さすがに鍛え抜かれた音楽エリートの集まりである。道内の吹奏楽界において最高峰を往く北部方面音楽隊の音は、一つ一つの音が正確に、そして繊細に私たち聴衆に届けられた。
昨日(2月23日)午後、札幌コンサートホールKitaraにおいて「陸上自衛隊北部方面音楽隊」の第89回定期演奏会が開催され、鑑賞を申し込んだところ運良く入場券を入手することができて楽しむことができた。
コロナ禍が収まりつつあり、こうした類の集まりも満員の聴衆を入れることが多くなってきているようだが、今回は座席を一人おきにするなど対策を講じながらの演奏会だった。
演奏会は48名の選び抜かれた精鋭たちによって演奏された。その演奏曲目は下のプログラムのとおりの7曲だった。この他にアンコールとしてエンリオ・モリコーネの「ニューシネマ・パラダイス」で賑々しくステージを締めた。
その中で私が注目したのは、最初に演奏された「行進曲『煌めきの朝』」である。司会の方が「この曲の作曲者:牧野圭吾さんは札幌の高校生です」と紹介があり、しかも「この曲が2023年度の全日本吹奏楽コンクールの課題曲に選ばれた曲です」とアナウンスされたのを聞き俄然注目した。そして演奏された曲が演奏の技術とも相まって素晴らしかった!私は演奏中にもかかわらず、感動を忘れまいと「静と動のバランスが抜群!」と走り書きをしたほどだった。行進曲の力強さと爽やかさが見事にマッチした曲であり、演奏だった。
帰宅した私は早速、牧野圭吾さんのことをネットで調べた。牧野さんは札幌月寒高校の3年生だそうだ。中学時代は吹奏楽部で活躍したが、高校では吹奏楽部には入らずに独学で作曲や指揮法を学んできたという。そして将来はクラシック界の指揮者か作曲家を目指したいという。素晴らしい才能が札幌にいることを誇らしく思った。
前述したように全ての演奏が素晴らしかったのだが、その中から私が特に「良かった!」と思ったのは、「行進曲『煌めきの朝』」と共に、三曲目の「陽はまた昇る」と六曲目の「エルザの大聖堂への行列」だった。ところが私が好んだ三曲は期せずして、プログラムの曲目解説に掲載されていない曲ばかりだった。このことが何を意味するか…。
北部音楽隊にとって私が好んだ三曲というのは、いわゆる “軽い曲” だったということではないか、と私は考えた。対して、曲目解説に取り上げられた曲は北部音楽隊にとっては 今回の定期演奏会に向けて意欲的に取り上げた曲ということなのではないか?司会の方が 二曲目の「吹奏楽のための『深層の祭』」のときなど「不協和音が中に混入されていたりして作曲者である三善晃のいわば実験的曲である」旨の紹介をされていた。その他の曲でも、明らかに難しいと思えるようなフレーズが散見される曲が多かった。私が好んだ曲は、いずれもが耳に心地良く、音楽隊もどこか余裕をもって演奏していたように聴こえた。
まあ、このあたりが私の音楽レベルということなのだが、今回の北部音楽隊の演奏について総論を述べるとすれば、何度か触れているように非常に水準の高い吹奏楽の演奏を聴かせていただいたという思いである。人気も高い音楽隊なので毎回聴くことは困難かもしれないが(事実、1月にあった室内楽演奏会は外れてしまった)機会あるごとにこれからも積極的に応募し、楽しませていただきたいと思っている。