ロシア国民にとっては、ウクライナとの戦争のことより自分たちがいかに楽しく生活するかが最大の関心事だ、と最近までFNN のモスクワ特派員だった講師は云った。いったいロシアの国内事情はどうなっているのか?講師の興味深い話を聴いた。
※ 関根氏のパワーポイントの1頁目です。写真はロシアの戦勝記念公園です。
昨日19日(金)午後、かでる2・7において「民放クラブ」が主催する講演会が開催された参加した。「民放クラブ」とは、道内の民間放送に務めた方々のOB・OGの方々の親睦会のようだが、その会が現役の放送関係者を招いてお話を伺う研修会的催しを開催しているのだが、その際一般市民にも門戸を開いているため私も参加できたのだ。
今回の講演会はUHF北海道文化放送の関根弘貴さんが「戦争すら “他人事” なロシア国民」と題して講演された。関根さんは2019年10月から2023年12月までFNN(フジテレビ系列28局で構成されるニュースネットワーク)派遣のモスクワ支局長として派遣された方である。
※ 講演をする関根弘貴さんです。
関根氏のお話をレポする前に、関根氏のロシア・ウクライナ戦争に対する立ち位置を明確にしておく必要があると思える。関根氏の立ち位置は多くの日本メディアが伝えるロシアを批判的に見る立場である。
関根氏は大きく二つの視点からロシアの実状について報告された。
一つは、ロシア国民(モスクワ市民)のロシア・ウクライナ戦争に対する関心度についてである。ロシア国民の戦争に対する関心度を表す言葉として関根氏は「ロシア国民は、政治は政治、自分たちは自分たち」という態度に徹しているということだ。一般国民(市民)は、日々の生活をいかに楽しむか?言葉を変えると、自分たちの生活を謳歌しているということだという。例えば、モスクワ市民は食事時にウクライナワインを愛飲しているそうだ。
ロシアのウクライナ侵攻が始まり、西側諸国は経済制裁に踏み切ったが、ロシアは “並行輸入” という手法で、第三国を通して物資を輸入し、スーパーなどの在庫は十分だということだ。また、アメリカの大企業であるスターバックスやコカ・コーラ、マクドナルドなどが撤退したものの、すぐにロシア国内では似たような商品が出回り、ロシア国民はそれで満足しているということだ。
こうしたプーチン政権が “戦争感” を滲ませない政治が国民を鈍感にさせている一つの要因でもあると関根氏は指摘した。
※ 左からロシア版のケンタッキー、スターバックス、マクドナルドだそうです。
これでロシア国民は十分に満足しているそうです。
二つ目に関根氏は「ロシアの “プロパガンダ教育”」の実状について話された。
ロシアでは最近 “歴史教科書” が改訂されたという。(高校生年代向け)そこでは特別軍事作戦(ロシア・ウクライナ戦争)について28頁も割いて、作戦を遂行した大義を掲載しているそうだ。また、高校生年代には “軍事教練” が復活したそうだが、それに対する拒否反応はないということだ。但し、“部分的動員” 令については忌避感があり、プーチン政権支持率が一時低下したことで、“愛国主義政策” 加速したとも云う。関根氏の言では「日本の戦前・戦時の教育と酷似している」とも話された。
※ ロシアの新しい歴史教科書についての説明の図です。
プーチン政権はメディアを完全にコントロールしているが、インターネットの世界は支配することができていないという。そこにアクセスすることにより、ロシア国民の一部には国内の空気と違うものを感じ始めている国民もいるが、大きくは変わらないだろうと関根氏は云う。それはロシア国民が政治に対しては “諦観” しているところがあるからだ、
という。
それがロシアに4年間滞在した関根氏の結論のようだった。
国の政治に対して “諦観” するということは、国民としてとても不幸なことではないだろうか?国の政治に対して、私たちも別な意味で “諦観” してしまっている場合があるのではないだろうか?私たちは政治に不満がある場合には異議申し立てができる国に生きていることを改めて感じさせてくれた関根氏の特派員報告だった。