明治時代に華厳の滝に入水した旧制一高の藤村青年の辞世の文がある。『萬有の真相は唯だ一言にして悉す、曰く「不可解」。』 この事件のあとに後追い自殺が何件かあったそうである。昔、歌手の岡田有希子の飛び降り自殺もショッキングであった。アイドル絶頂期での自殺である。この時もまさに殉死のような後追い自殺が多発した。日本は昔より自殺に対するタブー感が少ないような気がする。キリスト教・イスラム教が固く自殺を禁じているのとは対照的に、例えば五穀断ちによる入定にて即身仏になれるという観念があり日本での古くからの信仰からもこのことが伺えるように思う。もちろん藤村青年や岡田有希子の自殺の原因は日本に根ざした宗教的なものではない。来世での救済や成仏を目指して往生を図った昔の人と、近現代人の自殺を同一視はできないが、日本人の祖先の記憶(DNA)が来世の理想郷へ誘っているのかもしれないと思うと何となく納得もできるのである。