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自衛隊オスプレイ投入ならば成功か-アフガン邦人救出,空港テロと迫るカブール空港閉鎖

2021-08-28 20:00:52 | 国際・政治
■邦人1名救出,自衛隊一時撤収
 アフガニスタンでの邦人輸送による邦人救出はカブール市内の危険度上昇により全く進んでいません。

 陸上自衛隊のV-22可動翼機が作戦運用可能な水準まで達していれば、アフガニスタン邦人救出はもう少しまともに行えたのではないか、と考えてしまいます。なにしろアフガニスタン政府崩壊が予想以上に早く、日本が邦人輸送を立ち上げるにも先ずアフガニスタン国際空港の航空管制アメリカの中央軍が担っており、こことの調整から始めねばならない。

 江畑謙介氏がかつて“こうも使える自衛隊の装備”という著書を出されていまして、災害派遣や邦人救出に人道支援や環境問題まで、血税を投じて取得した装備品について、非常に考えさせられる視点を提示されていました。その視点は武器兵器云々ではなく、民を忘れた政治となってはならない、人命第一の原点にあります。これに照らせば今はどうか。

 C-130輸送機によるアフガニスタンからの邦人退避は進みません、27日日本時間夜に最初の邦人一名が自衛隊機によりパキスタンへ移動、26日には日本政府が指定した現地職員のアフガニスタン人十数名をパキスタンへ空輸したとしていますが、邦人救出として法人のアフガニスタン国外輸送支援対象者は500名、現時点ではまだ5%も出国できていません。

 自衛隊と外務省職員はカブール国際空港から昨日の内に撤収、現在はパキスタン国内に自衛隊機が待機しているとのこと。NATOではアメリカ軍撤収後も相当数の出国不能者が残るとされ、タリバーンとの間でタリバーンの空港進出後もNATOの活動延長を求めていますが、タリバーンが許可したものは常に出国できると応じられ、議論がかみ合いません。

 バイデン大統領はカブール国際空港自爆テロ事件の実行犯に処罰を加える、しかし米軍撤収期限は変わらない、としました。自爆しているのに実行犯をどうとらえるのか不思議に思いましたが、今朝無人機によりアフガニスタン国内での攻撃を実施、実行したISILの殲滅に成功したとのこと。いよいよ、邦人退避まで時間が無くなっている事を示している。

 アフガニスタンへ自衛隊が輸送機を発進させる頃にはカブール市内へタリバーン武装勢力が浸透を終えたころであり、とてもではないが空港まで邦人自身が市内を移動できるものではありませんでした、例えばイギリスがカンダハル近郊で孤立したSAS特殊部隊員救出へ砂漠の真ん中へC-130輸送機を発着させ救出したような無理を強いるならば別ですが。

 カブールの状況は時間と共に悪くなっている、カブール空港外縁部で発生したISILテロリストによる自爆テロが発生しましたが、この自爆テロの時点で国外脱出する邦人がバス二十台にて移動中であったともいい、引き返しました。自爆テロ死者は100名を超え、更なる治安悪化の可能性から今後カブール国際空港までの安全な移動の見通しは立っていません。

 V-22であれば、パキスタンからカブール国際空港以外のホテルや日本大使館まで直接展開する事が出来ました、なにしろV-22は航続距離が長い、24名しか乗る事は出来ませんが、ヘリコプターの様に大使館屋上まで展開する事も出来ますし、パキスタンのカラチから、いや例えばアラビア海からヘリコプター搭載護衛艦の艦上より運用しても往復が可能です。

 空港が使えないのは判り切っていました、するとヘリコプターしかない、が、航空自衛隊には1000kmの航続距離を誇るUH-60J救難ヘリコプターがありますが、カラチからカブールまで飛行するには4000m級の山間部を超えて飛行するのは仮に空中給油支援があっても簡単ではありません。V-22の取得費用は17機と関連機材併せ3600億円、高い器材だ。

 木更津駐屯地に陸上自衛隊輸送航空隊が創設されたのは2020年3月、機体も5月には搬入されています。配備数は若干数ですので、訓練も千葉県外への飛行訓練が開始されたのはまだ最近、機材もまだ海外派遣できる水準ではないのかもしれませんが投入をもう少し真剣に検討できなかったのでしょうか。もっとも、特殊機材過ぎると反論があるでしょうが。

 特殊機材、なにしろ政治主導で導入され、陸上自衛隊には日米合同演習により乗る機会はあったのでしょうが、本格的に導入する教育体系や整備補給体系の改編などは、既存枠組の延長で行うほかない状況、結果的に実用化に時間を要したのかもしれません。しかしすると、運用基盤構築の費用を事項要求として、政治はもう少し調達後を考えて欲しかった。

 政治はもう少し調達後を、こういうのはパワーリフト機は未知の器材であり、航空学校には教官さえいません、しかし、政治主導で導入したのですから木更津に配備せず、岩国の第1海兵航空団隷下でOJT方式にて運用を、それが沖縄の負担増大に繋がるというならば、ミラマー海兵航空基地へ派遣してでもOJT方式で運用基盤構築を急ぐべきだったと思う。

 V-22を取得する費用があれば、既に運用基盤のあるCH-47輸送ヘリコプターならば70機取得できたし、UH-60JA多用途ヘリコプターでは108機分、全国の方面隊に20機からなる方面航空隊ヘリコプター隊を完全に置換えられる数で、そしてC-2輸送機ならば2個飛行隊分です。実際、契約が成立するまでは既存機で不足する機体を揃えるべきと考えた。

 しかし、V-22が導入された背景にアルジェリアガスプラント邦人襲撃事件を受けての邦人救出が用途に挙げられ、確かに自衛隊の既存装備では航続距離も不充分、またV-22はF-35用エンジンを空輸可能であり特殊作戦群の空輸にも活用できるという視点を考えると、高すぎるが、他のヘリコプター予算が確保出来るならば、全く的外れでもない、と納得した。

 アフガニスタンでは、現状の通りです。500名の邦人と日本関係者がこの後無事に脱出できる見通しが在るならばよい、しかし、V-22が手元に在りながら、その任務に派遣できていないのは現実だ。こうした緊迫した、救いようのない危険な地域での邦人救出が任務で在った筈で、ほんとうに真剣に邦人保護という重大任務と自衛隊や外務省が向合っていたのかという厳しい視点を敢えて示したい。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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