◆中国艦隊は4隻、対馬海峡にはロシア艦隊が出現
防衛省によれば先週、南西諸島宮古島周辺に中国艦隊が、また対馬海峡にはロシア艦隊が展開し、護衛艦が警戒に当たったとのことです。
威風堂々と外洋へ進むヘリコプター搭載護衛艦くらま。満載排水量7200t、西海の護りを担う主力として、また海上自衛隊の一つの時代における象徴として、佐世保基地を母港に隷下第2護衛隊群護衛艦8隻を率いて防衛警備に当たっています。しかし、その抑止力に挑戦する勢力が昨今増長著しいのはご承知の通り。
南西諸島周辺を警戒中の第1護衛隊群護衛艦ひゅうが、が2月10日1700時頃、宮古島北東110kmの海域を太平洋から東シナ海へ向けて航行する中国艦隊を発見しました。艦隊は江凱II型ミサイルフリゲイト1隻、江衛-I型フリゲイト1隻、江衛-Ⅱ型フリゲイト2隻という編成で、2月3日に那覇航空基地より哨戒任務にあたっていた第五航空群のP-3C哨戒機が太平洋上に進出したのを確認した中国艦隊と同一とのこと。
ひゅうが、はこれを追尾しましたが、江凱II型ミサイルフリゲイトは、満載排水量4050t、艦隊防空型ミサイルフリゲイトでステルス設計を重視しているほか、射程50kmのHQ-16艦対空ミサイルとソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦用に開発された高出力のフレガートMAE-5三次元レーダーを搭載、その探知距離は400kmに達します。既に13隻が建造、はつゆき型と同程度の大きさですが侮れません。
江衛-I型フリゲイト、こちらは1990年代初頭に4隻が建造された2200t級フリゲイトで、個艦防空能力を備えた中国海軍初の近代的小型フリゲイトで、江衛-Ⅱ型フリゲイトはⅠ型にデータリンク能力を付与した近代化型、10隻が建造されています。大きさは、護衛艦あぶくま型よりも二回り小さいですが、航空機を搭載する近代的な一隻、着々と外洋進出を図っているところというべきでしょう。
南西諸島は、中国海軍の外洋進出において不可避の重要海域といえ、特に中国海軍は高官が公式の場において海洋支配、即ちシーレーンの維持という国際公益を損ない排他的な大洋の自国管理を掲げており、これは日本を含むほぼすべての国が営む海運への重大な脅威となりえるため、価値観は相容れません。海上自衛隊の任務についてその重要性が端的に示されるところです。
また、前後してロシア海軍の動きがありました。ロシア海軍艦隊の対馬海峡通峡、2月9日ですが、舞鶴基地より警戒中の第2護衛隊群所属護衛艦あまぎり、がロシア海軍のウダロイⅠ級駆逐艦、バクラザン級救難曳船、チリギン級補給艦からなる三隻の艦隊が北上するのを下対馬南西120km海域にて9日0900から1100時にかけて捕捉、艦隊はそのまま対馬海峡を通峡したとのこと。
あまぎり、が追尾したウダロイ級は8000t級の大型対潜駆逐艦で、編成から通常の訓練という範疇には含まれると考えますが、ロシア海軍は中国海軍の西太平洋地域での活性化に重大な関心を払っており、今後中国海軍の動向が現状のまま推移、もしくはさらに活性化する場合にはよりロシア海軍の行動にも影響を及ぼす可能性があります。
我が国としては、一つ一つの事案に対し継続的に対応することが望まれるのですが、避けがたいのは水上戦闘艦の不足です。アデン湾海賊対処任務に加えてイランのホルムズ海峡封鎖に際しては護衛艦派遣が検討されているとのこと、護衛艦は不足気味ではあるのですが、なんとか対応する方法の模索と共に、護衛隊群とは別の自衛艦隊直轄護衛隊の充実、可能ならば地方隊への多目的支援艦や哨戒艦、駆潜艇かミサイル艇などの配備と増強を望みたいです。
北大路機関:はるな
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