田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 グリーンブック №268

2020-03-11 19:44:53 | 映画観賞・感想

 “グリーンブック”とは、1960年代のアメリカにおいて南部を旅行する黒人のためのガイドブックだったそうだ。その名が示すとおり、映画は黒人差別の問題をモチーフとした映画だったのだが…。

          

 映画は2019年アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した作品であるが、実際あった話を題材にしたものと伝えられている。

 時は1962年、インテリの黒人ピアニストとして名声を博していたドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)は、当時黒人差別が激しいとされていたアメリカ南部を演奏旅行することにした。その際のボディガード兼運転手として雇われたのが粗野で無学だが口の達者なイタリア系アメリカ人のトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)だった。

     

 ※ ドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)とトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)

 トニーはイタリア系アメリカ人として底辺の生活を送っており、黒人に対しても差別的なところをもった人物だった。そのトニーが黒人の雇われ運転手として8週間の南部への旅行を共にしたのだ。当初二人は粗野な白人と、教養があり上品な黒人というギャップもあってぎすぎすとした関係だった。しかし、シャーリーのピアノの腕前が並外れていたことでトニーのシャーリーに対する見る目が変わった。さらには、南部の演奏会において富裕層たちはシャーリーの演奏に拍手することはあれ、シャーリーに対しては食事をする場所も、泊るところも、トイレも全て黒人専用のところでの使用しか認めなかった。そうした処遇を目の前にしてトニーは怒りを覚え、次第にシャーリーを護ろうとするようになり、二人の間は親密なものとなっていった。

 と書いてくると、単なる二人の友情物語のように聞こえてくる。確かにそれがストーリーのベースではあるが、映画を観ている私には当時「ジム・クロウ法」という法律があり、公然と黒人(並びに有色人種)に対する差別が容認されていたアメリカ南部の社会のいびつさは想像を絶したものであったことに改めてアメリカの歪みを見た思いだった。(そのことが今のアメリカの社会の中でも底辺では通底しているのではないか)そして、そこになぜ北部の社会で成功していたシャーリーが乗り込んでいこうとしたのか、そこのところがもう一つ理解できなかった。そのことに対する私の明確な答えはないが、シャーリーはたとえ北部アメリカで成功したとはいっても、やはり白人と真の人間的な付き合いはできていなかったのではないか?だから自らのアイデンティティを探して南部への演奏旅行を思い立ったのではないだろうか?しかし、そこに待ち構えていたのは想像以上の酷い仕打ちだった、ということなのではないか、と私は考えたのだが…。

     

     ※ 演奏中のドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)のトリオです。 

 黒人差別を扱った映画としては2014年に同じアカデミー賞作品賞を受賞した「それでも夜は明ける」があるが、観終えた後の感想としてはこちらの「グリーンブック」の方が爽やかな気持ちで観終えることができたように思う。それはきっと、シャーリーとトニーが最後にお互いを分かりあい、いたわり合う存在となったからだと思う。いい映画だった…。



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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (おなら出ちゃっ太)
2020-03-12 19:28:17
これも観たい映画だったのですが、観ることができませんでした。
理由としては、
(1)観に行く都合がつかなかった
(2)レンタルDVDを借りても観るのに時間がかかるので二の足を踏む
などがあげられます。
本と違って、流し読みしたり、もどったりが難しいですからね、映画は。
早送りや巻き戻しはできても、本ほどには可読性がないですしー。

映画そのものには、ご紹介文を読んでますます魅力を感じます。
今もってアメリカ社会に通底しているであろう問題でしょうし、トランプ政権下での分断の問題もはらんでいるじゃないかと思います。そのいびつさは、アメリカ社会に限らず、日本や韓国でもあるんじゃないかとも感じます。
だって、同じ人間だもの。
返信する
人間だもの (おなら出ちゃっ太)
2020-03-12 23:03:53
これも観たい映画だったのですが、観ることができませんでした。
理由としては、
(1)観に行く都合がつかなかった
(2)レンタルDVDを借りても観るのに時間がかかるので二の足を踏む
などがあげられます。
本と違って、流し読みしたり、もどったりが難しいですからね、映画は。
早送りや巻き戻しはできても、本ほどには可読性がないですしー。

映画そのものには、ご紹介文を読んでますます魅力を感じます。
今もってアメリカ社会に通底しているであろう問題でしょうし、トランプ政権下での分断の問題もはらんでいるじゃないかと思います。そのいびつさは、アメリカ社会に限らず、日本や韓国でもあるんじゃないかとも感じます。
だって、同じ人間だもの。

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出ちゃっ太さんへ (田舎おじさん)
2020-03-13 16:14:34
 コメントありがとうございます。
 本ほどに可読性がないという指摘は、そのとおりだと思います。私もセリフがよく聴こえなかったりして臍を噛むこともありますが、それだけに集中して映画に見入るということもあるかな?とも思っています。
 差別という問題、ご指摘のようにどこにでも存在する問題なのかもしれません。ただ、自分が被害者の立場に立たない限り、そのことを意識していないだけかもしれません。それにしてもアメリカの黒人(有色人種)に対する差別の問題は根の深い問題だと再認識させられる映画でもありました。
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