北海道立近代美術館で開催中の特別展「トリック × イリュージョン」展の「見どころトーク」と題して同美術館の学芸員が特別展について「このように見ると作品の良さをより理解できる」という趣旨での解説に耳を傾けた。
昨日はダブルヘッダーどころか、トリプルヘッダーだった。午前中の野幌森林公園の観察会から帰り、午後は道立近代美術館で開催された学芸員トークに耳を傾けた。(そして夜にも私はコンサートに駆け付けたのだった)
解説は同美術館の野田佳奈子学芸員が務めた。野田氏によると、特別展は4章からなっているという。その4章とは…、
◆第1章 「リアル」をめぐって
◆第2章 オプ・アート
◆第3章 交錯するイメージ
◆第4章 デジタル・トリック
の4章からなっているという。そしてその1章、1章について具体的な作品を提示してその見方をアドバイスしてくれた。
第1章の「『リアル』をめぐって」はいわゆる写真のようにまるでそっくりの絵なのだが、子細に見ていくとそこには描いた絵の良さが見えてくるという。具体的な作品としては上田薫氏の「ジュエリーにスプーンC」が提示されたが、ウェブ上でその絵を見つけることができなかった。そこで同じ上田薫氏の制作の「なま玉子 B」を掲載することにする。この作品はチケットにも印刷されている作品なので特別展には展示されていると思われる。
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※ 上田薫の作品「なま玉子 B」です。
なお、こうしたまるで写真を見るかのような作品を「スーパーレアリズム」と称されていることは諸兄もご存じのことと思う。
第2章の「オプ・アート」であるが、「オプ・アート」とは、「オプティカル・アート」の略称で、錯視や視覚の原理を利用した絵画、彫刻の一様式で、平面上の幾何学模様と色彩の操作で遠近、明滅、振動などの錯視効果を狙ったものだという。
作品としてはヴィクトル・ヴァザルリ(ハンガリー人)の「HEGYES」という作品が提示されたが、これもウェブ上では見つけることができず、代わりに「Vega-Nor.」という作品であるが、錯視効果で真ん中の部分が球のように立体的に見えないだろうか?
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※ ヴィクトル・ヴァザルリの作品「Vega-Nor.」です。
第3章の「交錯するイメージ」は、規制の作品に手を加えることによって違う作品に生まれ変わらせてしまう技法である。私はお話を聴いていてパロディ作品を連想してしまったが、そうしたものとは違う領域のようである。
この領域の作品としては福田美蘭という画家が、黒田清輝が描いた「湖畔」という作品 の構図を変えることで違う作品として制作した作品が紹介された。福田美蘭は、こうした作品を制作することによって、見慣れた名画のイメージを一度くつがえして、再度新たなまなざしで原画に接することうながしているそうだ。
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※ こちらは黒田清輝の作品「湖畔」です。
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※ こちらが福田美蘭が描いた「湖畔」です。
第4章の「デジタル・トリック」は、最近のデジタル技術を駆使して、さまざまなトリック美術を制作・発表することのようである。
この章の作品としてはフジ森(札幌在住の藤木淳、寛子夫妻のコンビ)が制作した「花びんと鳥かご」という作品が提示された。作品はスリット状の作品に光を当てることであたかも作品名のような花びんと鳥かごが現れるという点が見どころのようである。
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※ フジ森制作の「花びんと鳥かご」です。
いずれにしても、今回の特別展は何の予備知識も持たずに鑑賞をすると、もしかするとその作品の面白さを十分に楽しむことが難しいのかもしれない。そうしたこともあって、私は前売券を入手しながらまだ特別展の観覧をためらっている。この後、関連の講演や講座がまだ控えている。それらをお聴きした上で、おもむろに特別展に向かおうと思っている。