5月4日、ルート君と二人で見てきました。ひとりで行ったならば、私はディカプリオの映画に行ったかもしれません。火星の荒唐無稽なお話も和製ゾンビ映画にも彼は拒否。蜘蛛男が新たに出てくるあの映画も気持ちが動かなかったみたいです。じゃあ、これだったらまあまあ面白いんじゃないのと、二人の妥協で選択して観に行った映画でした。
野村萬斎さんは一種独特の雰囲気の方で、奇人を演じたらピカイチ。そしてなんだかんだと言っても彼が出てくれば「大丈夫」と思わせてくれるんだと言うキャラなのかと思っていました。
だけどそう言うキャラではありませんでした。スキャナーの能力に押しつぶされ世捨て人のような暮らしをしていた仙石。
この映画で、私は中盤以降には瞼のふちが濡れだして、ラストシーンでは耐えられず涙が溢れました。
と言いましても、私が泣き虫である事は既にばれていると思いますから、泣いた=素晴らしい映画とは思ってはいただけないかもしれません。
ただ一緒に行ったルート君は、この映画にして良かったナと言っていました。
そして私もそう思いました。
この映画はモノの残留思念を読み解きながら犯人にたどり着くと言う推理物語ではありますが、すっきりとしたサスペンス好みの方には、後半の人間関係のドラマは冗長に感じる方もいらっしゃるのかも知れないとは思いました。いろいろと丁寧に描かれていますので。
だけど私は、この映画はサスペンスの形を借りたヒューマンドラマだと感じました。
なんたって脚本が「三丁目の夕日」の古沢良太ですからね。
そして古沢さんは、長い間『相棒』を書いていた方。
だからなのか犯人当てにだけ絞れば、あそこであるものが映し出された時から、ハハーン、この人がと分かりました。
でも衝撃的なラストって言うのは、そこだけじゃないんですよね。
是非とも続編を作っていただきたいと、私は思いました。
やっぱり萬斎さんは素敵です♪
下に貼った予告編の下にネタバレ感想を少々書きました。
映画『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』 予告編
【ネタバレしています。】
何といってもシナリオが丁寧だと思いました。
なぜピアノ教師の沢村雪絵はマイティーズの能力を信じていたのか。それに至るエピソードもちゃんと描かれていたことが凄いなと思いました。何気なくすれ違っているように見える日常で、人は皆絡み合って影響され合って生きているのだと感じました。
いつもながら不正確なセリフですが、
「人の記憶は嘘をつく」ー。
だけれど沢村雪絵の記憶は信頼に足るものでした。
この純粋で清らかな女性の存在が、能力によって人間のおぞましき姿ばかりを見て来てしまいすっかり人間嫌いになっていた心を解きほぐしたのかと思うと、胸が熱くなりました。
そんな清らかで純粋な人を木村文乃さんが演じたわけですが、この人の美しさと可憐さは凄く説得力がありました。
雪絵の残留思念と会話して、励まされ勇気づけられるシーンは良く出来ているなと思いました。
でも本音を言えば、ラストのクライマックスシーンで
その残留思念を自分に憑依させしゃべったり、犯人のラストドリームを操ったり、最後の別のシーンでは残留思念に「ありがとう」と言わせる。
これは残留と言うレベルのものではないじゃないか。この残留思念の概念はどうなってるんだと疑問には思ったのでした。確か車の中でその事の説明はあったように思いましたが、ちょっと納得が出来るものでHなかったように思いました。
まるで残留思念の暴走、または陰陽師の世界です・・・・あっ、萬斎の「陰陽師」はまた見たいな・・・。
だけど更なる本音。
そんな事はどーでもいいのです。
私はエリカの悲しい嘘、悟のつらい過去に・・・・
そして、すでに殺人鬼でしかない悟の最後の夢に安らぎを与えた優しさに泣きました。
でも一番ぐっときたのは、やはり最後の仙石の
「人間は美しいな。」と言う一言だったと思います。
繰り返しになってしまいますが、人間は醜くおぞましい生き物だと言っていた仙石の心を変えたのは、美しい心の女性の残留思念だったわけですね。