吹き井戸や ぽかりぽかりと真桑瓜 漱石
私が少年期を過ごした熊本市出水の家には、自然湧水の井戸があった。出水町はあちこちに清冽な湧水がみられ、町名の由来もここからきているのだろう。
昭和28年の水害で、私の家の前の三軒程が流失したが、水が引いた後、地中に差し込まれていた竹筒から清らかな水がこんこんと湧き出ている風景は強烈で、私の脳裏から消え去ることはない。
我が家には地中に井戸側が三本ほど生けこまれている井戸があって、こんこんと水が湧いて満水状態だったが、溢れることはなく水位は一定であった。
私が釣ってきた小さな魚たちもここに放り込まれて成長した。冬は暖かく夏は冷たい有り難い湧き水であった。
夏になるとキュウリやトマト、時折西瓜やまくわ瓜も浮かんでいた。
漱石の俳句集からこのような句を見つけたが、熊本に於ける漱石の邸宅ではこのような「吹き井戸」の風景は見られなかったのではないか。
水前寺や江津湖周辺でしかお目に掛れなかったと思うが如何だろう。
井上陽水の「少年時代」などが聞こえてくると、思い出す私の少年時代である。