですが、当該無人機はセンサーに捕捉されなかった事も空軍は認めており対策が求められます。
■NATOのHero-30試験
 NATOは地中海で新型の無人機のようなものとして弾薬と無人機の中間装備を試験したとのこと。

 ドローン、特に自爆型ドローンはミサイルか。この素朴な疑問が多くの方により持たれているようですが、ドローンは広義にはミサイルと云い得るが狭義でいうミサイルではなく、徘徊型弾薬に含まれるものと説明できるかもしれません。徘徊型弾薬というのは発射し目標の位置は不明だが一定時間哨戒飛行し目標が居れば突入、いなければ回収、という。

 Hero-30というNATOにより開発されている海軍用徘徊型弾薬が6月に試験されました。これは速力100ノットで射程は40kmを発揮する、しかし重量は3kgのドローンです。一番想定されるのはホルムズ海峡のようにジェットスキーやプレジャーボートを利用しロケット弾攻撃を仕掛けてくる革命防衛隊のような脅威を空中から早期に発見、阻止すること。

 もちろん、グリフィンミサイルや無人ヘリコプターにヘルファイアミサイルを搭載しても対応できるのですが、前者は発射すると撃沈以外選択肢は無く、無人ヘリコプターは高価であり常時飛行させるには相応規模の施設が必要です、が、徘徊型弾薬であればこのリスクはりませんし、これが普及するならば強力な抑止力として攻撃を躊躇させられましょう。
■極超音速“メイヘル”計画
 極超音速滑空兵器は無人機とミサイルの分水嶺というべきものでしょうか。

 AFRLアメリカ空軍研究所は将来極超音速ミサイル“メイヘル”実証計画を発表しました。これはスクラムジェットエンジンを用いる極超音速兵器で実証計画にはミサイル本体の設計とスクラムジェットとの機体形状適合を期しており、機体形状は兵装搭載のモジュールを換装するもので、モジュールは弾頭、目標に併せて弾頭を交換できる構造を目指す。

 ARRW空中発射即応投射兵器計画としてアメリカ空軍ではAGM-183A極超音速ミサイルの開発がロッキード社を主契約企業として進められています、これはB-52爆撃機などにブースター本体とともに搭載し投射後ブースターにて高高度に上昇した後に分離し極超音速にて滑空する新装備ですが、メイヘルはこれより速度と射程が向上したものを目指します。
■擲弾銃から投射可能のNinox
 小型無人機は歩兵戦闘を変えつつあります、何しろ歩兵が個々に航空機を持つのですから。

 イスラエルのスピア社が歩兵携行用40mm擲弾銃から投射可能のNinox無人機を開発と発表しました。小型無人機には手投げ式や超小型無人機を掌から発進させる機種等が開発されていますが、手投げ式は発射に機材が必要な手投げに際しては目の前に落下事故のリスクがあり、掌からの発進型は強風での運用脆弱性等がありましたが、これを一新します。

 スピア社製Ninox無人機は所謂40mmグレネードランチャーから投射可能で幾つかの種類が発表されている。最軽量のNinox 40は重量250gで40分間の飛翔とともに昼夜に渡る光学情報収集が可能で徒歩移動中にも操作可能、Ninox 66は車載式で飛行管制に車載端末を必要としますが700gまでの爆薬を運搬可能で速力20ノット、50分間の飛行が可能という。

 NinoxでもNinox 103はシリーズ最大で1.5kgまでの輸送と60分間の滞空時間を有するとのこと。Ninox 40は歩兵がボディアーマーのマガジンパウチに収容し手軽に上空からの監視能力を歩兵分隊に付与でき、Ninox 66は戦車に装備する事で戦車兵が戦車車高以上の索敵能力を得られる、40mmグレネードランチャーからの簡易誘導弾としても運用可能です。
■LAIRCM航空機レーザー防御
 航空機がミサイルに狙われたらば逃げの一手ですが今はレーザーによる目つぶしが行える時代です。

 ノースロップグラマン社は七月、アメリカ空軍によりLAIRCM航空機レーザーミサイル防御の改良を受注した。LAIRCMとは赤外線誘導方式の地対空ミサイル等に対し、センサー部分にレーザーを照射する事でミサイルセンサーを破壊し誘導不能とさせるもの、既に横田基地配備のC-130輸送機等にも装備され、装着の様子はネコ耳のようともいわれる。

 レーザーによる迎撃は2000年代より多発した携帯地対空ミサイルによる航空基地周辺でのゲリラ攻撃を念頭に開発され、従来多用されたIRフレアーによる高熱源幻惑が赤外線特性を見破る携帯地対空ミサイルセンサーの発達により確実性を喪失した為のもの。アメリカ空軍は更に進歩し、センサー以外にミサイル本体を迎撃破壊するレーザーも開発中である。

 LAIRCM改良事業は既存機へのアップデートやアップグレードとともに未装備機へのつい会搭載を含むもので契約総額は1 億 5130 万ドルに上る。アメリカ空軍はC-17輸送機、C-130J輸送機、KC-46空中給油機、C-37要人輸送機へ装備を進めている他、同計画に相乗りする形で海軍もP-8哨戒機、海兵隊もCH-53K輸送ヘリコプターへ装備を進めている。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【日曜特集】第33普通科連隊-... | トップ | NATO分裂の危機-天然ガス強行... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

インポート」カテゴリの最新記事