■特報:世界の防衛,最新論点
今週はロケット砲兵装備について幾つか最新の話題を纏めてみましたが自衛隊のMLRS削減はやはり失策にしか見えません。
エストニア軍はアメリカよりHIMARS高機動ロケットシステム6両を5億ドルで導入します。HIMARSは現在アメリカがウクライナへ供与した車体が同国へ侵攻するロシア軍へ大きな威力を発揮していますが、エストニアはウクライナ侵攻前からロシア軍のバルト海沿岸地域スヴァルキギャップ侵攻を懸念し、HIMARS導入の検討をおこなっていました。
5億ドルの契約はアメリカ国務省が7月18日に承認したもので、内訳はM-142-HIMARSを6両、クラスター弾薬方式のM-30A2GPS誘導型ロケットコンテナ36基と単一弾頭型のM-31GPS誘導型ロケットコンテナ36基、射程延伸型のM-403GPS誘導型ロケットコンテナ36基と18基のM-57-ATACMS陸軍戦術ミサイルコンテナ等が含まれるとのことです。
HIMARSはMLRS多連装ロケットシステムの軽量装輪型として開発されていますが、もともとMLRSはクラスター弾薬を正確に散布する面制圧兵器でした、しかし今回エストニア軍が導入を希望したものは全て射程を延伸させましたGPS誘導方式の精密誘導弾であり、HIMARSは面制圧用の単純なロケットシステムから精密誘導システムに昇華したようです。
■M-270A2MLRS
MLRSは自衛隊の保有する現行のものについても延命改修の必要を感じます。
アメリカ陸軍は7月、ロッキードマーティン社より最新のM-270A2MLRS多連装ロケットシステムの受領を開始しました。MLRSは冷戦時代後期に開発されたもので車体部分はM-2ブラッドレイ装甲戦闘車の車体が応用されていました、ただ、冷戦時代から製造が開始された車輛である為に老朽化も進んでおり、このほど延命改修型が開発されたかたち。
PrSM陸軍プレジションミサイルや更に各種弾薬の開発など、アメリカ陸軍では将来においてもMLRSを運用する構想があり、少なくとも2050年代までは現役に留まる計画です。この為に防御力の向上、機動力の強化による陣地変換の迅速化を通じての生存性強化などが必要とされていました。M-270A2はM-270と比較し、外見も顕著に変化が在ります。
M-270A2MLRS多連装ロケットシステムはA2型として大幅に改良されています、まず、CFCS共通射撃統制システムを搭載していまして、攻撃までの所要時間が短縮、機動力については新しく600hpのディーゼルエンジンが採用され機動力も大幅に向上しているとのこと。そして車体部分のキャビンは装甲防御が一新され強化されているとのことでした。
■ヴィルハMロケット砲
ウクライナはHIMARS以外にも伝統的なソ連方式のロケット砲を駆使している。
ウクライナ軍は侵攻するロシア軍に対抗する為ヴィルハM重多連装ロケット砲システムを完成させました。これはMRLSといい、ウクライナ軍が従来ソ連時代から運用していたBM-30スマーチ多連装ロケット砲のウクライナ仕様であり、ウクライナ国防省によればロシア軍が運用するBM-30と比較し命中精度は10倍に改良されたと主張されています。
ヴィルハM重多連装ロケット砲システム、その略称のMRLSはアメリカが開発したMLRSと名称は似ていますが異なるものです、ロケット弾はMLRSの227mmに対して300mmとおおきく、射程も130kmと発表されている。ウクライナ国防省によればGPSを用いない電波誘導方式を採用しており、ロシア軍の現行行われる電子妨害に耐えるとのことです。
ロケット弾は300mmで重量は800kg、発射装置は32tの重量が在り、アメリカがウクライナに供与したHIMARSのように戦術輸送機に載せる事は出来ませんが300mmロケット弾12発を搭載、45秒間で禅弾を発射できるとしています。CEP半数命中界は30mとされており、開発は2018年より続けられていたとのことですが今年七月に漸く完成しました。
■PCL-191多連装ロケット
中国の弾道ミサイルや巡航ミサイルが日本を射程に収めている事は自明ですが次はロケット弾が沖縄を射程に収めつつあります。
中国人民解放軍は新しく開発したPCL-191多連装ロケット砲の評価試験をインド国境付近において実施しました。PCL-191多連装ロケット砲は2019年にパレードにおいて行進し存在が明らかになった装備ですが、緊張が続く中印国境はヒマラヤ山脈に隣接しており、山間部において運用できる性能を誇示する事が、試験の目的と考える事が出来ましょう。
PCL-191多連装ロケット砲は射程500kmのロケット弾をも射撃可能な全般支援用ロケット砲で国境地域のインド軍施設を後方から攻撃可能、ロケットコンテナ2基を搭載可能であり、これらのコンテナは300mmロケット弾5発コンテナか370mmロケット弾4発、750mmの戦術弾道ミサイル搭載コンテナも搭載可能、対艦ミサイル搭載コンテナなども。
PCL-191多連装ロケット砲、車体部分は45tのWS2400重輸送車両を応用しており、これは中国の万山特殊車両が開発、弾道ミサイル等のTEL機動発射装置にも応用されている車輛です。この為に非常に重量が在り、高山部の中印国境地域に展開する事は難しいとも考えられていましたが、7月に初めてこの地域での運用能力を実証したこととなります。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今週はロケット砲兵装備について幾つか最新の話題を纏めてみましたが自衛隊のMLRS削減はやはり失策にしか見えません。
エストニア軍はアメリカよりHIMARS高機動ロケットシステム6両を5億ドルで導入します。HIMARSは現在アメリカがウクライナへ供与した車体が同国へ侵攻するロシア軍へ大きな威力を発揮していますが、エストニアはウクライナ侵攻前からロシア軍のバルト海沿岸地域スヴァルキギャップ侵攻を懸念し、HIMARS導入の検討をおこなっていました。
5億ドルの契約はアメリカ国務省が7月18日に承認したもので、内訳はM-142-HIMARSを6両、クラスター弾薬方式のM-30A2GPS誘導型ロケットコンテナ36基と単一弾頭型のM-31GPS誘導型ロケットコンテナ36基、射程延伸型のM-403GPS誘導型ロケットコンテナ36基と18基のM-57-ATACMS陸軍戦術ミサイルコンテナ等が含まれるとのことです。
HIMARSはMLRS多連装ロケットシステムの軽量装輪型として開発されていますが、もともとMLRSはクラスター弾薬を正確に散布する面制圧兵器でした、しかし今回エストニア軍が導入を希望したものは全て射程を延伸させましたGPS誘導方式の精密誘導弾であり、HIMARSは面制圧用の単純なロケットシステムから精密誘導システムに昇華したようです。
■M-270A2MLRS
MLRSは自衛隊の保有する現行のものについても延命改修の必要を感じます。
アメリカ陸軍は7月、ロッキードマーティン社より最新のM-270A2MLRS多連装ロケットシステムの受領を開始しました。MLRSは冷戦時代後期に開発されたもので車体部分はM-2ブラッドレイ装甲戦闘車の車体が応用されていました、ただ、冷戦時代から製造が開始された車輛である為に老朽化も進んでおり、このほど延命改修型が開発されたかたち。
PrSM陸軍プレジションミサイルや更に各種弾薬の開発など、アメリカ陸軍では将来においてもMLRSを運用する構想があり、少なくとも2050年代までは現役に留まる計画です。この為に防御力の向上、機動力の強化による陣地変換の迅速化を通じての生存性強化などが必要とされていました。M-270A2はM-270と比較し、外見も顕著に変化が在ります。
M-270A2MLRS多連装ロケットシステムはA2型として大幅に改良されています、まず、CFCS共通射撃統制システムを搭載していまして、攻撃までの所要時間が短縮、機動力については新しく600hpのディーゼルエンジンが採用され機動力も大幅に向上しているとのこと。そして車体部分のキャビンは装甲防御が一新され強化されているとのことでした。
■ヴィルハMロケット砲
ウクライナはHIMARS以外にも伝統的なソ連方式のロケット砲を駆使している。
ウクライナ軍は侵攻するロシア軍に対抗する為ヴィルハM重多連装ロケット砲システムを完成させました。これはMRLSといい、ウクライナ軍が従来ソ連時代から運用していたBM-30スマーチ多連装ロケット砲のウクライナ仕様であり、ウクライナ国防省によればロシア軍が運用するBM-30と比較し命中精度は10倍に改良されたと主張されています。
ヴィルハM重多連装ロケット砲システム、その略称のMRLSはアメリカが開発したMLRSと名称は似ていますが異なるものです、ロケット弾はMLRSの227mmに対して300mmとおおきく、射程も130kmと発表されている。ウクライナ国防省によればGPSを用いない電波誘導方式を採用しており、ロシア軍の現行行われる電子妨害に耐えるとのことです。
ロケット弾は300mmで重量は800kg、発射装置は32tの重量が在り、アメリカがウクライナに供与したHIMARSのように戦術輸送機に載せる事は出来ませんが300mmロケット弾12発を搭載、45秒間で禅弾を発射できるとしています。CEP半数命中界は30mとされており、開発は2018年より続けられていたとのことですが今年七月に漸く完成しました。
■PCL-191多連装ロケット
中国の弾道ミサイルや巡航ミサイルが日本を射程に収めている事は自明ですが次はロケット弾が沖縄を射程に収めつつあります。
中国人民解放軍は新しく開発したPCL-191多連装ロケット砲の評価試験をインド国境付近において実施しました。PCL-191多連装ロケット砲は2019年にパレードにおいて行進し存在が明らかになった装備ですが、緊張が続く中印国境はヒマラヤ山脈に隣接しており、山間部において運用できる性能を誇示する事が、試験の目的と考える事が出来ましょう。
PCL-191多連装ロケット砲は射程500kmのロケット弾をも射撃可能な全般支援用ロケット砲で国境地域のインド軍施設を後方から攻撃可能、ロケットコンテナ2基を搭載可能であり、これらのコンテナは300mmロケット弾5発コンテナか370mmロケット弾4発、750mmの戦術弾道ミサイル搭載コンテナも搭載可能、対艦ミサイル搭載コンテナなども。
PCL-191多連装ロケット砲、車体部分は45tのWS2400重輸送車両を応用しており、これは中国の万山特殊車両が開発、弾道ミサイル等のTEL機動発射装置にも応用されている車輛です。この為に非常に重量が在り、高山部の中印国境地域に展開する事は難しいとも考えられていましたが、7月に初めてこの地域での運用能力を実証したこととなります。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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