津々堂のたわごと日録

爺様のたわごとは果たして世の中で通用するのか?

■贋金つくりの後始末

2023-09-15 09:47:55 | 歴史

 豊前時代の細川家史料を読むと、領内に採銅所等と言う地名があり銅の採取が行われ、「銭」を作っている記録が見える。
しかし、熊本に移封後においてはこれがあまり見られない。幕末に至り各藩が贋金つくりに励んでいるが、熊本藩に於いては見受けられない。私の勉強不足だろうか。

 勝海舟の話をまとめた「氷川清話」を読むと、明治初頭各藩が作った贋金をつかまされた外国人たちが新政府に換金を求めてきたという。大久保利通(内務卿)が頭を抱え、人を介して海舟に相談に来たので「皆引き換えろ」と返事をした。大久保は海舟の言により決断して外国公館に「引き換え」を通告した。20万円に達したとされるが、海舟は大した金額ではなかったと述壊している。明治初頭のこの金額が現在どのくらいになるのかはよく判らない。

 何と言っても贋金つくりは薩摩が出色であろう。アーネスト・サトウの著「遠い崖」によると、「花倉御殿跡で贋二分金造りをしていた」とある。谷あいの隠れ里のような場所であり、大っぴらとはいかなかったことが伺えて面白い。
万延二分金に似せて、銀台に金メッキを施し通称「天ぷら金」と呼ばれる。
戊辰戦争の軍用貨幣に造られたもので、正貨の1/4で出来たからその益は750億円という試算がある。
さすがに明治二年六月以降大久保は、薩摩の密造を廃絶させたといわれる。

これは薩摩に限ったことではなく、会津・名古屋・薩摩・広島などをはじめ土佐・仙台・加賀・秋月・佐土原等の諸藩も戦費を確保するために同様の「天ぷら金」を作った。
「かます」に入れて温泉に浸して古金のように見せかけたとは加賀藩の記録に在る。

竹下倫一著「龍馬の金策日記ー維新の資金をいかにつくったか」をよむと、龍馬も積極的に贋金つくりを奨励している。
明治維新は「贋金」によって成功したともいえるのではないか、皮肉なことに明治新政府がその尻ぬぐいをした。

前に述べた通り熊本藩ではあまり「贋金」つくりの話は聞こえてこないが、筑前の黒田藩は太政官札を偽造までして汚名を蒙った。
筑前黒田の11代の殿さまは長溥公、薩摩からのご養子である。黒田藩の明治維新は熊本よりも程遠かった。

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■閏九月十五日の岩間六兵衛から長岡監物宛書状「綱利生母の素性」

2023-09-15 06:01:28 | 史料

武田信玄の嫡男・義信は、側近の者たちが父信玄の暗殺を企てた為罪を問われ、廃嫡の上幽閉された(28歳)。二年後には幽閉先で死去した。
岩間六兵衛はその義信の子だと綿考輯録は記す「武田信玄嫡孫之由、甲州没落之時幼年にて母つれて立隠れ、兼て小笠原殿御懇意故育置れ候由、武田六兵衛と申候、今度(千代姫入輿)御附被仰付候事御断候得は、秀忠公より一通り六兵衛を御旗本並に被召直、其上ニ而御輿入の御供可仕旨御諚二而御請申上候、此節より岩間と改候と也 (綿考輯録・巻二十八)」
他にも異なる説があるが綿考輯録の説を採用して置く。
その六兵衛が、光尚の側室が懐妊したことを家老の長岡監物(米田是長)に知らせた書状だが、側室(清光院)の素性について記されている。

(寛永十九年)閏九月十五日の岩間六兵衛から長岡監物宛書状(抜粋)
    懐妊之者御満足ニ被思召候通被仰下候、親ハたいかうのそうせふ様御内ニ而内海但馬と申候、
    此そうせふの儀ハ只今之広橋大納言御舎弟ニ而御座候、すしょうもあまりあしき物ニてハ無
    御座候間、先々大慶ニ存候、以下略

「すしょう(素性)もあまりにあしき(悪い)物ニてハなく」とし、その人物は「親は太閤の曽祖父(広橋大納言の弟)様の御内にて内海但馬」だとしている。
「御内」とは身内なのか、家来なのかよく理解できない。
細川家家譜においても「京都浪士清水道是女」としており、於豊前小倉御侍帳では「京都浪人・御客分・清水大納言」になっている。
広橋大納言は清水大納言になるし、「内海但馬はどこ行った?」という感じで、養女扱いにでもしたのだろうか、決定的な説明がなされていないように思える。

 光尚は当初、六兵衛から側室が懐妊したという報告を受け、堕胎を指示している。
六兵衛がこれを諫め、預かって、六丸(綱利)の誕生に至った。六兵衛は忠利の室・千代姫が小笠原家から嫁いできた時に付き添ってきて細川家臣となった人物である。
光尚の子綱利の誕生後もその功で、室の海津とともに力をもった。熊本城下の地図には、かっての第一高校があった現・九州郵政局庁舎裏手あたりに広大な屋敷があったことが判る。
懐妊した側室・清光院がその派手な金遣いに度々家老・松井興長の諫言を受けた人物である。

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