「精霊の守り人」に続いて、その続編である「闇の守り人」を読みました。
チャグムと別れたバルサは自分の故郷カンバルに向かいます。
精霊の守り人 (新潮文庫) | |
上橋 菜穂子 | |
新潮社 |
「精霊の守り人」も相当面白いと思いましたが、「闇の守り人」を読むと、まるでそれは人物紹介と設定紹介のようなものであったかのようにも感じてしまいました。
面白い !
面白すぎる。
もちろんこの物語には、チャグムの名前は出て来ても、帝の「ミ」の字も出てきませんので、悪しからず。
6歳のあの時、ジグロに連れられて、闇の洞窟を抜けて故国を脱出したバルサ。今また同じ道を辿って、カンバル国に戻ろうとするのです。
そこでカッサとジナの兄妹を助ける事になるのですが・・・・・
ティティ・ラン(オコジョを駆る狩人)と言う小さな人々、彼らが呼ぶ「大きな兄弟」、牧童。
ファンタジー色が強く、この守り人シリーズの世界観が広がります。
こんなファンタジーが日本にあったんだねえと、今更ながら感心してしまいます。
このシリーズの1作目「精霊の守り人」は第34回(1996年) 野間児童文芸新人賞 を受賞しました。
20年前と言えば、私の子供もまだ小学生だったわけで、知る機会を見逃したと言うことなんですね。
惜しい事をしたなと思います。
やっぱり良作のアニメ化ドラマ化と言うのは、時には知らなかったものを知らしめると言うことで大きな意義があるのかも知れませんね。
闇に潜む恐ろしいヒョウル(闇の守り人)・貧しいカンバルを助ける美しい宝石ルイシャ(青光石)・山の王と、その世界観の中では当然のように聞こえてくるそれらの存在。
ところがそれにはすべて秘密があって、その秘密が明かされた時深い感動が訪れるのでした。
そしてバルサの巻き込まれてしまった邪な王の陰謀は、更にもっと深い裏の物語があったと言うのがまた面白くて、この本もあっという間に読み終えてしまいました。
ファンタジー大河では全作ドラマ化と言っているので、来年以降のいつかこの物語にも触れる部分が出てくるかもしれません。なのでネタバレ感想は下の本の紹介の下に、ほんの少々書いておきたいと思います。
闇の守り人 (偕成社ワンダーランド) | |
二木 真希子 | |
偕成社 |
人間関係の絡み合いと人物表現が素晴らしいので、登場人物がみなイキイキとしているので想像の世界がまるで映像のように頭の中に飛び込んできます。
ジグロの兄弟の名前がユグロにカグロと分かりやすいです。
悪は悪として決着が着き、ジグロの出奔により苦しんできた人々の心が解放されたのは良かったと思います。
もちろん一番なのは、ジグロの汚名は晴らされて、そしてその魂も救われたことだと思いました。
これによってバルサのジグロの代わりに8人の人を助けると言う償いは終わった事になるのだろうかと言うのも気になる所ですが。
苦しい過去を乗り越えるには、それと向き合うしかないー。
闇舞いで突かれた胸には傷はありませんでした。でも肉体に本当に残っていた傷はあっという間に回復しても、その見えない胸の傷だけはいつまでも痛みを感じていたのは、過去と向き合った事の大きな代償だったのかも知れません。
古傷が痛むように、乗り越えた過去を思い出す時には、やはり胸はきりきりと痛むのかも知れません-。