北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【榛名備防録】ミッドウェー海戦,その敗北の一視点-必至である南雲艦隊連戦連勝持続の限界

2021-08-28 14:44:06 | 防衛・安全保障
■現代の”働き方改革”に繋がる
 南雲艦隊がミッドウェー海戦に勝っていればという"if"を散見するのですが、ここで大切な教訓を学び取らねば現代の日本にも同じ失敗を踏襲します。

 ミッドウェー海戦、1942年6月、太平洋戦争開戦半年にしてアメリカ海軍との空母決戦となり、日本海軍は主力空母の内4隻、赤城、加賀、蒼龍、飛龍を失いました。ただ、多くの方のお話しに、ミッドウェー海戦に負けていなければ、悲惨な敗戦を避けられたのではないか、という考えをお持ちの方が少なくないようでして、この点は違和感を受けます。

 真珠湾攻撃、日本海軍は赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴という主力空母のほぼ全てを投入し、ハワイを奇襲攻撃しています、ここでアメリカの戦艦部隊に大打撃を加えたのですが、その返す手で空母部隊はそのまま今度は印度洋作戦としてインド洋のイギリス海軍を追って攻撃に出ており、イギリス海軍はアフリカへ転進を強いられる事となりました。

 印度洋作戦ではイギリス空母ハーミズを捕捉撃沈し日本海軍は太平洋戦争最初の空母撃沈という戦果を挙げ、ラミリーズやウォースパイトなど主力戦艦はインドを脱出しインド洋からアフリカ方面の泊地へ退避に成功していますが、逃げ遅れた形で重巡洋艦コンヴォールとドーセットシャーを撃沈しています、日本空母部隊の戦果はここでも挙げられました。

 豪州ポートダーウィン空襲、インド洋のイギリス海軍を敗走させた空母部隊はさらに続いてオーストラリア大陸を攻撃し、オーストラリアにおける連合国拠点を空襲し駆逐艦などの艦艇を破壊、既にマレー沖海戦やスラバヤ沖海戦などで被害の大きかった東南アジアの連合国海軍部隊はここで徹底的に叩かれることとなりました。さて、ここまで半年以下だ。

 赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴、お気づきでしょうか、強力な空母部隊ですが交代も無く半年間使いまわされています、空母部隊は四月下旬に帰港するまで大規模な戦闘を続けていました。つまりミッドウェー海戦で敗北するまで休息があまり考えられていないのですね。仮にミッドウェー海戦に勝っていたとして、次まで勝ちは続いたのでしょうか。

 翔鶴、瑞鶴、ミッドウェー海戦に先立って空母二隻は珊瑚海海戦に投入されています。この海戦は米豪遮断作戦としてオーストラリアを孤立化させる作戦の一環として行われていますが、当初軽空母一隻が投入されるのみであったため、急遽に翔鶴、瑞鶴、二隻を増強する事となりましたが、ここで軽空母祥鳳が沈み翔鶴が大破しました。疲労は積っている。

 戦争をスポーツに喩えるのは不適切と承知の上で挙げると、オリンピックとワールドベースボールクラシックと日本シリーズを延々と連戦しているようなもので、交代とローテーションというものを考えずに続けているのですから、問題の根底はそのまま、ミッドウェー海戦に勝利してもアメリカがこれで降伏するとは考えにくく、戦争はまだ続くでしょう。

 士気が無ければ戦争はできませんが、士気だけでは戦争は続きません。実際、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、この四隻は負けるまで、大丈夫だろう、まだ行けるだろう、今やるしかない、という運用を強いられた構図があるように思えてなりません、ミッドウェーでもし日本が勝っていても、ローテーションを組まない限り疲労と緊張とストレスは着実に蓄積する。

 ミッドウェーはこうした背景があるのですが、同時に忘れてはならないのは現代社会の日本も、ローテーションと休息を考えて長期運用を組んでいるでしょうか、これは自衛隊の話ではなく民間企業や社会全般と学生スポーツも含めての視点です。この部分を理解できなければ、ミッドウェーの失敗は形を変え、社会は何度も踏襲し続けるのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アフガン崩壊,アメリカ失策二... | トップ | 自衛隊オスプレイ投入ならば... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

防衛・安全保障」カテゴリの最新記事