田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 ムーンライト №281

2020-03-27 15:50:04 | 映画観賞・感想

 難しい映画だった…。哀しい映画だった…。この世に生まれた属性、環境によって人の一生が決まってしまっているような現実になんともやりきれなさを感じながら画面に見入った私だった…。

         

 コロナ禍によって外出自粛要請が発出されてから、すっかり外出が億劫となってしまった。そして考え付いたのが「家でDVDを観よう!」ということだった。その際に「この10年間に日米のアカデミー賞の作品賞を受賞した作品を観る」という一つの“枷”を自分に課した。その自分への課題もここへきて残り「シン・ゴジラ」(2016年制作)と「ハートロッカー」(2008年制作)の二作品だけとなった。

 ということで本日は2017年のアカデミー賞最優秀作品賞の輝いた「ムーンライト」(2016年制作)の感想を記すことにしたい。

 映画は、マイアミのアフリカ系アメリカ人が集住する貧困地域に生きる母子家庭の少年シャロンの物語である。シャロンの役を成長の段階に従い3人の俳優が3つの年代(幼年期、少年期、青年期)で演じる中で、自らのアイデンティティを模索しながら生きる姿を追ったものである。   

 幼年期のシャロン(アレックス・ヒバート)は体が小さく、そのこともあってか恥ずかしがり屋で、引っ込み思案だったために黒人の多い学校の中でいつも苛められていた。そんなシャロンを助けたり、可愛がったりしたのが地域の麻薬の売人のフアン(マハーシャ・アリ)だった。

      

     ※ 麻薬の売人フアンはシャロンに自らの幼少時代をみたのだろうか?

      シャロンをまるで実子のように優しく接する。

 少年期になってもシャロン(アシュトン・サンダース)はいつもおどおどしていて、周りからの苛めの対象だった。彼を助けていたフアンはすでに亡くなり、唯一の肉親である母親は麻薬のおぼれ、麻薬を入手するために売春まで手を染めるなど、シャロンは救いようのない環境の中で生きていかねばならなかった。そうした中、彼の唯一の友人はケヴィン(ジャレル・ジェローム)だったが、ケヴィンもまた苛めのグルーブには逆らえなかった。ある日、いつものように苛めを受けたシャロンは、次の日に彼を苛めた少年を椅子を振り上げて徹底的にやり返す。そのため彼は少年院に送られてしまう。

 それから数年後、20数歳になったシャロン(トレヴァンテ・ローズ)は、まるで別人のように筋肉隆々の青年となっていた。彼は少年院で知り合った仲間から麻薬の道に引きずり込まれ売人として生活していた。そうした中で古い友人だったケヴィンと再会を果たすのだが…。

   

   ※ 左から順にシャロンの成長に応じて俳優が変わっていった。

 映画を観ながら、私はやりきれなさを感じていた。アメリカの黒人の貧困地区においては暴力が支配し、行き場のないやりきれなさを麻薬に逃避する…。そうした中で育った少年はそのことを忌み嫌いながらも、いつしかまた自分もその世界に染まっていく…。そうした悪循環を生んでいるのではないだろうか、と…。

 私はこの映画の良さを十分に受け止めたわけではない。専門家の評によると、「本作は、人種的マイノリティの中のさらにジェンダー的にマイノリティの主人公が受ける何重もの苦難を描きながら、美しい恋愛映画でもある」という。恋愛という意味では、シャロンは唯一心を許したケヴィンとの間に友情以上のものを感じながら生きてきたことを示唆しながら映画は終わる。またある評では「きらめく映像美」との評も見られたが、私にはそうとはどうしても思えなかったところがある。ただ、シャロンが慕ったフアンと海辺にいる時に、フアンが「月明りで、お前はブルーに輝く」とシャロンに話すシーンがある。そこにはどんな人種であろうと、月明かりの下ではそれぞれの個性がより輝くということをフアンは言いたかったのかな?と思われる。そしてその言葉はこの映画のタイトルともなっている。

 時にアカデミー賞は凡人をおおいに悩ませる…。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。