メディア等で最近「Society 5.0」という言葉を聞くことがある。「Society 5.0って、いったいなんだ?」という疑問を解こうと、畏れ多くも日本学術会議の学術講演会に顔を出した。
2月16日(土)午後、ANAクラウンプラザホテル札幌で「Society 5.0で北海道が変わる~AI・IOT・RT技術の地方深化~」と題する「日本学術会議 in 北海道」学術講演会に顔を出した。
講演会は、関係者はもちろん顔を揃えていたが、それと共に科学者を目ざす学生や、科学者のOB等に向けて、現在の科学界のトピックスについて理解を図るという側面があったようだ。私のような市民の顔もちらほら見えた。肝心の関係者による学術会議の会合はこの日の午前中に行われたようであった。
さて、肝心の「Society 5.0」とは、日本の科学界が提唱した概念だということだが、Society 1.0を狩猟社会、Society 2.0を農耕社会、Society 3.0を工業社会、Society 4.0を情報社会と規定し、その先に到来する新たな社会をSociety 5.0と称するということだ。そのSociety 5.0をもう少し説明すると「サイバー空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」を指すということである。
さらにこうした類の話になると、英語の略語が頻繁に登場する。本講演会の副題でも、AI、IOT、RTと登場している。皆さまにはご承知の言葉かと思うが、一応ここではこれらの言葉について確認してからレポを進めたい。
「AI」(artificial intelligence)はご存じのとおり、昨今盛んに取りざたされる「人工知能」のことである。
「IOT」(Internet of Things)は直訳すると「モノのインターネット」と訳される。「モノのインターネット」とは、様々な「モノ」がインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組みである。それによるデジタル社会の実現を指すということだ。
続いて「RT」(Robot Technology)だが、これは直訳すると「ロボット技術」ということになるが、これは割とイメージしやすいだろう。
最初に私自身が理解するために、本講演会で頻出した用語について紹介したが、講演会そのものは次のような構成となっていた。
※ 挨拶をする日本学術会議会長で、京都大学総長の山極壽一氏です。
まず開会式おいて、日本学術会議会長で、京都大学総長の山極壽一氏が学術会議の紹介と共に、本講演会の意義について触れられた。そして、3本の講演があった。それは、…
◇講演①「Society 5.0時代における科学技術・イノベーション政策」
文部科学省文部科学審議官 山脇 良雄 氏
※ 講演のトップバッターを務めた文部科学省の山脇良雄氏です。
◇講演②「ロボット技術とその知能化~現状と社会実装加速に向けての将来展望~」
日本学術会議第三部会員・京都大学大学院工学系研究科教授 浅間 一 氏
※ 講演をするロボット研究の第一人者の浅野一氏です。
◇講演③「農業におけるSociety 5.0の実現に向けて」
日本学術会議連携会員・北海道大学大学院農学研究院副研究長 但野 茂 氏
※ 講演をする無人トラクターの生みの親、北大の但野茂氏です。
講演は私のようなものにはチンプンカンプンだろう、と覚悟して出かけたのだが、意外や意外、各講師は私どものような門外漢が駆け付けると予想されたのだろうか?豊富な資料を用意していただき、丁寧な説明に終始してくれた。そのため、深くはいざ知らずそれなりに理解することができた3本の講演だった。
とは言っても、それぞれの講演を詳細にレポする力は私にはない。
3本の講演、そしてその後の総合討論を拝聴して、これまでAI、IOT、RTなどが独自に進化してきたものが、有機的な融合を図ることによって社会は加速度的な進歩が予想されるということだ。
なおSociety 5.0という呼称は日本独自のもので、諸外国ではそれぞれ呼称を用いて、来るべき新たな社会への準備を進めているという。日本学術会議としては、日本の科学者の総力を結集して、諸外国に伍していきたい、いや凌駕していきたいという思いを感ずることができた講演会だった。