◆護衛艦・哨戒機より第一に早期警戒管制機派遣を
P-3C哨戒機100機体制を断念して70機体制としていれば、30機分の取得費用でAV-8Bが40機ほど揃ったのかな、と思っているところですが。
ペルシャ湾船団護衛の可能性が少しづつ現実味を帯びてきました。核開発疑惑への査察拒否への経済制裁へ、反発するイランが提示したホルン図解教封鎖。ホルムズ海峡をイランが武力封鎖した状況に際して、日本は福島第一原発事故以降の原発停止によるエネルギー不足をペルシャ湾湾岸諸国からの石油と液化天然ガスに依存していますので、タンカーの護衛は必要な命題です。
ここで提示されたのが、タンカーの護衛艦による護衛、そしてP-3C哨戒機派遣によるイラン海軍の行動監視任務を行うという構想。現在、ソマリア沖海賊対処任務として護衛隊司令を指揮官に2隻の護衛艦、そして航空部隊として3機の哨戒機をジブチへ派遣し任務にあたっていますが、これに加えて派遣する、という構想になるのでしょう。
しかし、かつて100機あった対潜哨戒機、冷戦後船団護衛任務にあたる二個航空隊を防衛計画の大綱改定に伴う部隊縮減で廃止してしまいました。回転翼航空機は維持されているものの、P-3C,現在は80機が日本周辺海域の哨戒任務にあたっていますが、昔はこの高性能な機体が100機、二個航空隊20機のP-3Cが船団護衛任務用に残っていれば一個航空隊を丸々ジブチへ派遣、機動運用できたのに。
問題は法律面で船団護衛における攻撃の排除は個別的自衛権の行使という言い分は成り立つでしょうが、哨戒機による情報収集、そして船団護衛任務中に別の船団への攻撃が行われた場合、データリンクを結んでいる時点で集団的自衛権の行使に当たる可能性があり、派遣する以上は憲法九条の許容された自衛権の行使の範囲内で集団的自衛権と類似する任務を遂行できるという特別立法は不可欠でしょう。
それだけではなく実質的な危険、ソマリア沖海賊の武装は小銃と機関銃に携帯ロケット砲程度ですが、イラン海軍は少数でも水上戦闘艦や潜水艦を有し、ミサイル艇や地対艦ミサイルを保有、護衛艦は攻撃任務ならば瞬時に殲滅が可能ですが、攻撃を封じられた護衛となると難しい。
特に護衛艦は対地攻撃能力となるトマホーク巡航ミサイル等の装備を専守防衛の観点から許されなかったこともあり、反撃には艦砲として搭載している76mm単装砲か127mm単装砲のみ、発射速度や射程は大きいのですが、対地攻撃となると制約があるところ。もっとも、ここ十五年間に建造されている護衛艦はトマホークミサイルを搭載可能なMk41垂直発射装置を対潜対空誘導弾搭載用に有していますので、米国に緊急供与を打診するという提案はあるやもしれませんが。
ミサイル艇等の強襲に際してはSH-60K哨戒ヘリコプターによるヘルファイア空対艦ミサイルでの掃討、艦砲による対水上射撃での無力化が行われることとなりますが、文字通り撃沈か被弾かは判断が数秒、戦後初めて明確に戦闘を行う事態に至りますが、そもそも即座の対処として交戦規定を明確明瞭に示さなければ任務が遂行できない可能性があります。
立法措置までは時間を要しますが、そのために無理な任務を行うことは、貴重な艦とそれ以上に稀有な優秀な隊員を危険に曝すことになり、交戦規定がないままに派遣する、攻撃を受けた際に全力での反撃を行うことが出来ないような法整備のまま、身動きがとれないホルムズ海峡のミサイル脅威前に出す事だけは、絶対に在ってはなりません。
現実的選択ですが、情報収集での連携を行う、それもP-3Cのように脅威へ接近することなく戦域情報を収集できる手段として、E-767早期警戒管制機の派遣が検討されるべきと考えます。4機のみの虎の子ではあるのですが、APY-2レーダーの高空目標への索敵範囲は1000km、イラン軍のあらゆる脅威の射程外から任務が可能です。
これで護衛任務が完遂できないというならば、可能であればF-2支援戦闘機を同時に派遣し、上空警戒を行う、という選択肢があります。ASM-3空対艦ミサイルやAAM-4空対空ミサイル、この任務のために開発されたような戦闘機、仮にイラン空軍がF-14戦闘機を出してきたとしても、駆逐艦が出てきたとしても船団に近づく前に撃破されることになるでしょう。
KC-767空中給油輸送機と共に派遣できれば、完全というところ。最適なのは無人偵察機による哨戒です。仮にRQ-4でもあれば、36時間の哨戒飛行が可能ですので、ジブチ航空拠点から2機体制で哨戒任務が可能、100km以上先の水上目標も探知可能な広域偵察能力、大半の地対空ミサイル射程外である10000m以上を飛行します。東日本大震災でもそうでしたが、配備されていればどれだけ安全、そして人命を救えたか。
派遣任務は、特に現在の防衛計画の大綱では日本の防衛計画にアフリカと中東の二か所の沖合で重要な船団護衛任務を行うことは想定していませんでした。かなり厳しい任務となりますが、日本が存続するうえで必要な任務、建前を捨て政治が行うべき義務と自衛隊の能力を最大限発揮することが望まれます。日本が生き残るために。
北大路機関:はるな
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