サン・テグジュベリの「星の王子様」の翻訳者・内藤濯は、横井小楠に薫陶を受けた医師・内藤泰吉の三男である。妹が一人いた。
その妹は八代郡話鹿島村(1954年竜北町になる、現在八代市)の素封家・内田家に嫁いだ。
濯は晩年、この妹が歌っていたという「わらべ歌」を諳んじていて、「私の読書遍歴」にその歌詞を紹介している。竜北の方々でご存知の方が居られるだろうか。
向えのザボンは梅の花 朝はしぼんで昼ひらく 晩はしおれて門にたつ
門に立つのは千松か万松か まぁだ七つにならんさき お馬の上から飛びおりて
具足の袂に矢をうけて 姉からもらった笙の笛 弟からもろうた小刀(むしゃがたな)
姉御のお部屋においたれば まま母さんから探されて おお腹立ちや腹立ちや
そのよにお腹が立つならば 紙と硯を引きよせて 思う事を書きつけて
紫川に泳がしてみれば 浮いては沈み浮いては沈み アラ面白の浮き草やぁ浮き草やぁ
このわらべ歌にどのような曲が付けられていたのだろうか?
その地方独特の俗謡が次第に失われていく。内藤濯の没年は昭和52年(1977)だから録音などの資料が存在しているのかもしれない。