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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 176 遥かなる山の呼び声

2016-10-04 16:55:34 | 映画観賞・感想

 山田洋次監督が倍賞千恵子を起用して制作した、いわゆる“民子三部作”の第3作である。私は確か一度観たと思っていたが、ラストのシーンは憶えていなかった。民子の切ないまでの女心が山田監督の手によって見事に表出され、観る者の涙を誘うラストシーンだった…。 

                    

 「めだかの学校 映画の中の北海道」は10月編として「遥かなる山の呼び声」が取り上げられ、10月3日(月)午後、観賞会が実施された。
 映画は1980(昭和55)年に制作されたが、タイトル名は、アメリカ映画「シェーン」の主題曲名であり、映画のストーリーも「シェーン」から着想を得たものと言われている。
 また、ストーリーは三部作の第1部「家族」(1970年制作)の続編という位置づけもなされている。

 映画は中標津町の原野にある零細酪農家が舞台である。夫と死別した民子(倍賞千恵子)は、亡父の残した牧場と息子の武志(吉岡秀隆)を女手一つで懸命に支え育てていた。そこにふらりと現れたのが、わけのありそうな男、田島耕作(高倉健)だった…。

             

 高倉健は寡黙な男を相変わらず好演している。倍賞千恵子は彼女の持ち味である可憐で健気な女、田島への儚い想いを演じきった。吉岡秀隆も天才子役と言われた才能を発揮し、農村の素朴な小学生を違和感なく演じている。
 倍賞千恵子にとって“民子三部作”は、彼女の代表作と言ってよいのではないだろうか?
 そう言い切れるほど、この映画で彼女の良さ、巧さが際立っていた。

 わけのありそうな田島耕作は、やはりわけあっての逃避行だった。田島は自殺死した妻に暴言吐いた金融業の男を殴り殺してしまっていた。田島の居所はやがて警察の知るところとなり逮捕されてしまう。そこから時を経て、感動のラストシーンである…。
 道新の「シネマの風景」では、そのシーンを次のように綴っているので拝借することにした。
                   
 「淡々と酪農郷の日々を描いていた映画は終盤、過去の罪を償うため汽車で網走刑務所に護送される田島(高倉)と後を追う民子(倍賞千恵子)、それぞれの思いが、雪原を驀進する鉄輪のごう音に共鳴し、クライマックスになだれ込む。手錠姿の田島に『出てくるまで待っている』ことを知らせるため、列車の中で民子と虻田太郎(ハナ肇)が大声で演じる劇中劇は、ただただ純粋に切ない。」

                    
               ※ 田島が民子のところを離れると話した後、民子が「行かないで!」と初めて田島の胸に抱きつくシーンです。

 山田洋次の巧みな脚本、演出。それを芸達者な出演陣がさらに増幅させて、感動の映画として結実したといえるのではないだろうか?
 観賞会に参加した50名を超える参加者もしばし感動に浸っていたようだった。
 名作である。