京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

おれはきのうのおれではないぞ

2022年06月13日 | 日々の暮らしの中で

6月の寺子屋サロンも和やかに終えた。
ひとつ事が済むと、満ちていた意気がいったんしずかに引いていくのをいつも感じている。

紀元前1600年に始まった中国の古代王朝殷(いん)を興した湯(とう)という王は、生まれついてではなく努力して聖人になったという。湯王を補佐した名臣伊尹(いいん)は、
「時レ乃チ日ニ新ナリ」
(こレすなわチひニあらたナリ)という言葉が好きだったそうだ。
徳を古びさせるな、ということで、徳とは人に生きる喜びを与えるための人格的原理といっていい、と。民を新たにしつつ自らも新たに生きなければならない。

湯王は、毎朝顔を洗うための青銅製盤に、九つの文字を彫りつけた。苟日新 日日新 又日新。
  苟ニ日ニ新ナリ (まことニひニあらたナリ)
  日日新ナリ   (ひびあらたナリ)
  又日ニ新ナリ  (またひニあらたナリ)

司馬遼太郎は『風塵抄』で、「この詩句には近代の憂鬱や倦怠がなく、湯王が勢いよく顔を一洗して、おれはきのうのおれではないぞ、さらに一洗して、きょうはまたうまれかわったぞ、という素朴な明るさにあふれている」と記し、
「日に新たなりというのが生命の状態なのである。新たでない生命などはありえず、その平凡な事実を知るときに、精神があらためて奮い立つ」と言われる。

今日は用事もないのに友人と会った。面白そうだねと、映画「かば」を観る約束を交わした。
日に新たないのち。もったいないから楽しそうなこと、興味あることを積極的に見出して、今日一日を生きる。

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2 コメント

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湯王 (Rei)
2022-06-14 11:02:12
古代王朝、殷と言えば紂王の「酒池肉林」しか知りませんが
湯王は王朝を創設したのですから
聡明な王だったのでしょう。
湯王が勢いよく顔を一洗し・・・>
毎朝顔を洗う度思いを新たに新しく己を
奮い立たせたのでしょうか。
いつもながらむつかしい本をお読みですね。
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日に新た Reiさん (kei)
2022-06-14 14:45:19
「小間切れの世間話」とあとがきにあります。
新についてと題した一話ですが、一つ一つは短い文章です。
「政治・行政の組織もつねづね点検して細胞を『日に新』たにせねば、
部分的な死があり、やがて全体も死ぬ。」の一文が含まれています。

気まぐれで取り出し開いたのですが、
朝の洗顔では、今日は今日、新しい一日新しい自分!って気持ちを高めましょうか。
「日に新た」と紙にでも書いて貼っておきましょうか…。
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