北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北朝鮮9.09核実験強行! 五度目の核実験と核兵器体系の戦力化、我が国への核恫喝危機

2016-09-10 21:30:48 | 国際・政治
■核恫喝へ我が国の選択肢
 北朝鮮の核実験について。現状を放置すれば我が国平和主義そのものの危機に繋がります、危機感を持たなければなりません。

 北朝鮮の五度目の核実験は、突如行われました。核実験の継続、核兵器国以外の侵攻核保有国の増大、これは核の世紀であった20世紀の良心、核不拡散体制の均衡が根本的に危機に曝されており、一方、国際社会はこれ以上の制裁を行おうにも、海上封鎖等、1962年のキューバミサイル危機に際して実施されたような施策以外、選択肢が残されていません。

 今回の核実験は核弾頭部分の爆発実験を行ったとの事で、将来的に弾道ミサイルを運搬手段として用いる核兵器体系の完成を企図したものと考えられます。ただ、難しいのは、如何に完成を宣言しようとも、核弾頭の弾道ミサイルへの搭載実験は、実際に発射し大気圏核実験を行わなければミサイルでの運用能力を世界に証明させることは難しいでしょう。そのミサイルですが、ノドンミサイルへの搭載を行う以上、射程から日本を目標としている事は確かです。

 次の脅威は、すると、弾道ミサイル実験の強化、そして可能性として完全に否定できないのは日本海乃至太平洋上における弾道ミサイルによる核実験の強行です。勿論、包括的核実験禁止条約に反する実験ですが、既に核拡散防止条約へ反し、核兵器国ではなく、ミサイル実験禁止安保理決議を無視している北朝鮮には国際公序では実験の阻止は出来ません。

 我が国としては、現実問題として選択肢は少なくなっています。第一に考えなければならないのは核攻撃に対する国民保護体制の確立です。今回の核実験は10kt威力でしたが、今後、例えば広島型原爆の15kt以上の威力程度に強化される事も念頭に、爆風や熱線から防護可能な地下施設や爆心地から500m以遠で倒壊を免れる施設を選定し指定すべきです。広島核攻撃に際しても爆心地付近の相生橋のように倒壊を免れた事例がありました。

 核攻撃警報をJアラートに明示し、弾道ミサイル飛来と同時に、緊急地震速報と同等の報道機関及び防災無線などによる緊急通知体制の確立等、可能な事は非常に多いのです。各攻撃警報への避難訓練は冷戦時代、欧州やアメリカ本土、ソ連や中国でも実施され、韓国では現在も退避訓練は実施されています。唯一の被爆国日本は準備を怠ってはなりません。

 クリントン政権時代、アメリカは北朝鮮核施設への限定空爆をかなり真剣に検討していました。ただ、実行すれば確実に朝鮮戦争休戦状態が戦闘再開へ転換するため、韓国の金詠三大統領が強硬に反対し、見送られたという歴史があります。あれから20年以上を経て、現段階となっては、核施設限定空爆という選択肢は逆に難しいものとなってしまいました。

 その上で我が国の選択肢についてですが、ミサイル防衛の強化、報復的抑止力の整備、防衛施設への核攻撃想定の強化、等が考えられるでしょう。ただ、どれも我が国防衛政策を根本から転換を強いるものであり、ミサイル防衛の強化は防衛予算の負担を大きく増大、報復的抑止力整備は憲法上の問題、防衛施設耐核強化も予算の負担を大きくするでしょう。

 ミサイル防衛の強化、現在海上自衛隊はイージス艦6隻と全国のペトリオットミサイル部隊へPAC-3により防衛を展開していますが、イージス艦の主任務は艦隊防空であり、6隻のイージス艦の内日本列島全域を防護するには日本海だけで2隻を遊弋させる必要があります、この為、長期的視野からは万全を期する場合、イージス艦の増勢は避けられません。

PAC-3について、迎撃率が高いことが実験で証明されていますが射程は15km程度と射程が限られ、大都市中央部へ常時展開しなければ対応が難しい他、どうしても射程の限界から付随被害が避けられず、PAC-3は改良により30kmまで射程を延伸可能ですが、THAAD、250kmという射程が大きな新迎撃ミサイルを導入する必要性可否を検討すべきでしょう。

 報復的抑止力の整備、従来は策源地攻撃として弾道ミサイル攻撃が継続的に我が国に実施される場合、緊急避難的に自衛権の範囲内においてそのミサイル発射施設を航空攻撃などにより撃破する選択肢が法的に可能、という、刑法上の緊急避難を援用した解釈はありましたが、しかし、軍事的には策源地攻撃により全ての脅威の事前排除は難しくなりました。

 策源地攻撃を行おうにも、どのミサイルへ核弾頭が搭載されているかは不明、最低で200基のノドンミサイルとその移動発射装置、潜水艦発射弾道弾、発射前に撃破するには、航空自衛隊のF-2支援戦闘機3個飛行隊とKC-767空中給油機4機では、時間がかかりすぎ、現実的に策源地が広すぎ、目標が多すぎ、現実的に報復的抑止力へ転換する他ありません。

 防衛施設への核攻撃想定の強化、掩体建設の強化やNBC防護能力の強化、地下退避施設など整備しなければなりません。これは冷戦時代であれば第一撃に核攻撃が行われるのではなく、通常兵器による攻撃から緒戦となり、限定戦争となる想定でしたが、北朝鮮は通常戦力による我が国攻撃が出来ない以上、第一撃に核攻撃が実施される可能性が高い為です。

 集団的自衛権行使についても、さらに前進し検討する必要が出てくる可能性があります。我が国の航空打撃力は限られていますが、同盟国米軍にはF-15E,F-16,海軍と海兵隊にはF/A-18C/EとAV-8Bが合計3000機近く運用されており、仮に我が国への攻撃が実施され、続く攻撃回避へ策源地攻撃等が実施される場合、制空戦闘等へ参加を迫られるでしょう。

 核攻撃警報態勢整備、報復的抑止力整備、防衛予算の増額、行き過ぎと思われるかもしれませんが、それ以上に最も懸念するものは、核恫喝が本格化し、例えば新興保守政党が核武装を政策提案し、国民の支持が集まる事です。我が国は民主主義国家であり、現政権の防衛政策が支持を失い、強硬論へ世論が傾けば、平和主義そのものの危機に繋がります、危機感を持たなければなりません。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十八年度九月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2016.09.10/11)

2016-09-09 22:53:29 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 自衛隊関連行事のお知らせの前に、北朝鮮核実験について。北朝鮮が本日五度目の核実験を実施しました。

 北朝鮮の核開発は新たな段階に入ったのかもしれません、北東部の実験場において本日0930時頃、M5.3の揺れを我が国気象庁が観測、波形は過去の核実験の際と似ているとして分析を進めた結果、核実験d根ある事が判明しました、そして本日午後に入り北朝鮮は核弾頭の実験に成功したと宣言しました、我が国は強く抗議、中国やアメリカ、韓国にロシアやフランスイギリス、オーストラリア首脳からも非難の声が相次ぎました。

 日米はじめ各国の呼びかけにより、日本時間明日未明にも国連安保理は緊急会合を開くこととなっています。北朝鮮の核実験は五回目、今年に入り相次ぐ弾道ミサイル実験、そして一月に行われた核実験に続く今回の核実験では、核兵器の小型化と弾道ミサイルへの搭載能力を誇示しようとの目論見があると推測されます10ktから12kt規模の核爆発が観測されているとのこと。

 核実験の情報を受け、航空自衛隊はT-4練習機による全国規模での放射線降下物情報収集を開始しました、現時点では放射性降下物は観測されていませんが、航空自衛隊のほか、全国の原子力規制長施設等でも監視体制が強化されています。この北朝鮮核実験に関する報道ついては順次最新情報を予備ブログ”第二北大路機関”へ掲載中、最新情報などはこちらも併せてご覧ください。

 今週末、自衛隊関連行事が目白押しです。このなかで、九州の西部方面総監部記念行事はパレードが物凄く、帯広の第5旅団は規模の割には来場者がそれほど多くなく穴場的な行事、三沢基地航空祭は航空自衛隊のF-2支援戦闘機とアメリカ第36戦闘航空団のF-16の飛行展示が名物で、少々足を運びにくい立地ではありますが注目の行事といえるでしょう。

 三沢基地は、F-2支援戦闘機を運用する第3航空団が隷下に第3飛行隊と第8飛行隊を展開させていましたが、第8飛行隊は中国の海洋進出へ対抗するべく九州の築城基地へこの夏移駐を完了しました、そして今年度中にF-35戦闘機が航空自衛隊へ配備され、最初の飛行隊が三沢へ編成されることとなっています。北部航空方面隊司令部やE-2C航空隊などが展開している基地でも、ある。

 西部方面隊創設61周年健軍駐屯地祭、記念式典と市街パレード等が実施され、特に健軍の市街パレードは、10式戦車からMLRS、AH-64DにSSM-1までが参加する日本最大の規模を誇ります。隷下に第4師団、第8師団、第15旅団、そして間もなく水陸機動団が新編され、年々強化される西部方面隊は、日々増大する中国からの軍事圧力と我が国への侵攻を実力で阻止するための無言の圧力として、鎮西、を掲げ任務に当たっています。

 第5旅団創設12周年帯広駐屯地祭、道東地区の防衛警備及び災害派遣に当たる旅団の創設記念行事です。冷戦時代は管区に北方領土を含み、ソ連軍の道東地区への侵攻へ厳しい訓練を以て備えた第5師団の今日の姿です。90式戦車を装備する戦車大隊、99式自走榴弾砲を揃えた特科隊、普通科連隊には96式装輪装甲車中隊を揃えています。ただ、現在道東は台風災害からの復旧中、鉄道は完全に不通で更なる豪雨災害も懸念されています、足を運ばれる方は最新の情報をご確認ください。

 笠取山分屯基地開庁60周年記念行事、第1警戒群のレーダーサイトです。三重県津市にありますが、笠取山山頂に置かれている分屯基地は交通難所で、今年はシャトルバスに関する情報がありません、近傍駅からはタクシーで一時間以上、徒歩では登山となりますのでほぼ不可能、お出かけの際は自動車で、ということなのですが、駐車場にも上限があるとのこと。

 さて、撮影に関する話題について。自衛隊行事を撮影する上で、撮影用非常パック、というものを当方は用意し撮影しています。内容品は新品の4GBのCFカード、予備バッテリー、簡易防滴カバー、レリーズ、というもの。万一の際に確実に撮影を継続するための最後の器材を密閉できるビニールに包み、カメラバックに常備しています。予備のCFカードや予備バッテリーとは別に、です。

 4GBのCFカード、これは実はいつもお世話になっている方が、いよいよ艦隊が揃って出港、という瞬間にCFカードがいっぱいになってしまって車まで予備のCFカードを取りに戻る、という場面に出合いまして、自分でもそういう万一の事態があるのではないか、また、周りで同様の事があった場合貸せるよう保持しておこう、というために用意しました。

 予備バッテリー、これは、現地に到着してからカメラにバッテリーが入っておらず自室で充電中のまま、という状況の方を少なからず見てきたためです。簡易防滴カバー、レリーズ、これだけあれば、常用しているものを忘れたとしても撮影は継続できる、というもの。充電だけで使う機会はありませんが、カメラバックに常備しておくと安心できますね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・9月10日:第5旅団創設12周年帯広駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/5d/
・9月11日:三沢基地航空祭2016…http://www.mod.go.jp/asdf/misawa/
・9月10日:笠取山分屯基地開庁60周年記念行事…http://www.mod.go.jp/asdf/kasatoriyama/
・9月11日:西部方面隊創設61周年健軍駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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南シナ海危機!中国不法占拠中のスカボロー礁に人工島建設の動き フィリピン政府が懸念

2016-09-08 23:25:03 | 国際・政治
■南シナ海危機が一段階深刻化
 南シナ海のスカボロー礁にて一色触発の状況が現在進行形で進行中です。中国がフィリピンより奪取した環礁付近で埋め立て工事による人工島建設を準備中、我が国も重要な関心を以て見守る状況です。

 南シナ海危機が一段階緊張へ。南シナ海スカボロー礁、1990年代に在比米軍の火山災害に伴う撤退を受け軍事的空白が出来た空隙を中国が不法占拠したもので、スカボロー礁での中国の行動がどのように展開するかにより日米の在沖米軍に関する外交問題へ影響を及ぼすとともに、スカボロー礁は東南アジア地域と我が国を結ぶ需要なシーレーンに在ります。加えて、アメリカとフィリピンは同盟国であり、同盟国の危機に対するアメリカの対応は、今後のアメリカの世界における影響力さえも左右する可能性があるでしょう。

 フィリピン国防当局は6日、1990年代より中国により不法占拠状態が続く南シナ海のスカボロー礁周辺海域において、中国のパージ船多数が遊弋している状況をフィリピン沿岸警備隊が確認したとして写真を公表しました。フィリピン沿岸警備隊は我が国海上保安庁をモデルとして新たに発足させた海上法執行機関で、我が国からの政府開発援助は軍事組織に対しては実施できない為、平和目的として巡視船などの供与を受けている組織です。

 中国が遂にスカボロー礁の人工島化へ着手した、フィリピン政府はこのように中国側を強く非難しました。対して中国政府は、中国がスカボロー礁の人工島化を進めている事実はない、としてフィリピン側の発表に対し不快感を示していますが、スカボロー礁近海には中国海軍艦艇が遊弋中であり、加えてパージ船6隻の周辺を中国海警局の公船4隻が随伴しており、フィリピン政府は、深い懸念材料だ、として警戒監視を続行中とのこと。

 南シナ海での中国による人工島建設はハーグ国際仲裁裁判所により、中国が主張する独自の南シナ海全域の領有を主張する所謂、九段線、という主張そのものが無効である、との勧告的意見を受けており、国際社会は、中国にこうした勧告的意見を受け入れる新世紀の大国としての相応しい振る舞いを期待したのですが、中国側の意見は全ての周辺国への軍事圧力を強化するという態度の硬化であり、我が国へも海軍艦艇による恫喝の強化や空軍戦闘機による九州沖縄での示威行動の激化という武力行使でした。

 今回フィリピン政府が発表した写真はラオスにおいて東南アジア諸国連合ASEAN首脳と中国の李克強首相による会談が開催される数時間前にフィリピンのロレンザーナ国防相が指示し公開されたもので、フィリピン政府が、この期間に急速に実施された人工島建設を実力で奪還し阻止する事が出来ない現状への非常な焦りを示唆しているものです。他方、フィリピン政府は写真公開前の4日にスカボロー礁における中国船舶の増加対し、駐マニラ中国大使に説明を求めていました。

 この問題は、フィリピンが米比相互防衛条約をアメリカとの間で締結している為、中国による人工島建設が、初めてアメリカの同盟国に対し実施されている事を意味します。非常に憂慮すべきもので、フィリピン軍の兵力では海上戦力など、元アメリカ沿岸警備隊の大型カッターを中古で取得したもの、第二次世界大戦中の駆逐艦、イギリス香港警備用コルベットを中古取得したもの、第二次世界大戦中の揚陸艦、アメリカ製陸軍用輸送艦、はっきり言えば日米のような現代海上戦闘を遂行する能力はありません。

 しかし、アメリカの同盟国であるフィリピンから不法に奪取した環礁へ人工島を建設し、更に既に西沙諸島等で中国が実施したような飛行場建設や長距離レーダー施設建設、地対空ミサイル及び地対艦ミサイル搬入を実施した場合、射程からフィリピン領パラワン島へ直接脅威が及ぶ懸念がありますし、アメリカ空軍はこの予防措置としてA-10攻撃機等をパラワン島へ展開させた事例があるほか、空母艦載機の訓練展開を実施しており、ここで不測の事態が派生する危惧も否定でき無いでしょう。

 フィリピン軍は現在、海空軍力の再編成に着手中です、具体的には建国以来の自国による防空制海能力といえるもので、新造フリゲイト二隻の導入、これは元々イタリア製フリゲイトの中古取得計画を拡大したものですが選定中です。また、韓国製ポハン級コルベットの中古取得構想等を提示したほか、昨年にはその実現性については兎も角として、我が国に対し、しらね型護衛艦、P-3C哨戒機、はやぶさ型ミサイル艇、おやしお型潜水艦の供与を要請しました。

 中国の今回の南シナ海スカボロー礁での人工島建設徴候は準備が整う前に次の段階へ展開してしまった事で複雑化してしまいましたが、更にフィリピンでは空軍は韓国製T/A-50軽攻撃練習機12機を取得し空軍の再建に当たると共に将来的にスウェーデン製JAS-39戦闘機を希望していると伝えられ、ヘリコプター各種50機の投入、中古M-113装甲車やFH-70榴弾砲の導入を模索しており、場合によっては、現時点でもフィリピンと中国との間での緊張が高まる可能性は否定できません。

 また、アメリカの同盟国に対する中国の具体的行動が行われた場合に、アメリカは動くのか動かないのか、アメリカを同盟億として視るべきか、という問題は、欧州NATO諸国とロシアとの関係、日米関係へも影響を及ぼす問題でああるのですが、アメリカと中国が直接軍事力で対峙するという行動は、非常に懸念すべき状況も現出させるものであり、アメリカの世界における国際公序は維持されるのか、19世紀のような軍事力を背景とした群雄割拠野生の王国時代に戻るのか、大袈裟ではありますが、懸念があります。

 ただ、ASEAN首脳会議にあわせ、フィリピンのドゥテルテ大統領とアメリカのオバマ大統領が首脳会談を行いこの問題に関する討議が期待されていましたが、米比間ではドゥテルテ大統領によるフィリピン国内での行き過ぎた麻薬組織取締りによる街頭射殺1000名という、懸念すべき問題での問題認識の共有が出来ておらず、ドゥテルテ大統領によるオバマ大統領への繰り返される侮辱と差別的発言により首脳会談の実施が事実上不可能であり、この重大な時局に際して、連携が取れない状況が続いています。我が国の周辺における問題、関心を以て見守りたいですね。

北大路機関:はるな くらま
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将来艦隊戦闘と巡航ミサイル【5】 潜水艦へ配備、日本本土への大規模攻撃を抑止する新しい一歩

2016-09-07 22:58:20 | 先端軍事テクノロジー
■トマホーク射程3000km
 射程3000kmのUGM-109E,UGM-109H、海上自衛隊は毎年1隻の潜水艦を建造しており潜水艦は22隻の潜水艦定数が防衛計画の大綱に必要な防衛力として明示されています、が、潜水艦の寿命は諸外国では概ね30年程度です。

 海上自衛隊は老朽化による船体構成鋼材の劣化等から潜水深度への影響、船体変形等による水中騒音増大等を念頭に比較的早い時期に潜水艦を御咳させています、が、潜水艦運用を護衛艦並に32年とすれば10隻の潜水艦の余剰が発生しますので、この10隻の潜水艦を魚雷の大半と対艦ミサイルの全てを降ろしてUGM-109E,UGM-109H巡航ミサイルを搭載させる。

 こうして、日本近海の防衛上有利な海域、近傍に護衛艦部隊や対潜航空部隊が展開し防護が可能な海域、一例として相模湾や遠州灘、周防灘や日向灘、若狭湾や富山湾、天草灘や五島列島近海、陸奥湾や噴火湾、などに潜行させ有事の際に第一撃で破壊されないよう遊弋させる、これは我が国防衛を我が国独自の抑止力を強める次の一歩となるでしょう。

 日本本土への着上陸事案に題しては着上陸地域の上陸橋頭堡に対する巡航ミサイル攻撃を、日本本土への大規模な巡航ミサイル攻撃が実施された際には更なる国土への攻撃と国民への被害を阻止するべく敵巡航ミサイル部隊基地へ射程3000kmの長射程を活かし反撃できる能力を誇示する事で、使わずとも済むよう抑止力を構成する、という運用を想定しました。

 3000kmの射程は小笠原諸島付近を航行している場合でも朝鮮半島全域を射程に収める事が出来ますし、天草灘周辺を遊弋させるならば仮に中国本土からの戦略爆撃機によるミサイル攻撃が実施された場合であっても、戦略爆撃機をかなり内陸部の基地まで追いやる事が可能で、本土への攻撃に対して重大な抑止力を構成できますし、日本を攻撃すれば潜水艦から確実に反撃されるとの姿勢を誇示する事で、相手に対しては攻撃一本である装備体系から、例えば可能性として相手に不確定要素を、と。

 不確定要素、日本の潜水艦が更に沿岸部まで進出し日本本土を狙う道に対する巡航ミサイル攻撃を実施するのではないか、との危惧を抱かせることで、攻撃一本の装備体系から、対潜戦闘という装備体系へも支出を強要し、これにより相対的に対日攻撃用の長距離打撃力を相殺するという施策も可能でしょう。巡航ミサイル潜水艦へ転用出来る潜水艦は、上記の通り、現在の建造度合いからは、これ以上の建造を行わないという範疇では10隻ではありますが、これだけでも大きい。

 各潜水艦に16発のUGM-109E,UGM-109Hを搭載する事で即応160発の巡航ミサイルを待機させることができ、日本へ向けられている長剣07巡航ミサイルの1500発には及びませんが、決意を示すことは可能です。また、こうした防衛力を整備する事で相手に対し巡航ミサイル戦力の相互削減という交渉の机に就かせる一つの圧力ともなりまして、例えば我が方が巡航ミサイルの半減を条件に相手に対しても同様のミサイル削減を強制する事が可能となるかもしれません。

 この種の削減を前提とした新装備に新規調達という一種矛盾した施策は、レーガン大統領時代のアメリカが中距離核戦力全廃条約を念頭に相手に揺さぶりを掛けるべく、全廃を主張している中距離核戦力に新型のパーシングⅡ弾道ミサイルを開発配備した事と共通するかもしれません、一見無駄に見えますが、その無駄により実戦に使用することなく我が国へ向けられるミサイル脅威を排除できるのですから、軍事力の第一の任務は戦争を抑止する事であるという基本理念にのっとったものといえるかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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ミグ25函館亡命事件から40年【前篇】北海道に突如着陸したソ連最新超音速戦闘機の衝撃

2016-09-06 21:03:32 | 北大路機関特別企画
■ミグ25函館亡命事件から40年
本日は、あのソ連ミグ25戦闘機亡命事件発生から40年となります。北海道に突如着陸したソ連最新超音速戦闘機の衝撃について、今回から少し振り返ってみましょう。

ミグ25函館亡命事件、大変な事件でした、最新鋭戦闘機が突如、日本の飛行場へ強行着陸したのです。ソ連軍のヴェクトルベレンコ中尉がアメリカへの亡命を期して我が国領空を侵犯、対領空侵犯措置任務へ緊急発進しました千歳基地のファントムを振り切って函館空港へ強行着陸を敢行、発生したものです。1976年9月6日、ヴェトナム戦争が一段落し、所謂緊張緩和の時期に当たるこの時点で、まさかソ連の最新鋭戦闘機が日本へ強行着陸を行うなど、想定はしていたとしてもまさか本当に発生するとは、という水準の事態であったことはいうまでもありません。

日本は文字通り一触即発の状態となりました、東西冷戦は欧州とアジア、中東と東南アジアがその最前線となり巨大な、それこそ今日では考えられないほどの緊張を以て対峙しており、その上で現在世界に配備されている核兵器を遙かに上回る戦略核兵器が、北極圏を挟み米ソのあいだより突きつけられていた時代です。核兵器は今日ほど特別な扱いではなく、第一線指揮官水準で戦術核兵器を使用できた時代もあり、これら戦術核兵器の偶発的な使用が、戦域核兵器の応酬につながり、果てはメガトン水爆、戦略核兵器数万発の応酬となる全面核戦争へ展開する危険性が真剣に憂慮されていた時代でした。

ソ連製最新戦闘機ミグ25、これは当時最新鋭、世界最速の迎撃機でマッハ3.2を叩き出す唯一の戦闘機でした。元々ソ連ではアメリカのVB70バルキリー超音速爆撃機計画に対抗するには迎撃機の速度を向上させる必要が大きく、このため運動性能や整備性など戦闘機として優先される様々な要件から特に速度を重視した戦闘機を一機種防空用に配備する必要を受け開発されたもので、現在は更に改良され、ミグ25の設計をもとに編隊間データリンク能力を重視しましたミグ31が配備されています。

我が国は勿論、アメリカはじめ自由主義諸国はこのソ連制裁新鋭戦闘機の情報へ非常な関心を持ちました、速度が世界一速いということは相手に対し攻勢に用いた場合、迎撃機が離陸するまでの時間を相手に与えないことを意味しますので、その性能や搭載機器の水準、機体構造から設計思想や製造技術まで一機実物が手元にあるということは非常に情報の宝庫を得たことを意味します。しかし、それはソ連側にとっても、この戦闘機が意図せず日本へ着陸した、ということは、自国の最先端軍事技術が漏洩する危機にある、ということも示すことはいうまでもありません。

東西冷戦下、相手側の最新鋭戦闘機が日本の空港に降り立った、世界に大きな緊張が走り、我が国へも米軍筋の確度の高い情報として、ソ連軍特殊部隊スペツナズが函館空港へ戦闘機の奪還へ展開するとの情報が寄せられ、異常な緊張に包まれました。日本へソ連軍が展開する、防衛出動を迫られる事態です。実際、ソ連からの国籍不明機による我が国防空識別圏への接近が異常増大するとともに、津軽海峡を通行せず遊弋するソ連艦船が常時確認されるようになり、情報を収集する限りスペツナズ新党の可能性は現実味を帯びてゆきます。

千歳基地は自衛隊創設以来初の戦闘空中哨戒、つまり常時複数の戦闘機を上空で旋回待機する警戒任務を実施、大湊基地と函館基地には駆潜艇が集結しました。津軽海峡では重要海峡であることから竜飛及び松前に警備所が置かれ、大湊地方隊と函館基地という拠点がありましたが、他の地方隊からも増援を受け、駆潜艇と掃海艇が常時警戒すると共に、日本海でも海上自衛隊は護衛艦を展開させ、特に現在の海上自衛隊と比べれば、ようやくヘリコプター搭載護衛艦はるな、ひえい、が就役したばかり、という規模ながら、万一に備える警戒監視体制を強化した訳でした。

函館駐屯地の第28普通科連隊も非常警戒態勢を採り、第11師団より夏祭り名目の装備品展示用に展開した第11戦車大隊の61式戦車と第11特科連隊第6中隊のL90高射機関砲が連隊長指揮下へ編入となり、白老弾薬庫から実弾が搬入、空港へソ連軍機が接近した場合にはL90高射機関砲が迎撃し、待機中の1個普通科中隊と61式戦車が空港に展開するソ連軍を制圧する態勢を執っていた、第9対戦車隊が竜飛岬へ進出するとともに第1戦車団も警戒態勢を執っていた、事件から年月が経つにつれてさまざまな当時の緊張の様子が伝わってきます。

函館空港という、日本本土へソ連軍特殊部隊が降下し破壊活動を実施する、これを日本国家が看過したならば、日本は主権を守れないのではなく守る意志さえない、ということを世界に示し、外交の主導権を筆頭にあらゆるものを失いこととなります。しかし、スペツナズは警察力では制圧できない、自衛隊以外に対応することなどかなわず、結果的に厳しい判断の上で、しかし独立国家として毅然と立ち向かうことが要求されたわけです。第28普通科連隊は、その緊張に立ち向かいました。そしてその上で、僥倖にしてソ連軍の奪還作戦は実行に移されませんでした。ミグ25はその後、日米共同調査というかたちで舞台を函館空港から航空自衛隊百里基地へ移送され、最初の緊張は幕を閉じました。

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北朝鮮ノドンミサイル奥尻島沖3発着弾!繰り返された弾道ミサイルEEZ内着弾と常態化の懸念

2016-09-05 22:00:52 | 防衛・安全保障
■北海道沖ミサイル着弾事案
 北朝鮮が日本時間正午すぎ、日本海に向け弾道ミサイル3発を発射しました。

 ミサイルは黄海沿岸の北道黄州から発射され朝鮮半島上空を飛翔、日本海の北海道沖、我が国排他的経済水域EEZ内に着弾しました。防衛省によれば航空自衛隊がミサイルの接近を確認したのは1213時で、そのまま北海道奥尻島西方沖200kmから250kmへ続けて着弾したとのこと。ミサイルの我が国排他的刑事水域内への着弾常態化が強く懸念される事案という新しい段階の脅威でしょう。

 弾道ミサイルの我が国排他的経済水域内への着弾は8月3日の秋田県沖への着弾以来、二回目のもので、今回も幸い着弾海域では操業中の漁船や貨物船など船舶への被害はりませんでした。しかし、着弾水域では落下破片が多数漂流している可能性があり、海上保安庁では巡視船や航空機を派遣し捜索すると共に、航行中の船舶へ注意情報を発令しています。ノドンミサイルの精度から考え、このEEZ内への着弾は意図的な事案である可能性が高い。

 これは国連安保理決議への明確な違反で、北朝鮮はミサイル開発及びその技術を用いての実験を過去のミサイル実験や核実験を契機として拘束力を持つ国連安保理決議により禁止されました。今回のミサイル発射はこの安保理決議に明確に反すると共に、ミサイル実験に伴う危険海域の通告をせず一方的に発射した、この事象への国際社会からの避難は免れません。

 ノドンミサイルが発射された、と韓国軍合同参謀本部は今回のミサイル発射について分析情報を発表しました。ノドンミサイルは北朝鮮が対日戦用に開発、改良と共に量産を継続している弾道ミサイルで、1993年に初めて日本海に向け実弾射撃を実施、その射程は1300km程度で首都圏や京阪神と中京地区等我が国人口密集地をその射程に収めています。

 意図について。北朝鮮が今回実施したミサイル演習の背景は不明です。北朝鮮が毎年強く反発する米韓合同軍事演習が実施されていましたが、この演習も今月2日までで終了しており、関連性は無さそうです。G20主要20か国首脳会議が中国の杭州にて開催中で、こちらへ軍事圧力をかける、若しくは今月9日の建国記念日へ国威発揚が目的かもしれません。

 自衛隊は現在、長期的な破壊措置命令が発令中であり我が国領域内の人口密集地へ落下の可能性がレーダー監視により判明した場合、イージス艦からのSM-3迎撃ミサイルや陸上に配備のペトリオットミサイルPAC-3により破壊措置を実施し、空中で爆破させ破片を周辺部に落とす事で人的被害を局限化する事となっていますが、今回は海上へ落下しました。

 THAAD,このアメリカ軍が開発した新型迎撃ミサイルが、更に朝鮮半島と、其処に隣接する米中間の問題を複雑化させています。THAADは、射程250kmの迎撃ミサイルで、ペトリオットミサイルPAC-3の30kmよりも射程が大きく、イージス艦のSM-3が有する1300kmの内側を防衛するミサイルですが、このTHAADの韓国へ近く前方配備されます。

 米中間が摩擦を起こす理由は、韓国へ前方展開されるTHAADのXバンドレーダーが北朝鮮の弾道ミサイルに加え、中国の日本を攻撃する中距離弾道ミサイルやアメリカ本土を狙うさらに内陸部の大陸間弾道弾の警戒監視に流用される可能性がある為で、事ある毎に中国は圧力を掛けており、今回の事案もこの問題をさらに複雑化させる事ともなるでしょう。

 最後に、もう一つの懸念は、明日、9月6日は1976年のMiG-25函館亡命事件から40年という節目の日にあたり、国際情勢は突如一転する、ということです。韓国の離島を突如北朝鮮が170発砲撃した2010年11月23日の延坪島砲撃事件、のような突発的な事態が、実のところ我が国に対し、北朝鮮がそれほど深刻に考えず実施する可能性も、皆無ではなく、この状況の常態化を防ぐ措置を模索せねばなりません。

北大路機関:はるな くらま
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自衛隊【災害派遣】 UH-1出動!北海道と岩手県における台風10号に伴う大雨に係る災害派遣

2016-09-04 22:19:00 | 防災・災害派遣
■台風10号豪雨自衛隊災害派遣
 我が国に相次ぎ上陸した三つ子の台風、その三つ目である台風被害、北海道と岩手県における台風10号に伴う大雨に係る災害派遣について。

 台風10号災害の復旧が完了しない中、現在台風12号が九州西方海域を北上中で明日にも九州北部へ上陸する見通しとなっています。こうした中、東北地方では台風10号による増水などで孤立した地域が広く存在しており、この中でも大規模な水害に見舞われました岩手県岩泉町では孤立地域の住民800名全員を陸上自衛隊のヘリコプター8機を集中し、安全地域へ退避させる地域避難を実施しました。更に岩手県久慈市でも、ヘリコプターによる孤立地域からの避難が計画されているとのことです。そこで、今回は台風10号災害への自衛隊災害派遣の概況を見てゆく事としましょう。

 東北地方太平洋岸に上陸した台風10号は東北地方および北日本に対し甚大な被害をもたらしました。この台風による豪雨災害により岩手県釜石市橋野町及び下閉伊郡岩泉町では河川氾濫による大規模浸水や土砂災害による道路崩壊を原因とする地域孤立など深刻な被害が発生、岩手県の達増拓也知事は、警察消防及び自治体の防災能力での対応能力が限界を超えているとして、8月30日1955時、陸上自衛隊岩手駐屯地の第9特科連隊長栁裕樹1佐に対し、孤立者の救助及び給水支援や道路啓開と人員及び物資輸送に関する災害派遣要請を出しました。

 自衛隊派遣規模は人員330名、車両80両、航空機16機、となっていまして、陸上自衛隊の派遣部隊は、岩手駐屯地より第9特科連隊、岩手駐屯地から第9高射特科大隊、霞目駐屯地より東北方面航空隊、八戸駐屯地から第9飛行隊、八戸駐屯地より第9施設大隊、神町駐屯地から第6飛行隊、青森駐屯地より第9化学防護隊、船岡駐屯地から第2施設団、木更津駐屯地より第1ヘリコプター団、自衛隊岩手地方協力本部。加えて海上自衛隊より第21航空群大湊航空分遣隊が派遣中です。その他自治体へのLOとして人員14名及びLO車両7両が派遣中です。

 任務の展開について。孤立者等救助および行方不明者捜索の実績が累計87名、更に孤立地域からの航空機等を用いました患者輸送が岩泉町において19名、土石流により通行非農となった地域への道路啓開が岩泉町及び久慈市と釜石市において実施され約20キロメートルを復旧しました。更に、安否確認活動を岩泉町230世帯に対し実施しており、通信状態が明かしている被災地域において安否不明者の安全を確認しました。現地では断水している事から給水支援が岩泉町と田野畑村において実施されており累計約20tを給水、道路途絶地域へ航空機等を用いた物資輸送が岩泉町にて水500L及び食料約2tが運び込まれました。

 北海道における台風10号に伴う大雨に係る災害派遣、北海道、元々降雨量がそれほどおおきくなく計画治水範囲もこれに準じて治水事業が実施されていた地域に対し、九州なみの記録的豪雨に見舞われ河川氾濫など大きな被害が出てしまいました。災害は北海道の十勝地方と上川地方に集中しています。十勝地方では8月31日0400時に高橋はるみ北海道知事名義で十勝振興局長より帯広陸上自衛隊第5旅団長正木幸夫陸将補へ孤立者の救助及び行方不明者捜索並びに給水支援と水防活動にて災害派遣要請が出されました。災害派遣部隊は北海道河西郡芽室町と上川郡清水町及び新得町ならびに広尾郡大樹町へ派遣されています。

 北海道上川地方では空知郡南富良野町においても大雨により道路が冠水、8月31日0415時高橋はるみ北海道知事名義にて上川振興局長より、上富良野駐屯地の陸上自衛隊第4特科群長岸良知樹1佐に対し、孤立者の救助と給水支援と給食支援及び物資輸送に関する災害派遣要請が出され、受理されました。災害派遣部隊は直ちに北海道空知郡南富良野町及び占冠村へ進出、任務に当たっています。十勝地方と上川地方への災害派遣は、人員130名、車両65両、航空機3機、偵察ボートとLO人員22名、LO車両10両という規模で展開されているとのこと。

 北部方面隊の災害派遣部隊は、札幌の北部方面総監部、帯広駐屯地より第5旅団司令部、帯広駐屯地の第4普通科連隊、鹿追駐屯地より第5戦車大隊、帯広駐屯地の第5後方支援隊、上富良野駐屯地より第4特科群、旭川駐屯地の第2飛行隊、丘珠駐屯地より北部方面航空隊、上富良野駐屯地の第3地対艦ミサイル連隊から派遣中とのこと。北海道での災害派遣規模について。孤立者等救助及び行方不明者捜索としまして158名を救助など、水防活動としまして人命救助の一環として実施された任務では土嚢500袋を設置し、給水支援では南富良野町と占冠村と新得町と清水町と大樹町において累計約330tを給水、給食支援では南富良野町290食、更に物資輸送食料では累計500食を輸送しました。

 今回岩手県の災害派遣において住民避難に用いられている航空機は陸上自衛隊のUH-1J多用途ヘリコプターで、2007年まで調達され130機が配備されました、陸上自衛隊では1962年からUH-1BやUH-1Hと併せ353機もの機数が導入された航空機で改良に改良が重ねられてきました航空機です、実際、信頼性が非常に高く、航空機を原因とする墜落事故が導入以来皆無というほどの乗員からの抜群の信頼を集めている航空機です。岩手県ではこのように地域避難を実施しましたが、現在、九州に接近している台風12号と共に南西諸島南方海域では台風となり得る熱帯低気圧が遊弋しており、早めの避難行動が求められるでしょう、生命を守るために。

北大路機関:はるな くらま
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陸上防衛作戦部隊論(第五八回):航空機動旅団、責任交戦範囲視点から見る装甲車両体系

2016-09-03 21:44:00 | 防衛・安全保障
■大規模戦闘の攻撃主力担う
 航空機動、これは日本本土防衛を軸とした必勝の戦略体系を構築する専守防衛の装備体系の緊急展開と大規模戦闘における攻撃の主力を担う極めて重要な要素です。

 航空機動作戦、新しい概念として空中機動と意図的に用語を区別したものとして提示しました。空中機動、軽歩兵部隊をヘリコプターにより一挙に展開させ、戦闘ヘリコプターの支援下航空打撃力を集中させ地域を制圧、目標攻撃後は空中機動力を生かし一挙に離脱するか、若しくは輸送ヘリコプターにより火砲や小型車両等を増強し、空挺部隊と同等の緊要地形確保に充てる、という。

 いわばヘリコプター主体の作戦運用基盤を構築するものがその基幹となっています。一方、航空機動という概念は航空機に移動支援を行わせることで軽装甲部隊の機動力を最大限高める事で、補給と後方連絡線維持を多用途ヘリコプターに、重装備の空輸支援や強襲任務へは輸送ヘリコプターの支援下で陸上部隊の進出と連携、火力支援並びに対装甲戦闘を戦闘ヘリコプターが実施する、というもの。

 基本的に軽装甲部隊が主力となり、空中機動部隊として過度に対戦車ヘリコプターや戦闘ヘリコプターの航空打撃力に依存する事を意図的に避ける必要があります。補完的に、即ち戦闘ヘリコプターが上空に直掩していなければ基本的な戦闘行動を行う事が出来ないようでは、そもそも土地を制圧し奪還する、という陸上戦闘部隊の定義さえ危ぶませるためです。

 軽装甲部隊、機動砲や装輪自走榴弾砲と一体化した混成部隊が航空部隊の支援を受ける事となります。これは、特科部隊が4000m以遠の遠距離戦闘を、戦車部隊が4000mから500mまでの近接戦闘における中距離域内を、普通科部隊が500m以内の責任交戦範囲において近接戦闘を展開する、という戦闘部隊の任務に対し、能力に応じた任務を付与する。

 軽装甲部隊が機甲部隊と比較した場合に充分装備を携行する事が出来ない状況を航空部隊が補完する、という位置づけです。ある種、機甲装備等を均等に装備する事は理想なのですが、即応性と打撃力の両立、統合機動防衛力を具現化するにはこうした選択肢しかないのではないか、という視座に基づきます。

 軽装備の部隊は地形障害を高い水準で克服する事が出きます。軽装備部隊では機甲脅威に対し充分な戦闘能力を持たないのではないか、何故ならば軽装甲部隊は責任交戦範囲として近接戦闘部隊の責任交戦範囲である500m以遠の目標を打撃する戦車に当たる装備が無く、砲兵攻撃に対し脆弱性の大きな対戦車ミサイルなど軽歩兵に対抗し得る一本の長槍を持たせ鋼鉄の槍衾へ叩きつける方法以外対抗手段を持たない点を指摘されるかもしれません。

 ですが、重装備部隊が通行できない峻険な地形、隘路への多種多様な接近経路を利用し迂回し後方の連絡線を叩く、戦車の入り込めない地形を利用し一挙に500m以内の近接戦闘距離まで肉薄する、軽歩兵部隊は軽装甲車両から下車戦闘を展開する事により独自の戦闘が展開可能です。これは装甲戦闘車のような砲手と車長を分担する車両では、下車展開する人員が局限され、選択できないものでしょう。

 その装甲車の概要について。軽装甲車両は、例えばフランスのVAB軽装甲車やMRAP耐爆車両等を一例に挙げますと、小銃班10名として操縦要員と車長を除く8名が下車戦闘を展開可能ですが、これを装甲戦闘車とした場合、操縦手、車長、機関砲手、が下車展開できませんし、下車展開が長期間に及ぶ場合、MAT手をもう一人残す必要が出てきます。

 すると下車戦闘班は半数近くまで縮小してしまい、しかも装甲戦闘車は独立した戦闘能力を持つのですが、その高い攻撃力と防御力は多くの弾薬と燃料、整備支援を要します。しかしその分、敵の戦車に対して限定的な、敵の装甲戦闘車について充分な対抗能力を有します。

 前述のとおり、軽歩兵部隊はあらゆる地形を踏破しますが、機甲部隊はこの限りではない、一方、機甲部隊を正面から防御するには重装備部隊が必要となる為、航空機動旅団はこの任務には正面から向かうものではなく、併せて提示しました装甲機動旅団がその任務に当たる、防御任務の要諦を担うという任務区分が考えられるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十八年度九月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2016.09.03/04)

2016-09-02 22:05:18 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 九月、台風シーズンが本格化となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか、それでは台風が心配ですが、今週末の自衛隊関連行事について。

 最初に、台風12号が接近中です。この台風は最新の気象予報によれば今週末に九州地方など西日本へ上陸する可能性が高く、このため厳重な警戒が必要です。その上で、今週末の自衛隊関連行事では九州での自衛隊関連行事が多く予定されており、台風の影響が及ぶ可能性があります、九州の行事は明日土曜日に多く、足を運ばれる際には当日最新の行事実施情報と交通情報、気象情報をご確認ください。

 第5施設団創設55周年小郡駐屯地創設63周年記念行事、保安隊独立第535施設大隊を中核として創設された歴史ある部隊で、第2施設群と第9施設群、第103施設器材隊及び第303水際障害中隊と第305ダンプ車両中隊を隷下に有する部隊です、西部方面隊隷下部隊ですが、地対艦ミサイル部隊の支援強化へ東部方面隊から第304坑道中隊の移管を受けています。西鉄小郡駅が最寄りで、福岡市内からも西鉄特急で快適に探訪できる。

 西部方面特科隊創設14周年、湯布院駐屯地創設60周年記念行事、湯布院、聞くだけで心温まる地名ですが、駐屯地に天然温泉が湧く陸上自衛隊有数の名湯が有名であるとともに九州最大の大砲の駐屯地です。西部方面特科隊は第302観測中隊、88式地対艦誘導弾を装備する第5地対艦ミサイル連隊、203mm自走榴弾砲を装備する第112特科大隊とMLRSを装備する第132特科大隊が置かれています。第5地対艦ミサイル連隊のみ、健軍に駐屯していますが、記念行事ではその雄姿を観閲行進で示してくれます。

 川内駐屯地創設31周年記念行事、第8施設大隊の駐屯地で、土曜日に市街パレードを行い日曜日に駐屯地祭を行います、第8師団は機動師団への改編を準備中で、師団なのに隷下に西部方面対舟艇対戦車隊を持つなど変則的な編成、特科部隊本土師団旅団撤退後も師団特科部隊を維持し、一方、第12普通科連隊を継続中の在沖米海兵隊研修を継続し水陸両用作戦能力付与、第42普通科連隊を機動戦闘車と96式装輪装甲車を保有する即応機動連隊へ改編予定となっています。

 標津分屯地創設59周年記念行事、第302沿岸監視隊が置かれている北海道の分屯屯地で、釧路駐屯地の分屯地という位置づけ、業務隊などの支援を受けています。陸上自衛隊で稀有な寒冷地手当と僻地手当が出る程の厳しい立地に在ります。第302沿岸監視隊は、北部方面情報隊隷下にありまして、根室海峡の警戒監視任務をもち、情報班と通信器材班及び羅臼派遣隊より編成されています、羅臼派遣隊はオホーツク海の警戒監視に当たります、どんな行事を行うのか興味が湧きますが、遠く、台風10号災害により根室本線が札幌と帯広の間で不通となっていますので足を運ばれる方はご注意ください。

 北部方面施設隊創設8周年、南恵庭駐屯地創設64周年記念行事、北海道の駐屯地で、北部方面施設隊と第73戦車連隊が駐屯しています。北部方面施設隊は2008年に第3施設団を縮小改編し創設された部隊ですが、北方防衛の強化と統合機動防衛力への北方への重装備の更なる集中を期して近く第3施設団へ拡大改編されることとなっており、第12施設群と第13施設隊に第105施設器材隊および第301坑道中隊と第302水際障害中隊と第303ダンプ車両中隊が隷下に在ります。第73戦車連隊は第7師団隷下の戦車連隊で、90式戦車5個中隊を隷下にもつ部隊、訓練展示では迫力の戦車戦が展開されました。

 八戸航空基地祭、海上自衛隊の八戸航空基地が実施します航空祭です。第2航空群の拠点でP-3C哨戒機を運用する第2航空隊が展開、オホーツク海及び北日本海の航空哨戒任務に当たる部隊です。第2航空修理隊と機動施設隊も展開しているほか、隣接して陸上自衛隊八戸駐屯地があり、東北方面特科隊第4地対艦ミサイル連隊や第9後方支援連隊に第5高射特科群と第9施設大隊及び第38普通科連隊一部中隊と東北方面航空隊第2対戦車ヘリコプター隊や第9飛行隊等が駐屯しています、P-3C迫力の機動飛行の他、装備品展示などにも期待が持てますね。

 さて、自衛隊関連行事の撮影についての備忘録を一つ。カメラバックに常備しておきたい隠れた逸品、超小型三脚というものがあります。本来はコンパクトデジタルカメラを支えるための器材なのですが、倒れないように、要するにカメラを固定するだけで、保持、転倒防止のために間接的にストラップなどにより落下防止措置を取っている、という意味ですが、その場合に限った運用で、非常に有用なものです。

 超小型三脚、それこそ札入れ並の小型金属のものがありますし、更にスマートフォン立てを兼用する超小型のプラスチックの物もあります、勿論、柔軟素材の三脚は一眼レフを載せれば柔軟に仕様通り変形してしまいますので、カメラバックに常備する選択肢には含められませんが、樹脂製や軽金属製の超小型三脚、コンパクトながら使い道が意外と多い。

 艦船の夜景撮影、これなどは絶対に三脚が必要なもので、最近のカメラはISO12800等高感度でも良好な写真が撮影可能ですが、夜景の長時間露光の響くような淡い光を撮影するには長時間露光撮影が必要です。超小型三脚では長さが足りませんのでブロックや欄干上に置く必要がありますが、あると無いでは写せる写真の幅が段違い、常備しておきたいものですね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・9月04日:標津分屯地創設59周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/5d/01_unit/butai/06_shibetu.html
・9月04日:北部方面施設隊創設8周年/南恵庭駐屯地創設64周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/7d/sta.html
・9月04日:八戸航空基地祭二〇一六…http://www.mod.go.jp/msdf/hatinohe/
・9月03日:第5施設団創設55周年/小郡駐屯地創設63周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/link/5ebhp/bugaihp1.html
・9月03日:西部方面特科隊創設14周年/湯布院駐屯地創設60周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/yufuin/
・9月03-04日:川内駐屯地創設31周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/8d/


■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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防災の日【関東大震災発災日】 南海トラフ連動地震等巨大災害へは禁忌無き議論と研究が必要

2016-09-01 23:44:12 | 防災・災害派遣
■巨大災害は必ず再来する
 本日は防災の日です、NHK報道によれば、この防災の日に合わせての全国で字視された防災訓練へは実に99万名もの参加規模となったとのこと。

 巨大災害は必ず再来する、関東大震災の命が紡いだ教訓を忘れないよう、防災の日は1923年9月1日の関東大震災発災の日を防災の日としたものです。関東大震災は、数十年周期で我が国の首都圏が震災や大火災と戦災により焼失している中でも大きな災厄であり、その後の我が国における国家政策への防災政策という新しい概念を盛り込む重要な歴史的事象であったともいえるでしょう。

 政府総合防災訓練としまして防災の日の本日、安倍総理大臣を本部長として南海トラフ巨大地震により西日本から東日本に掛けての広い範囲が地震と大津波に襲われたとの想定で実施、和歌山県南方沖にてマグニチュード9.1の巨大地震が発生し、西日本から東日本にかけ最大震度7、太平洋側を中心に大津波警報が発表されたという想定にて訓練が実施されました。

 大規模災害ですが、都市計画や交通基盤と公共施設という側面から防災計画を長期的に構築しなければ、どうしても個々人の防災には限界があります、津波被害から避難すれば人命のみ助かりますが防波堤を津波が乗り越えれば生活基盤をすべて失い、広域火災に対しては自治体の消防能力では限界があります、そして、この防災計画を蔑とすれば、国家基盤そのものを支える世論が大きな影響を受けてしまいます。

 防災の日として記憶される関東大震災ですが、耐震建築という概念が定着したのも、明治維新以降、西洋近代建築として大量に導入されていた赤レンガ建築物の耐震性が低い点が横浜や東京での震災被害により判明し、我が国は赤レンガ建築から大きく転換し鉄筋コンクリートと化粧煉瓦という建築様式や、木造建築における梁の構造へ影響を及ぼす事となりました。

 しかし、国家として震災対策を強靭に進めなければならない実情には、関東大震災は大きすぎる教訓をもたらせていまして、これは此れから発生する事が懸念される南海トラフ連動地震への対応などにも教訓とする部分が大きいことを指摘しておかねばなりません、それは震災不況の発生です。国家予算を遥かに超える被害と産業生産基盤の崩壊は影響が長期化しています。

 震災不況、これによる社会不安が政情不安を生み、結果的に日本の国家運営にさえも影響を及ぼした可能性がある為です。現実問題として、震災により不渡りが爆発的に増大し事業継続不能となった企業が大量倒産、大量の外債を発行しての復興事業は緊縮財政へ繋がり、四年後に昭和金融恐慌へと繋がってゆき、国内世論の強硬化へ繋がってゆきます。これが続く世論に押されての軍部主導の国家体制への変化の分水嶺となった、こうした見方も出来るでしょう。

 しかしながら、我が国が現在直面する巨大災害は、関東大震災規模の地震発生も当然警戒しなければならない一点に加え、2011年の東日本大震災を受け、あの東北地方太平洋沖地震が、貞観年間の地震発生規模と同規模でありながら、それまで千年に一回規模の地震発生というリスクを過小評価していたことで、想定外という言葉を使った反省から過去の巨大災害を再検討する機運が高まりました。巨大災害は必ず再来する、しかし、それは私たちの歴史が記録していない規模のものかもしれません。

 我が国の歴史を俯瞰しますと、684年に白鳳地震としまして南海トラフ連動地震が最大規模で発生していますし、869年貞観地震は東日本大震災と同規模の地震津波被害を引き起こしましたし、1586年の天正地震は西日本全域に深刻な被害を及ぼし中部日本の山間部において復興不能となるほどの被害を及ぼしました。1771年の八重山地震は標高85mの高さまで津波岩を押し上げ、今に警鐘を鳴らせています。

 火山災害は人類史を俯瞰すれば地中海のサントリーニカルデラが紀元前17世紀のミノア噴火によりかなり有力な文明を一撃で破壊した事例が考古学により証明されていますが、この際の巨大噴火である火山爆発指数7規模の噴火を引き起こす巨大火山は、阿蘇山や桜島姶良火山に鬼界カルデラや霧島加久藤カルデラ等、複数存在しており、いわば国家非常事態法制を真剣に検討しなければ対応不能となる災害も存在する訳です。

 無論、ここまでの規模の災害となりますと、退避計画や国家存続計画の立案などは水爆戦規模の非常事態を想定するものである為、現実味を喪失するものではありますが、想定外という単語を回避するには、様々な側面から、地学や地球物理などを検証し、図上演習水準であっても柔軟な対応策を執れるよう、準備は必要でしょう。これは一歩間違えれば単純な国家総動員計画にも転用され得ますが、その検討の価値は皆無ではありません。

北大路機関:はるな くらま
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