物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

『武谷三男の生涯』1

2024-08-30 13:37:56 | 物理学
先日からNさんの書いた『武谷三男の生涯』という伝記の原稿を読んでいるが、昨夜第一回の読みは終わった。

少なくとも2回は読んでおきたいと思っている。書かれた内容に不満な気持ちがあると昨日書いたが、どうしてどうしてよく書けているとの判断に変わった。

これは武谷三男みたいな人は現在まったくいないからであり、彼のことをできるだけ多くの人に知ってもらいたいという気持ちで一杯である。

そういう意味でとても余人をもっては代えがたい人であったと思う。

いくらかの学問上のミスはあったかもしれないが、大局的には大きな寄与をした方であり、こんな人はいまの日本にはまったくいないからである。

彼は若いときに湯川秀樹の中間子の理論の発展に協力した人としてしか記憶されていないかもしれないが、単なる物理学者の枠にははまらない。

彼はどこからも賞をもらわなかったが、そういうところが彼らしいかもしれない。日本だけでなく、世界の人々に大きな寄与をした人だと思う。

そのことをNさんの『武谷三男の生涯』は世間の人に改めて知らしめることになるのだろうか。武谷が亡くなってはや四半世紀が経つが、彼の生涯がNさんによって近いうちに世に出版物として示されることになるだろう。


昨日も原稿を読んだ

2024-08-29 12:49:33 | 物理学
昨日も原稿を読んだ。Nさんの『武谷三男の生涯』である。Nさんは故武谷三男邸を訪ねて武谷の残した文書等についてレポートをしたことのある、科学史研究家でもある。

なかなか詳しい説明がある書の原稿であり、すべてに通じているわけではないが、たぶんこの書を越える谷三男の伝記はでて来ないだろう。

だが、それにもかかわらず不満がないわけではない。それは武谷の業績の評価がある意味では不足していると思うからである。

その点をNさんにこのことをメールで尋ねたら、自分以外の人にそのことはしてもらいたいというようなお考えらしい。なんでも人一人のすることには限界があるし、観点もちがうからしかたがないのであろう。

本書の本文は207ページである。それ以外に注が40ページくらいある。私の一度目の読みはいま157ページまで来ている。本文だけでもまだ50ページほど残っている。


他の仕事ができない

2024-08-27 14:22:34 | 物理学
Nさんの『武谷三男の生涯』の原稿を読み出したら、他の仕事はまったくしなくなった。これはいいことなのか、悪いことなのか。わからない。

普通はラジオを聞いたり、ラジオ体操をしたりしているのだが、そのことを忘れてしまった。

9月になれば、「数学・物理通信」の投稿があろう。それで『生涯』の閲読に精を出しているということもある。

台風はやって来ているのだが、まだその影響が松山に及ぶには数日かかりそうだ。


エントロピー

2024-08-22 13:51:13 | 物理学
微小エントロピーdSを微小熱量d'Qに積分因子1/Tをかけて
  dS=d'Q/T
で定義すれば、こうして定義されたエントロピー状態量となるとどの熱力学の本にも書いてある。

数学の式として不完全微分であったものが積分因子をかけて完全微分になるという例があるのは知っているのだが、もう一つピンとこない。そこのところを多くの熱力学の本にどう書かれているのだろうかという疑問を持っている。

もう一つのよく知られたことは内部エネルギーUは状態量であるので、dUと完全微分で書かれるが、これは熱の不完全微分d'Qと仕事の不完全微分のd'Wの和である。

 dU=d'Q+d'W

となるという疑問もあるが、こちらの方はまだよくわかったわけではないが、ムーアの『物理化学』上(東京化学同人)の「熱の力学的定義」という節だったかに説明があってそれを読んで納得したという記憶がある。

いま急遽ムーアの『物理化学』上を書棚に探したのだが、見当たらなかった。しかし、こちらはすでに解決済みであると思っていい。

だが、もう一つのほうはまだdS=d'Q/Tの方はそのことについてはっきりと書かれた文献を知らない。そのうちにどこかできちんと書いてある文献に出会うことだろうか。

これはこのブログでも書いたことがあると思うが、温度Tは相転移があるときには変わらないのでエントロピーの導入の理由はそういうことのためにもあるということだ。

算数といわれる初等数学においても遠山啓さんらが提唱した量の理論では示量変数といわれる量は外延量と呼ばれており、示強変数は内包量と呼ばれている。

私はこういう名前の量のことを知ったのは多分40歳代であった。熱力学は大学で単位はとったのだが、そういう示量変数とか示強変数とかの名も聞いたのかもしれないが、覚えていなかった。


理論物理学者と計算物理学者

2024-06-29 15:50:12 | 物理学
理論物理学者と計算物理学者とはどういう意味の違いがあるのか。

昔は実験をしない物理学者を理論物理学者と呼ぶことが多かった。ところが私が学生のころに大学を退職した理論物理学者の三村剛昂先生がおられた。

彼は理論物理学と数理物理学とを峻別された。数式を使って計算するが、哲学のないような物理学のことを彼は数理物理学と呼んだのであった。その後
コンピュータが進歩してきてもっぱら計算に頼って物理学の研究をする者を計算物理学者と呼ぶようになった。

最近では国際的な計算物理学会まで開催されるようになってきているので、あまり計算物理学者と称しても肩身が狭いことはない。

それにしてもトップのレベルには理論物理学者がおり、そのすぐ下に数理物理学者がおり、そのはるか下に計算物理学者がいるという構造になっている。

もっとも私などはその最下位の範疇の計算物理学者にも入れていたのかどうかは定かでない。



計算嫌いな計算物理学者

2024-06-29 15:31:11 | 物理学
計算嫌いな計算物理学者がいるものかどうか。

私は自称では元計算物理学者だが、計算嫌いである。それでも鋭い直観とかをもっていれば、生きていく方法はあろうが、そういう才もない。要するに何の取り得もない。

ただわからないところを納得したいという欲求だけはもっている。それも普通の人ならなんでもないことがわからないという具合だから困ってしまう。困ってしまうというか最近ではそこに居直って自分の特色だと思っている。

いや、こんなことを書いているのは理由がある。先ほどまでただ塾の中学校数学の先生を務めていたのだが、生徒さんがまったく計算問題をやってくれない。それでこまって難しそうな問題のどれを解いてみせたらいいかと、尋ねて数問の連立方程式を解いてみせた。

こういうことの繰り返しで少しづつ関心をもってくれたらいいのだがと思っている。

私も中学生時代に計算嫌いの中学生であったから、この中学生の気持ちはわからないでもない。一般に数学の好きな人は数式の計算や数の計算でも嫌わないようだ。

高校生のころだが、問題集の中にある私には全く面倒だとしか思えなかった計算問題もすべて同級生のO君が解いているのを見せてもらったことがある。

このO君は有名大学のK大学工学部電気工学科を卒業して日本電気だったかに勤めておられた。優秀な方はまったくちがうものだと思っている。


今日か明日かのつもりだったが、

2024-06-25 15:35:40 | 物理学
今日か明日かのつもりだったが、昨日数学・物理通信14巻4号を発行した。一日二日かが待てないくらい私はせっかちである。

送付先だが、78か所だと書いたが、あと9か所増えて87か所である。自分の出身の大学の研究室のOBの方に送付していたことを忘れていた。

待ちきれないというのは私のわるい癖だが、それだけではない。いつまでも懸案の事項が残るのは嫌だという気持ちがある。そういうことでご了解を得なくてはならない。

編集と発行にかける時間は結構かかるので、こういう作業をしたことのある人ならわかってもらえるのだろうか。時間がかかって嫌だという気持ちを。

もっともそれならそういう雑誌の発行を止めればいいではないかというご意見を持つ方もおられようか。

その志の高さを評価してほしいものだと思うのだが。もっとも、これは自分が好きでやっていることだから別に他人からほめてほしいわけではない。

いや、誰かから少しほめられたくらいで、続けてやれるような種類の仕事ではないと思っている。

編集人は私も含めて3人だが、筆頭の編集者の友人の数学者Nさんは現在施設に入っており、私の編集を手助けしてくれる状況にはない。でも彼が私の提案を快く受け入れて賛同してくれなかったら、このような雑誌は発行できなかったろうから、Nさんには感謝の念しかない。

ここ数年編集者として働いて下さっている、Sさんには難しい論文の査読で大いにお世話になっている。彼なしの数学・物理通信は考えられなくなっている。







数学・物理通信14巻3号を昨日発行した

2024-06-18 10:01:31 | 物理学
数学・物理通信14巻3号を昨日発行した。

私の親戚の者にも「数学・物理通信」を送っている。これはみんな理系の人たちだけにではあるのだが。読んだという反応があるのは義弟だけであとは多分読んではいないだろうか。

親父がもしくは叔父(伯父)に「変なことをやっているのがいてね」とでも他人には話しているかもしれない。その辺はどうでもよいのだが。

昨日もこのブログに書いたと思うが、送り先は78件であり、思ったよりは少なかった。2009年の年末に始めたからそれでも10年以上続いていることになる。

およそ巻数が示す通りの年数だが、はじめの一年は巻が二年合わせての巻数だったような気がする。あまり巻数をつけるという意識がなくて、そういう変なことになってしまった。

無料だし、もちろん編集人も無報酬である。これは編集者はもちろんだが、投稿 者からも一切お金とか費用とかは徴収していない。もちろん原稿料など払ったことがない。

それでもなんとか発表者というか投稿する人はいるから不思議である。もっとも何かを書きたい張本人は私である。だから続いたともいえる。

誰からも褒められたこともないが、けなされたこともない。要するに無害無益だという訳である。

徳島科学史会という科学史関係の会を行っている方々がおられて尊敬に値する仕事をされている。彼らは20数年、いや、30数年にわたって年間1号だが雑誌を発行している。その努力たるやすさまじいと言える。

この方々が直面しているのは会員の死去等による減少である。そうすると財政的に成り立たなくなってくるかもしれない。

そういうことは幸いなことに「数学・物理通信」の場合には全く心配の必要がない。だが、私の知り合いの方々の逝去は私にはどうしようもない。

いずれにしても心配しないで済むシステムなどはこの世にはないということだろう。

(2024.6.26付記)
私の出た大学の研究室のOBの方々に9人送っていた。実はもっとOBの方々には送っているのだが、OBの名簿からお送りしている方々が9人いたのを忘れていた。合計87名の方々にお送りしている。




数学・物理通信の送付先は

2024-06-17 14:05:29 | 物理学
数学・物理通信の送付先はいくつあるのか。メールアドレスを整理して数えてみた。

アドレスは増える一方で死亡される方や生死は不明だが、メールのアドレスが届かなくなったりしている。

そういう増減を経て、いま78ヶ所に送っていることがわかった。多いというのか少ないというのかわからない。100か所を越えていると思ったのだが、さすがに100か所は越えていなかった。

印刷物として発行しているものでも国会図書館が所蔵の対象にするものは100部以上を発行している印刷物というから、まだまだそれには及ばないことになる。もっとも名古屋大学の谷村先生のサイトで不特定多数の方が数学・物理通信を閲覧されていると思う。

人の生死はなかなか予測不可能である。私の知人・友人でも亡くなった方がけっこうおられる。少なくとも30人は下らないであろう。あまりよくは存じ上げない方を含めると50人以上になるであろうか。

生老病死、人生はままならないものである。

さて、これから14巻3号の発行をしようか。
 

「Levi-Cvitaの記号の縮約再論1」

2024-06-15 11:42:47 | 物理学
数学エッセイ「Levi-Cvitaの記号の縮約再論1」の改訂版を数学・物理通信14巻4号に掲載するために点検中である。

もう1週間も以前に入力済であったのだが、昨夜点検をしたら、いくつかのミスを見つけた。これは式の番号が変わっていることとか入力中に変なパソコンミスが起こったのを見逃していたのである。

このブログの入力もせっかく入力して公開しようとしてどこかにデータが飛んで消えてしまうということなど最近では多い。理由はよくはわからないが、メモリが不足してきているのではないかと思っている。

それとメールソフトoutlookのversion upか何かで元々のocnのメールが使えなくなっている。パスワードを更新すれば、元にもどるらしいのだが、そこまでの手続きが分りずらくてまだ復旧を果たしていない。

一時このブログもアクセスできなかったのがこちらは今は復旧している。ocnの技術力が低いのではなかろうか。本来自分の顧客の不便を顧客に不便をかけないで復旧するくらいの技術力がいるのではなかろうか。

それとoutlookに苦情を申し込むくらいの気概がないのはどうしてなのか。おかしいと思わないでもない。こんなことで毎月のプロバイダーとしての使用料金をとるのは詐欺まがいではなかろうか。

いや、数学エッセイ「Levi-Cvitaの記号の縮約再論1」の改訂原稿を点検中ということを言いたかっただけだが、変な方向にとばっちりを向けてしまった。

「Levi-Cvitaの記号の縮約再論1」はベクトル解析に直接には役立たないが、すでに数学・物理通信に改訂版が掲載されている、「Levi-Cvitaの記号の縮約再論2」はベクトル解析に直接には役立つ。もっともタイトルは「再論2」ではなく「再々論」とそこではなっているが。

数学・物理通信14巻3号の編集をはじめた

2024-06-10 10:42:41 | 物理学
昨日だったか、一昨日だったか忘れたが、数学・物理通信14巻3号の編集をはじめた。

ほぼ記事は埋まったが、編集後記はまだ書いていない。編集後記は一応投稿原稿を見てから書くと決めている。編集者は私だが、私がすべての論文を理解しているわけではない。

「そんな無責任な」と言われると思うが、もし理解しないと発行しないという不文律を立てると、なにも発行できなくなる。少なくとも私にはそうである。

世の中には聡明な方がおられてなんでも理解できる方がおられることも事実だが、そうでないからこそこういう雑誌を発行できているというのが私にとっての現実である。

すべてを理解していなくとも原稿に注文をつけたりはしているのだから、不思議なものである。

ラプラス演算子の3次元の極座標表示

2024-06-05 10:45:29 | 物理学
ラプラス演算子の3次元の極座標表示についてのエッセイを何回か書いたことがある。一番面倒な真っ当な導出法も何回か書いたことがある。

だが、もしか始めから軌道角運動演算子Lが極座標で書かれていたら、そのL^{2}も計算が楽になるだろう。このことを書いているらしいのが昨夜書いた学習院大学の田崎先生の『数学』にある。

ということで記述の該当箇所の近辺のチェックを今朝起きてから始めた。まだ当該のところまでは達していない。もし演算子L^{2}が比較的簡単に計算できるとすれば、これは量子力学のシュレディンガー方程式を解く人にも大いに朗報となる。

教育はある程度の繰り返しも必要だが、学ぶ学生に不要な労力をかけないようにすることは必要である。どこかに記録があってそれを学べば済むようになっていてほしい。

生物の進化に個体発生は系統発生を繰り返すとかいうが、教育にはそういうところがある。だが、「個体発生は系統発生を繰り返す」というのだって要領よく繰り返しているから生物は存続しているのだと思う。

教育でもそうだろう。

(2024.6.6付記)
当該箇所をほぼチェックした。ラプラス演算子の3次元の極座標表示を導出する、いままで私がエッセイを書いた方法以外の導出法がわかったので、これについても書いておきたいと思うが、いまは文章にまとめるという意欲がわかない。

(2024.6.19付記)
ラプラス演算子の3次元の極座標表示を導出することをまともに導出したいと思っている人がいるなら、もちろんご自分でやってみるのもいいが、私がなんどか真っ当に計算したノートが「数学・物理通信」のバックナンバーにあるからインターネットで検索してみてほしい。そういうことで若い方の貴重な時間を奪ってしまいたくないから。

私も20代前半だったかにこの計算をまともに試み、1週間ほどを時間を費やして最後まで計算をやり遂げることができなかった記憶がある。

それなりに計算に工夫をしてあるレポが「数学・物理通信」のバックナンバーにあるはずだ。Bon courage.

田崎晴明さんの『数学』

2024-06-04 21:56:19 | 物理学
まだ十分には見ていないのだが、物理ための数学という観点では学習院大学の田崎さんの書かれている『数学』がとてもいいように思う。

田崎さんはかなり以前から『数学』を発表されていたと思うが、あまり詳しく読んだことがなかった。最近プリントしたので画面上ではなく紙面で読むことができるようになった。いやこれは私の事情である。

ベクトル解析に関心があるので、彼がベクトル解析についてどのように書かれているのかを学んでみたいと思っているが、なにせ忙しくて十分に時間がとれないのが残念である。

こういう良心的でかつ熱心で最高の著者がいるのは現代に物理学の学ぶ者にとっては幸せであろう。その利点をできるだけ享受したいと思うのだが。

ちょっと見てよかったのは3次元ラプラス演算子の極座標表示が簡単に導かれていることである。これは私などが馬鹿正直に計算して高名な物理学者のN先生から数学ギライをつくってはいけないとご注意を受けたことがある。それはそうなのだが。




『群と物理』

2024-05-30 14:46:57 | 物理学
ちょっと用があって、佐藤光『群と物理』(丸善)を走り読みしている。この本を購入したのはずいぶん以前である。

ちらっと見たことはあったろうが、部分的にでも走り読みしたことがなかった。なかなか要点を得た、いい本であるようだ。SU(2)の2価表現のことを知りたいと思って読みはじめたのだが、そこだけ読んでもわからないので、第3章の「リー群とリー代数」を読み始めたが、なかなか要を得た記述である。

もう数十年も以前にルートだとかウエイト(リー代数とその表現のこと)だとかについて学ぼうとしたことがあったが、十分に身につかないうちに沙汰やみになってしまったことがあった。

それらがいまようやく、すこしづづ関連付けられるかもしれない。



熱力学第一法則とマイヤー

2024-05-29 13:46:45 | 物理学
ここでいうマイヤーは統計力学の古い本で、マイヤー=マイヤーという通称で知られているマリヤ・ゲッペルト=マイヤーのことではなくて、熱力学第一法則の提唱者としてのマイヤーのことである。

このマイヤーを「ドイツ語圏とその文化」第2号で紹介したのだが、これはちょっとした数式が含まれていた。

それで3回目としてここにコピーをしようとしたが、うまくいきそうにないので、コピーはやめることにした。私自身は数式を少し含んでいるエッセイのほうが私が書いたらしくていいと思っているのだが。

力学で知られている力学的エネルギー保存の法則がある。もちろんこのときに熱エネルギーを含めたエネルギー保存則を考えられてはいない。その力学的エネルギーが熱エネルギーを含めて考えられるのではないかと考えた、始めの人が船医だったマイヤーだった。

マイヤーはあまり数学とか物理の知識が十分でなかったために、その論文は論旨がはっきりせず掲載拒否にあったという。しかし、いま言った熱エネルギーを含めたエネルギー保存するという考えは明白だったらしい。力学的仕事と熱エネルギーが互いに変換するという考えはその当時もすでにあったそうだ。

一時は精神を病んで精神病院にまで入院したとまで言われる。しかし、病気が癒えて退院して、その後、彼の論文のプライオリティは認められた。いくつかの賞を受賞したりするが、彼の研究生命はもう終わっていたという。

昨日紹介したレントゲンは研究では成功したが、晩年は第1次世界大戦のインフレで破産したというから、どの科学者も時代の波にもまれて苦労している。

レントゲンはノーベル賞の賞金はヴルツブルグ大学にすべて寄贈したそうだし、X線でパテント(特許)を取りませんかと、どこかの会社から勧められたが、取る気はないと経済的に恬淡としたところは、私たちには容易に見倣えないところだ。