先祖附を読むと決まり文句のように出てくるのが、「出精相勤候ニ付」という言葉で、いろいろ拝領することになる。
例えば九曜紋の御羽織などを頂戴すると、着てみたいと思うのが人情であろう。ところがこれは簡単にはいかなかったらしい。
原則として、「拝領之品は衣服ニ不限相用候儀不苦事ニ候得とも、御紋無之御制度(ママ)外之御品を拝領之節、其段届可有之事」とある。
いろいろ調べてみると、文政三年に「覚書」が発せられていた。
覚
父祖拝領之御紋之品 子孫依願着用被遊御免旨 文化三年被仰出置候處 此
節御様子有之以来父え被下置候御紋之品は其身拝領有無ニ不拘今迄之通
着用被遊御免 先祖より祖父迄拝領之御紋之品着用願は不被遊御免旨
但 先祖依武功被下置候品着用願 且又被下置候御小袖等自身は着
用不仕老父母之内え着用仕せ度との願は 是迄之通可被遊御免旨
右之通被仰出候條 奉得其意觸支配方えも可被申聞置候 以上
十二月
要するに家紋が入った御品の拝領はまさに特別であり、そうであるが故に又その取り扱いについても、一段の規制が設けられている訳である。
恐れ多い名誉の御品は、着用などせずに大事/\に家の宝としなさいということであろう。
考えてみれば、城下に「九曜紋」の羽織を着た人がたくさんウロウロしているのも問題ではある。
(藩法集7・熊本藩 p566-122 より)