いつだったか、気になっていて読みたい読みたいと思っていた一冊の童話。
『100万回死んだ猫』のお話で、わざわざ買ってまで読んだ
猫好きさんにはたまらない一冊ではないかと思う。
100万回死んで生まれ変わった猫が100万人の飼い主に愛されていたにもかかわらず
誰にも心を開く事は無かったが、野良ネコとして生まれ変わり
出会った雌猫と恋に落ち幸せに暮らしていたが
その雌猫が死んでしまい、後を追うように死んだその猫は
大事な猫を失った悲しみに二度と生き返る事はなかったというお話だった。
十年前のポチコ
ある日の事いつものように猛暑を避けて
朝のうちは玄関先に停めてある車の下で涼み
家に前のある川まで下りて行って水を飲んでみたり
いつものような、極々普通の朝だった。
陽射しが強くなる頃家の中に入り、家の中でも涼しい場所で
のんびりと横たわってみたり、お腹が空けば餌を食べて水を飲んで
最近は缶詰のご飯なのでいくらでも食べられそうだが
食べ過ぎると吐いてしまう。
時々トイレが間に合わずに廊下を汚してしまうこともあったり
まあ、年だから仕方ないねって、粗相の後始末をしたり
いつもの出来事の繰り返しが、まだまだ続くはずであった。
しかしその日に限って好きな缶詰のご飯も食べずに
お皿の水はホンの気持ちだけ舐めたくらいで
すぐに廊下に横になってしまう。
暑いからバテているんだろうなって思っていた。
だって、そういう横になってるのもいつもの事だったもの。
お昼になっても午後になっても食事もとらずにただ横になって寝ているだけで
声をかけるとわずかに頭をもたげる。
老体の骨皮筋衛門のポチコでは、この夏の暑さは堪えるだろうなと思っていたが
夕方には歩く事もままならなくなり、ただすやすやと眠るだけで
この頃になるとただ事ではないなと感じる。
ひょっとしたらダメかもって、獣医師にも言われていたように
この間のような呼吸困難な様子も見られずに
ただ昏々と眠り続けているポチコ。
病院へ連れて行こうかどうしようかと思ったけど
このままジッと、見守っていてあげる事にした。
たぶん病院へ連れて行っても同じ事だと思ったから。
夜になってもポチコは昏々と眠り続ける。
少しずつ意識も遠退いていくようで、思わず声をかけるけど
もう返事をする事もなく、ただお腹が呼吸で動いているだけのようだった。
そして家の中でテレビの音や子供たちの声など
いつものような賑やかさを感じ…時計が12時を回ろうとする頃
静かに息を止めた。
可哀想にって気持ちはなく、長い間お疲れさまでした。
亡きばあちゃんが脳梗塞で倒れた年に産まれて
病院から家に戻って、小雨の中庭の隅で他の兄弟たちと固まっていたポチコ
あれから20年余り…22歳くらいになったのか?
ばあちゃんとどっちが長生きするかしらね?って、あの頃思っていたけど
すっかりとばあちゃんを追い越してしまったポチコ。
ずいぶん長生きをしてくれた。
もうゆっくりと自分の時間を満喫してもいいんだよね。
ちびっ子たちにも優しくしてくれてありがとう。
悲しいとか切ないとか…そんな思いはなくて
心の中にポッカリと穴が開いたようで
まだ信じられないでいる私にポチコの一つの時代が終わった。
あの100万回死んだ猫のように、生き返る事はなく
庭のお気に入りの場所に、コビと一緒に静かに眠っている。
ポチコ長い間ありがとう。
またいつか会えるといいね。
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