イキイキと生きる!

縄文小説家・森裕行のブログです。身近な縄文を楽しみ生き甲斐としています。「生き甲斐の心理学」の講師もしています!

縄文人の時空感覚と子抱土偶 (9/10 今ここと縄文時代)

2025-01-06 | 第八章「魂と聖霊」

縄文人の生活の場である環状集落や貝塚、ストーンサークルをいろいろ調べていると、縄文人の時間や空間認識の特殊性に気付いてくる。現実の普通の時は我々も縄文人にも等しく物理学でいう時間が流れ、空間も東西南北を中心に正確に位置決めができる。ただ、例えば時は決して体験上同じではなく(空間もそうだが)、ある瞬間に何か質的に異なる流れ方をするようだ。ギリシャ人はクロノスとカイロスとわけたが、私もそうかなと思う。

U先生から15年くらい昔に教えてもらって購入し、当時感動した「脳はいかにして<神>を見るか」(アンドリュー・ニューバーグ、ユージーン・ダギリ、ウィンズ・ローズ著 茂木健一郎監訳 PHP研究所 2003)を思い出して取り出した。この本は実に不思議な実験をもとに神秘体験を脳科学的に追っている。空間や時間の感覚がなくなるというようなことをどこかに書いてあったが、まだ再読していないので・・まあ、カイロスについていろいろ分析しているとおもうのだが、もう一度吟味せねばと思う。

さて、縄文人の生活の場をいろいろ考えていると、例えばストーンサークルは場所的に冬至や秋分といった二至二分に関わる景観が見事な地であったりする。また、祭儀に使われるような土器は四方に突起があったりするものも多い。カイロスは時空から離脱しているにもかかわらず、現実のクロノスの時空の中で不思議に特異点に執着する。このあたりの心理は現代人もパワースポットにこだわったりする人が多いが、今も昔もおなじかもしれない。特異な場所でカイロスに出会うというのだろうか。

東洋では、日本も江戸時代までそうだったが五行陰陽説というのだろうか。空間や時間にお同ように、例えば巳をあてたりする。現代人の感覚ではないが、意外にカイロスとクロノスの不思議を生活の中に取り込んでいるのかもしれない。五行陰陽説は古墳時代とかに持ち込まれたと一般には言われているが、日本では仏教導入で政治問題があったが、五行陰陽説という生活に非常に影響力のある方式を取り入れても、そんなことはなかったように思う。ということは縄文時代から同じような感覚が少なくともあったのではと推測してしまう。

先日AMORに「子抱き土偶を俯瞰して観る」という説文を寄稿した。こちら。縄文人の生活の場や、さらに出産などの特別な場で、子抱き土偶の時間はどのように流れたのだろうか。

9/10 今ここと縄文時代

WebマガジンAMOR「縄文時代のイキイキ生活」にも縄文や子抱土偶に関する関連記事があります是非ご覧ください。こちら

この記事は「生き甲斐の心理学」ーCULLカリタスカウンセリングの理論 ユースフルライフ研究所主宰 植村高雄著 監修2008年第3版 を参考にしています。

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  四ツ谷サンパウロさんへ 定価(1,500円+税)送料別。

  電話:03-3357-8642(書籍・視聴覚)

    住所:〒160-0004 東京都新宿区四谷1-2  

 なお、国会図書館、八王子市図書館でも閲覧できます。

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       森裕行

 


縄文人の個性の美 (8/10 今ここと縄文時代)

2024-12-30 | 第十章「今ここでの恩寵」

この頃「生き甲斐の心理学」の師匠であるU先生の影響か、個性の美についてよく考える。

人生を左右するようなその人の傾向と渇望、人生の方向性は意外に人生のスタート地点の0歳から2歳ごろ(少年少女時代もあるだろうが)に決まってくるのではという学説がある。記憶も定かでないころ。私は一年羽田飛行場の近くに住んでいた。まあ多摩川の河口の近くといえば言える。ただ、物心ついてからは四ツ谷坂町で就職してすぐのころまでそこに住んでいたので、四ツ谷生まれという自己イメージを持っていたが、その後の人生を振り返ってみると、多摩川の支流の大栗川下流域に20年近く、さらに中流域に20年近くとサケのように?しかもゆっくり遡っている。これは、私の源流を求めるような無意識の仕業ではあるまいか。笑ってしまうが、歴史の興味も飛鳥時代から始まり、今は縄文時代・旧石器。将来は20-30万年前のアフリカ(ホモサピエンスの原点)なのだろうか。そんな風に、自分の不思議な傾向と渇望を妄想してしまう。

ところで、個性とは何だろうか。こうした生育史的な要素もあるだろうが、身体的な要素、あるいは時代や空間を越えた生命体のもつ普遍的要素も想定したほうが良いかもしれない(魂?)。そして、統合されたほとばしるようものが個性なのだと思う。さらに思索すると、その個性は本来的には真善美にかなうのではあるまいか。

さて、人の原型の不思議さもあるが、文化にも原型があるように思う。このところ気になっているのは縄文文化の原型。

船橋の飛ノ台史跡公園博物館に12月28日に行ってきた。多摩から都心を通って車で行ったが年末であったが交通渋滞もなく快適だった。そしてそこでの縄文の原型探しの体験はとても刺激的だった。今話題の国史跡・取掛西遺跡や土偶については1月初旬のAMOR誌で触れるので、今回は同じ早期だが時代的には何千年か下がった8000年前頃の飛ノ台史跡公園博物館の庭園に保存されている貝塚から出土した男女の人骨。縄文早期の男女の合葬と考えられている。成年男子とまだ成年に達していないと思われる女性の合葬である。貝塚に埋葬されるということは、我々の感覚からすると、何かゴミ捨て場のようなイメージを持つかもしれないが、私は魂の送り場だと考えている。つまり神聖な場所であり、葬られた二人は村の長老とか祈祷師といった人の祈りとともに手厚く葬られたのだろう。

その男女の名前も関係も当然伝わっていない。そして生前の二人の間にあっただろう物語。そしてそれを送る人々(長老や祈祷師)の物語も当然ながら伝わっていない。しかし、私たちが生をいただいた祖先につながる人々であり、分からないながら手を合わせたくなる。この二人は当然ながら二人が意識しなくても、あるいは周りの人が意識しなくても各々生まれながらの傾向と渇望を持ち、個性を持って生き、きっとその個性の美ゆえに手厚く葬られたのだろう。今回は残念ながら詳細な推定年齢や遺伝子情報からくる関係性、さらにどのような食生活を送ったかなどがわからない。また、村の長老や祈祷師が60歳台だったのかなども。それがより分かれば、縄文時代の個性の美といったものがより浮かび小説も紡げる。

飛ノ台史跡公園博物館は、これだけでなくもっと多様な命の記録を残し(素晴らしい土器をはじめとする遺物など)、それに触れることで縄文時代の個性の美を垣間見せてくれるように思う。

8/10 今ここと縄文時代

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この記事は「生き甲斐の心理学」ーCULLカリタスカウンセリングの理論 ユースフルライフ研究所主宰 植村高雄著 監修2008年第3版 を参考にしています。

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イノシシが見えると言うこと・・・人格形成論を巡って。(7/10 今ここと縄文時代)

2024-12-05 | 第一章「意識と知覚」

もう10年以上前だが、多摩動物公園のパスポートを購入して、しばしば動物を見に行った時期がある。まだ、縄文時代に開眼しておらず(笑)、U先生の比較宗教学や文化人類学をベースにした臨床心理学の研究の一環であった。写真のイノシシはさほど慎重に見なかったが、今のように縄文時代に興味があれば一日見学していたかもしれない。当時はシマウマの観察だった。大きなストレスがあるようでいつも飼育舎の前で怒り蹴ったりして暴れていた、その後仔馬が生まれて安堵したこともあった。動物のこころの成長は専門知識がなくて詳細は分からないが、ロジャースの人格形成論(19の命題)の半分以上は行動を見ていると当てはまるようだ。先のシマウマの異常行動/愛の孤独?も当のシマウマにとっては何らか意味があることはあきらかではあるが、それが何かは近しい関係(動物園の掲示を考えると嫉妬?)でないと、あるいは徹底した自己分析が背景になければわからないように思う。それは人間であっても同じだ。

さて、そんなことを思い出しているのは、どうも最近の縄文時代の研究の中で、自分のバックグラウンドからくるものの見方について、あらためて意識しなければならないと感じているからである。ある造形を見てこれは何かと分からず疑問に思ったりする。それが、ある日これはイノシシだという研究者が現れる。見立ての仕方に従うと確かにイノシシに見える。しかしその図像解釈がイノシシで正しいかは、時代的な変遷(編年)や他の文化との関係、環境などの客観的研究が必要である。空似ということもご存じのとおりあるからだ。そのプロセスを取らずとんでもないことを言うことは自由かもしれないが、しかるべき反論に対応しなければならない。

イノシシに見える。19の命題のような現象学的な知見に向き合うことを放棄することは、アンデルセンの裸の王様のような話に繋がる。

ところで、私が高校3年生の時、日本史のK先生の講義で天皇が神になった時代は持統天皇・天武天皇の時代と第二次世界大戦の時代と学んだことがあった。その言葉は比較宗教学や文化人類学もベースにした臨床心理学をU先生から学びながら、持統天皇の論文を書いている時に思い出した。本人(持統天皇)の意図を抜きにしてもそういう現象が当時あったことは事実だった。その論文は4年前に完成したが何か私が想像していたのと異なる反響もあるようで、まだはっきり分からないが縄文の研究にも寄与できる内容なのかもしれないと思い、これから春の某研究会にむかって思索してみたいと考えている。

U先生の心理学を学ぶ前は、例えば博物館で鑑賞する場合。絵画なら絵画の側の説明版を見て、それからおもむろに絵を眺めたりする。そして良かったか悪かったかの印象は意外に希薄だったりした。しかしU先生は、まずは感情を大事にして見るように勧められた。見ることで湧きおこる感情を大事にする。好きか嫌いか、怖いか怖くないか・・など原初感情を確かめたりも。こうした感情は非常に個人的かもしれない。しかし、味わい深くいろいろな気づきを与える。40億年の生命の歴史からなる喜怒哀楽の現れはある意味知性より優れているのではないだろうか。こうした現場で湧きおこる感情を大事ににする態度は、ロジャースの19の命題のように現象学の影響を受けた人格形成理論と相性が良い。そして、それは文化の違いや時間の違いを超えて、様々な人の理解に役立つように思う。さらに、発達心理学で教育分野では特に有名なエリクソンは、たたき上げの心理学者で天才的な8段階の人格形成論を表している。この二つの理論の組み合わせをベースにフロイトやユングや喜怒哀楽の理論などを組み合わせたブラウンやU先生の理論は、持統天皇の研究だけでなく、縄文時代の中でも比較的よく分析が進んでいる縄文中期前半の富士眉月弧文化圏の研究にも、役立つのではないだろうか。子抱き土偶がその一例のように思う。

昨年の終わりごろだったか、山梨県県立博物館で展示会があり、顔面把手付き土器などが一同に集められで一望できる素晴らしい機会であり、車にのって2回見学に行った。夥しい5000年前の中部高地から西南関東の土器や土偶に現れる図像。それは明らかに個人や集団のある意図のもとに作られたものである。・・・よく見ると、それは誕生土器や土偶に関連する成人・妊娠・出産というライフイベントと関係するものが多いことに気づいたのだ。そして、今子抱き土偶の研究、ほんのとっかかりの成果を前にしている。

有難いことに遺伝子科学の進展で今の人間も縄文時代の人間も、あるいは地域的にユーラシア大陸の西でも東でも人は皆同質で、同じ土俵で分析・理解できると考える。特に縄文中期の中部高地や多摩(富士眉月弧文化圏)の縄文人の情報は出産土器や土偶など豊富で、心理学的にも迫っていけるのではないだろうか。

7/10 今ここと縄文時代

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イノシシを追って! 旧武蔵野郷土館・中原遺跡の土器と愛の原型・・・(6/10 今ここと縄文時代)

2024-10-27 | 第九章「愛」

少し前の10月25日に江戸東京たてもの館の展示を見に行った。目的は珍しく一つ。八王子市犬目の中原遺跡の土器の見学でした。残念なことに優品の土器二つの内一つしか展示されてなかったものの、四把手のキャリパー型土器(おそらく蒸し器)をじっくり味わうことができた。

このところ縄文中期の祖先たちがどのような食事をしていたのかに興味をもち、特に祝宴のご馳走をどのように作り共食していたかにうつつを抜かしていた。土器は煮炊きや蒸かし器などとして利用されたようだが、どのような材料を調理していたかが大きな関心事だった。中原遺跡の顔面把手深鉢や蛇体文土器、さらに同時期に非常に近しい関係にあった子抱き土偶で有名な、川口川対岸の宮田遺跡もイノシシに縁が深い集落のようで、旧武蔵野郷土館のイベントを知って猪突猛進で見学に来てしまった。

展示は正面ではなく横からの位置の展示で、猪の顔がよく分からないが、縄文土器大観(小林達雄編集 小川忠博撮影 小学館 1988)には展開写真もついているが、正面が写っていて、イノシシの顔が大きく窺える。横はウリボウ(イノシシの子供)の造形なのだろう。そんな訳で、この土器はイノシシの肉そのものや加工したハンバーグ状のイノシシを蒸かし共食したのではと、自然に想像してしまう。当時の料理の調味料は藻塩やハチミツ、香料(山椒など)なども使用し、かなり美味しい五感を楽しませるものであったはずだ。

さて、U先生から「生き甲斐の心理学」を20年以上学んでいることもあり、その心理的意味を思わず考えてしまう。祝宴には例えば100人とかの村人全員が集合するのだろうが、当然ながら多くの子供たちも招かれ(イノシシもウリボウを大切にするが)、おいしい食事を味わい貴重な愛の原型(他者から愛される経験で、その経験から愛され愛すという人にとって大切な行為の基盤となる)が形成されるのではと想像してしまう。かつて、私たちが「もういくつ寝るとお正月」と心待ちにし、各自の成長を祝い、共食し、見神欲も満足していたようにお正月やお盆は、愛の原型形成の大事な時であった。それは、この物質文明の中でも引き継がれ心理学を学校で勉強しなくても、伝統を通じて自然に学んでいっているようである。

このイノシシの顔(もちろん、その背後には当時の信仰の対象としての神等のイメージも重なっているように思うが)の土器は、煮炊きだと土器特有の匂いがついてしまうところを、蒸し器として、解放し調理を芸術的にも高めたのだろう。厳しい環境の中で生き抜かなければならない(今もそうだが)縄文人にとって、大きな意味があったと考えても良いのだろう。

縄文土器大観2(小林達雄編集 小川忠博撮影 小学館 1988)

巻頭の写真を含め、カラー写真は江戸東京たてものの園 「武蔵野の歴史と民族~「武蔵野郷土館」がのこしたモノたち」で筆者撮影。

 

6/10 今ここと縄文時代

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ストレスの解放と縄文土器のものがたり (5/10 今ここと縄文時代)

2024-10-11 | 第三章「無意識の世界」

暑い夏から秋が何となく終わって急に寒くなったっこのごろ。季節の変わり目は体調を崩しやすいので注意していたものの、この数日体調がが今一つだった。

そんな時にU先生の比較宗教学や比較文化の影響を受けた生き甲斐の心理学のテキストを読み直していたら、体調を崩していたのはひょっとしたら心因性の問題も絡んでいたかと気づいた。年をとってから時間に追われるような生活を、年よりのひやみずでしていたこともあったのだろう。不安が怒りに、怒りが身体症状に・・・(このあとほっていくと身体症状がウツ、さらに錯乱と進む)亢進していったのかもしれない。

そうした時、生き甲斐の心理学では幼いころのウツの原型(体験)を思い出すことを勧められる。ある状況に陥ると変になっていく自分の傾向を知ることは大切だ。そうした傾向を知っていると、自分の環境を変えたり、無駄な心配から自己否定的になることを押さえることに気づく。また、生き甲斐の心理学を深めて行けば、その幼いころの解釈の問題に気づき、ウツが幸福感と隣り合わせであることを発見したり、愛の原型の理解を深めたりする。それは自分オリジナルの物語となって逆境のときに役に立ち、勇気と希望を与えてくれたりする。

さて、話は全く変わるが、縄文土器。特に中部高地から関東南西部に広がった約5000年前の井戸尻・勝坂期の縄文時代の芸術的にも評価の高い土器について考える。流れるような口縁部の装飾が4単位であったり、非対称の造形であったりするが、これは何を表現しようとしているのかと頭を抱えていた。この縄文中期中葉の時代にはメソポタミアやエジプトで文字文化が始まっていたが、縄文時代のそのころは文字を使っていなかったようだ。しかし、集団としての知恵や集団のアイデンティティなどは物語として語られ、口頭で伝授されていたに違いなかった。それは、時間とともに変化する土器や土偶の文様など物理的な遺物からも推察できるようであり、最終的には8世紀のころの古事記等の時代に統合され記述された神話などに結実化されている。しかし、その片鱗は縄文時代の例えば5000年前時代の遺物などにも残されているのでは。

 町田市忠生遺跡 特別展「縄文2021」にて2021年10月著者撮影) 

それは、土器等の文様として残されていたのではないだろうか。民族学でオーストラリア・アボリジニに詳しい故・小山修三氏は、アボリジニの七人姉妹の物語(最終的に昴のななつ星、プレアデス星団やオリオン座に昇華される)が現代にどのように語られながら、木の枝などで地面や木の葉に描かれる様を「狩人の大地」(雄山閣 1992)に解説されているが、まさに縄文時代の土器等の文様も同じように当時の独自の物語から生まれたように考えられていいのではないだろうか。

拙い私の物語も縄文時代の土器に描かれた物語も客観的にはよくわからないが、どこかで心を打つのは物語の背後にある人間観ではないだろうか。人には愛そのものの永遠性がある。そんな確信が救いをもたらすのではないだろうか。

5/10 今ここと縄文時代

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