オーストリアのヒンツェンバッハで開催されたWCジャンプ女子第7戦で、高橋沙羅選手は前日の第6戦に続き優勝し、3シーズンぶりのシーズン2勝を挙げた。ライブでTV観戦した私は高梨の快挙に歓声を上げるとともに、ジャンプ会場の異様(?)な風景に頭をかしげたのだった…。(※ 今回使用した写真は全てTV画面を写したものです)
高梨選手というと数シーズン前までは向かうところ敵なし、といった状態で世界へ行っても勝ち続ける選手だったことはご存じのとおりである。ところがここ3シーズン前くらいから各国の若い選手が台頭してきて勝つのが難しい状況が続いていた。(昨シーズン1勝、一昨シーズン1勝、一昨々シーズン2勝)3年前の平昌五輪でも銅メダル獲得がようやくであった。
※ 助走に入る前、緊張を高める高梨選手です。
※ 自らのジャンプに満足してTVカメラに手を振る高梨選手です。
そこで彼女は「一からジャンプを見直す」と発言し、長い低迷期間に入っていた。どこをどう見直すのか?素人には分からないレベルの高い話なのだろうと思われるが、彼女は彼女なりに試行錯誤を続けていたようだ。それがようやく実を結び始めたのかもしれない。
※ 優勝者インタビューに答える高梨選手です。
それで思い出したことがあった。今からもう8年も前のことだが、NHKが「天を翔る少女 高梨沙羅」という特集番組を制作したディレクターのお話を聴く機会があった。その中でディレクター氏は番組を通して「高梨沙羅のひたむきな姿」と「考え続けることの大切さ」伝えたかったと話した。彼女は人より脚が長いわけでもない。脚力が あるわけでもない。しかし《対策を考える》力があったという。
※ 表彰台で手を振るメダリストたちです。
高梨沙羅選手は自らのハンディを克服すべく、我々の知らないところで考えに考え続け、努力を継続していたようだ。それが今復活の道を歩み始めたのかもしれない。
とはいってもまだ2勝である。WCは世界選手権大会を含め、残り7戦のようである。せめてあと3勝くらいあげてほしい。そうなったとき、彼女は真に復活したといって良いのではないか、と思っている。きっと彼女はやってくれるはずである。
※ 今シーズンの高梨選手のWCの成績です。
ところで、リード文で触れたのだが今回の開催地のオーストリアのヒンツェンバッハも、前回大会開催地のドイツのティティゼーノインシュタットも、ジャンプ台以外のところは雪一つなく、青々とした光景が広がっていて冬景色からは遠い姿だったのだ。いったいこれはどういうこと?と思い、少し調べてみた。すると、WCを開催するようなジャンプ台では助走路(アプローチ)はレール上に氷を敷き詰め、それを冷却するシステムでなければ認可されないルールとなっているようなのだ。つまり助走路には今や雪は使用されていないようなのだ。ランディングバーンの方はもちろん雪が敷き詰められているが…。
※ このジャンプ台以外の光景を見てください。
そこで私は次のように想像した。今やヨーロッパも雪不足が深刻で、人々が住まう近くでは雪景色など見ることができないのでは、と思った。つまり現代のジャンプ台はそのほとんどを人工的に造成し、ランディングバーンの雪は遠くの雪山から運搬し、貼り付けて競技を行っているのではないのかと…。そうでなければあの異様とも思える光景を説明できないような気がするのだが…。
※ 住宅が立ち並ぶ街にもまったく雪が見当たりません。
自然の中で、自然を活用するスキー競技も、やがてはまったく人工的な環境で行なわれるようになるのだろうか?いや、すでにそうなっているのかもしれない。夏季に行われるジャンプ競技など完全に人工的な環境での競技会ですもんね。