人吉の郷土史家・益田啓三氏著の「小説・人吉藩士新宮簡 球磨霧此ノ如シ はるかなる浪岡」は人吉相良藩を題材とした、二編の小説である。
第一編は人吉藩31代藩主の嫡孫ながら新宮家の養子となった新宮簡の、幕末から明治にかけて人吉藩の為に奔走したことが描かれている。
第二編は三代にわたる江戸定詰の藩士が、藩主の帰国に際し供を命ぜられ人吉居住となり、馴れない地で苦労を重ねる人物の話である。
夫々が実話であり人吉藩の歴史の一端を知ることが出来る佳書である。
昨日の晩は、東京からK氏が來熊、450年ほど遡り先祖を一にされる在熊の同名お二人と四人、談論風発楽しい時間を過ごした。
同族五家が枝葉を広げられているが、熊本のご一族が40家ほどあるとあるデータは伝えている。
ガラシャ夫人に殉死された名誉のお家柄だが、そんな集まりにご招待いただき、光栄の一言に尽きる。
再来年の大河ドラマは「明智光秀」だそうだが、ご先祖様が登場されることは間違いないだろう。
来年の事を言うと鬼が笑うというが、鬼を二度笑わせて期待して待とう。
一七八
口達之覺
御免極之儀、近年迄之通ニては諸御郡不同有之、去々秋
より御徳懸之仕法被改候處、末行（届・缺ヵ）所も有之候哉、去秋迄
も不都合之下見等いたし、高割ニて御免極、又ハ御徳掛
之節ニ至、損高之内何程は御土免ニ受除か申なとゝ願出
候處も有之候、不作之者御損引之上御了簡米等も被下、
何事も毛上有前を以明白ニ御免相極候様との御仕法ニて
御座候處、前段之通ニてハ被改候御徳懸之趣意呑込不申
麁略ニ心得候ニてハ無之哉、去秋まてハ被改候後年數も
無之事故、不行届との儀も可有之哉、尤一統御法不被行
との事ニては無之候得共、前段之通、所ニより今迄之癖
直り兼、不都合之下見等いたし、其外不心得之筋も有之
候へハ下方不直之筋と相聞、教示不行届於拙者共も恐入
候事ニ候、依之今度下方へ直ニも申聞候間、猶又各より
精々教諭有之正道ニ相心得、不都合之儀堅無之様可被申
付候、右之通重疊申教候へても萬一前段之通不心得有之
候ハヽ、村方ハ御了簡米不被下候、其上不直之筋ハ屹ト
糺明可被仰付候、尤上地御内檢へも、御徳懸例等之儀彌
以正道ニ相心得候様との儀、猶又御達も有之候由、所詮
下方正路ニ歸、不都合之儀無之、御法行レ候様可被相心
得儀各専務勿論之事
七月 御郡代
右之趣、御郡代出在村々庄屋・役人・小百姓共も、少々
宛呼出、直ニも申わたし候事
一七九
〇田方蟲痛之節、右痛田坪損引被差免、徳掛之仕法被仰
付儀ニ付御達之事 天明元年
一昨廿日之夕、於仁田市郎左衛門宅被申聞候ハ、此間田方
蟲痛之様子追々被相達候、蟲除之仕法色々いたし候ても
相替儀も無之様子ニ付、蟲入之坪々手早ク苅揚被仰付候
様有之度段御奉行中へ被相達候處、右躰之坪々早々見分
を受、手早ク苅揚申付候様、右之通ニては坪損引相成候
も可有之候得共、非常之事付ては差免、此段山本・山鹿
・菊池・合志同役中へ及通達候様、尤上地御内檢へも被
及御達候由、右御郡外ニも同様之蟲痛も可有之哉、不洩
様及通達候様申聞候事
八月廿一日 井澤 慶助
[付紙]「本行苅揚之儀強テひ仰付候儀ニて無之、下方願之
趣ニよつて取計被仰付候、尤苅揚ニ成候畝方熟之様
子ニより青米可有之、御蔵納難澁も可有之哉、此儀
ハ追て委ク相しらへ相達候ハヽ、譯を被立げ候由被
申聞候事」
一八〇
覺
田方蟲痛之儀、一坪之内ニも多少有之儀御座候、尤末日
々ニ通相増候様成坪々も多有之様子相聞申候、一躰未満
熟ニ至り不申、未熟勝ニ相見申候坪限ニ御徳懸を受候様
被仰付候ては、青米等も多く可有御座、其上隙取ニも成
可申哉、依之先ツ蟲痛ニてくたれ候分、見割畝ニて下見
仕、御徳懸を受申様ニ被仰付候ては、いか程化有御座哉、
且又晩田物ニも痛田方相見申候、右躰之坪々通分を見割
坪付を以苅捨候様被仰付候ハヽ、殘分ハ無難ニも相成可
申哉と奉存候、右之趣御内意奉伺候、以上
丑八月
本行之通候得共、たとえハ一坪之内半分くたれ、半分
ハ無難と相見へ候得共、追々痛ニ可相成様子候ハヽ、
一坪限不殘苅揚候も不苦候事
右書附貮通幷井澤氏最初之聞書共三通、一括ニして下益
城・宇土・葦北・阿蘇・南郷同役衆闕座ニ付、廻文を以
及通達候事
一八一
〇天明三年卯二月御免方御仕法之儀ニ付、御郡代存寄之
趣相達候處、安永三年より之御仕法少々被引改、御達
ニ相成候一巻
[付札]「此御達ハ扣洩も有ルと見候事」
一御免方之儀潤色被仰付、最早去年迄九ヶ年ニ相成申候、
貮割五歩之了簡米をも被為拝領結構ニ被仰付置候處、潤
色被仰付候前後十七鉢稔之御損米荒増相考候ヘハ、年之
豊凶ニハより候へ共、潤色後之下米増方相見候處、的當
不仕故歟はきと下方の潤ニ相成不申様ニ奉存候、例等之
儀も正敷行兼申様子も有之、下方氣請悪敷、御役人より
之申聞も毎々事之様存候て心服不仕、却て姦を生シ歟申
歟、旁只今之通ニては觀農之教ニも相成不申候、遂年零
落之者も相増歟申様子ニ御座候、依之、潤色以前之通御
内檢・御惣庄屋積り突合、私共存寄を加、毛上相應之見
積被仰付、貮割五歩之了簡米は被指止、御免すり／＼之
作方ニて通方ニ成候所々、又ハ零落之村方其分難閣分ハ
御心付米被為拝領被下候様、左候ハヽ高分速ニ相決、御
土免御徳懸引上、上納幷諸作迄も手廻能上下之益ニ相成
申候、右之通御座候ヘハ遂年損高も減、被為拝領候御米
夫々的當仕、御郡中ニ行渡、往々御百姓氣晴も宜相成可
申と奉存候、前條之通結構成御法、取計ニ寄行届不申候
重疊歎敷存候ニ付、申談候趣御内達仕候、以上
二月但、四月と直、御郡方御 御郡代
奉行藪氏へ達ニ成候事
