「すべての子どもが学びの機会に出会い、自己実現に向けて挑戦できる社会」を目ざし、その環境づくりに取り組んでいるのがKacotamという若者のグループである。彼らの実践を聴いた。
私のレポートは時間が前後する。11月6日(月)夕刻(つまり同じ日にあった「禅をきく会」の開催前である)、札幌パークホテルにおいて「札幌ユネスコ協会」が設立75周年の記念講演会に NPO法人Kacotamの理事長・高橋勇造さんが講演すると知って駆け付けた。
Kacotamの高橋勇造さんについては、私が所属する退職組織において5年ほど前にお話をお聴きし、感銘を受けていたこともあり、その後どうなっているのだろうとの関心もあった。
この日の演題は「子どもの “やりたい” をカタチにする学びの場づくり」と題するものだった。
高橋さんご自身は30代半ばとお見受けするが、北大大学院で経済学を研究されていた方ということで、教育と直接関わっていた方ではなかったようだ。ただアルバイトで家庭教師を経験する中で、子どもの貧困や虐待という問題に関心を持つようになったという。そうした子が学習の機会さえ満足に与えられていないことに心を痛め、なんとかしたいとの思いが募ったようだ。
高橋さんは、大学院を修了後、民間会社に職を得るが、同時に個人で任意団体の「Kacotam」を起ち上げ、職も辞し一人で活動を始めたのが2012年のことだという。それから徐々に高橋さんの活動を応援する仲間が増え、2年後の2014年認定NPO法人格を取得して昨年設立10周年を経過したところだという。
ちなみに「Kacotam」という団体名は「か(Ka)んがえる、こ(co)うどうする た(ta)のしむ(m)」からとった造語だそうだ。
高橋さんは言う。「Kacotamの最大の目標は『学びの機会格差問題』の解消です」と…。そして貧困家庭の子どもたちに無償で学習塾のように学習支援の活動を続けたそうだ。しかし、実践を続けていく中で、単に子どもたちの学力を上げることだけでは限界があることに気付いたという。そして現在は下図のようにあくまで「学びの支援」を中心にしながら、その活動を補強する「コンサルティング」や「アドボカシー」にも力を入れているという。「学びの支援」も単なる学習塾を追随するようなものではなく、①学習に取り組める環境づくり、②視野が広がる環境づくり。③つながりができる環境づくり、とウィングを広げているとのことだった。
「コンサルティング」は、子どもの学びの場をつくりたい団体を積極的にサポートする活動だそうだ。つまり同じ志をもった仲間を増やそうという活動のようだ。
そして「アドボカシー」は、講演会や学習会を通して子どもの現状を発信することだという。まさに今回のような講演会もそうであるが、社会に対して子どもが置かれている現状を積極的に発信することにも力を入れているということである。
Kacotamは現在札幌市内10拠点(正確に数字ではない)だけでなく、札幌市外にも拠点を広げ、江別、恵庭、苫小牧、そして東京にまで活動拠点を伸ばした現状にあり、これからも「すべての子どもが学びの機会に出会い、自己実現に向けて挑戦できる社会」の実現を目ざし取り組んでいきますと、結んだ。
こうした活動をKacotamは寄附金によって賄い活動しているという。しかし、財政的にはかなりきついのが現状のようだ。高橋氏の理想を求める情熱と、それを支えるボランティアスタッフ200余名の応援によって成り立っている活動のようでもある。金銭的支援は私には無理な相談であるが、何かお手伝いできることはないだろうか、と考えてみたい。