津々堂のたわごと日録

爺様のたわごとは果たして世の中で通用するのか?

■歴史は悲しい「小篠四兄弟と義犬・虎」

2023-09-08 11:01:18 | 歴史

 本妙寺参道の両側に並ぶ塔頭の左側の奥に位置して「雲晴院」がある。
ここに「神風連の挙」に参加して果てた小篠(おざさ)四兄弟の墓地があるが、脇に四男・源三が愛した「虎」が埋葬されている。
桜山神社には「義犬虎」という碑が建立されている。明治九年十一月廿ニ日出版の熊本新聞・第百卅号には次のように記している。

    哀れにも又珍らしき一話あり、第一大区三小区高麗門士族小篠某は兄弟四人共凶徒の内なりしが、某
    末弟小篠源三幼少の時肥前嶋原へ渡海せし折一疋の狗児を見て遂に連れ帰り、やゝ成長に従ひ、一家
    挙つて是を愛し殊に兄弟四人の内若他行すればいつも行衛を尋ぬる有様なりしが、本月初に至り兄弟
    の人々自尽せし折柄此狗魚類の料理捨を喰わんとするを、家僕が戯れに狗に向ひ、斯迄汝を愛せられ
    し主兄弟共に死に就給ひしに今此魚肉を食うに忍ひんやと云を聞、狗は忽ち首を垂れて退きしが、其
    後行衛しれされば一家不思議におもひ一両日を過ぎて兄弟の墓所なる寺へ参詣したるに、犬(ママ)
    数日食を断たる有様にて痩せ衰え、彼の墳墓を守り居たり、皆々涙にくれて呼へとも更に応せず、拠
    なく縄を付屋敷へ曳帰り、門を出さる様気を付ありしか夕暮に至り猶行衛を失ひ、方々捜索すれ共知
    れす、一家心を痛めしか翌日に至り屋敷の隅なる大樹の本に此狗自ら舌を喰切り斃れ居たりと云。旧
    藩の昔忠利公のお鷹二羽は火葬の火に飛入、重賢公の御寵犬は犬牽の津崎五助と共に殉死を遂たりし
    は、本県の人口に膾炙する処なるか小篠氏の犬(ママ)も亦比類なるへし。

四人兄弟が想いを一にして志の為に若い命を捧げたこと自体に涙に誘われるが、「虎」のこの逸話はさらに悲しさを増幅させる。
神風連資料館・収蔵品図録には「餓死」とあるが、此の記事では「舌を喰い切った」とあり、これはどうやら脚色くさい。

花園に住んでいたころ、本妙寺を散策するとお寺の角の低い塀越しに四兄弟のお墓が望むことが出来たので手を合わせたことだが、「虎」のお墓には気付かなかった。
仁王門下の参道の道路環境が随分変わったと聞く。ぜひとも本妙寺周辺を掃苔したいと思っている。

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■吉田傳太復仇現聞録(1)

2023-09-08 06:51:50 | 史料

古人云天道(網)恢々疎ニシテ不漏トハ信ナル哉 吉田傳太去慶應元(四)戌辰ノ年(1868)某ノ日旧藩主細川公旧領地今ヤ豊後國大分縣鶴崎龍興寺ニ於テ復讐ヲ原ルニ傳太ノ父ヲ平之助ト云 實ハ上羽蔀ノ第三子ニシテ 蔀ハ感公在世ニ用人ヲ勤メタル一ノ人物ナリ 吉田某ノ養子トナリ禄百五十石ヲ領ス 平之助天資明敏吏事ニ長ス 初メ穿鑿役トナリ郡代トナル 功績アリ 平之助築キタル所ノ新地今尚下益城郡松橋ニ在リテ新地嚆矢トス 累進シテ東京留守居役ヲ勤ル中文久二年(1862)十二月九日ノ夜当時用人ノ谷内蔵之允・中小姓頭ノ都築四郎・横井平四郎
   其砌越前春嶽公平四郎ハ通穪號小楠維新ノ初メ聘セラレ居
参與職ニ被任明治二年一月一日参内ノ途上郡山藩士柳田直藏ヨリ殺
   害ニ遇フ
直蔵懐中ノ書アリ其趣意ニ云 横井平四郎此者是迠ノ奸計ハ不遑枚挙候得〃舎之今般夷賊ニ同心天主教ヲ海内エ蔓延
   セシメントス 邪教蔓延致候節ハ皇国ヲ外夷ノ物ト相成ス事顕然朝廷御登用ノ人材ヲ及殺害候事深ク奉恐入候得共賣國之姦臣
   要路ニ塞リ居候得者前条ノ苐ニ立至候故不得止加天罰者天下有志人 又小楠ノ所著ノ天道革命アリ 其ノ論ニ云 夫レ宇宙ノ間山
   川草木人獣之属アル 猶人身四支百骸有ルガ如 宇宙ノ理ヲ不知者ハ首足ノ具アルヲ不知ニ異ナルヿナシ 然ハ宇宙ニアル所謂万
   國皆是一身体而無人我無親疎ノ理ヲ明シ内外同一ナルヿヲ審ニスベシ 古ヨリ英明ノ主威得宇宙ニ溥ク万国帰嚮スルニ至ル者
   ハ其旨闊達物トシテ容サルナク事トシテ取ラサルナシ 其他慈化慈育心口天下異ナルヿ能ナキナリ 如此ニシテ世界之主蒼生之
   君ㇳ可云也 其身小ニシテ一体一物ノ理ヲ知サルハ猶全身ノ痿テ疾痛疴痒ヲ覚サルト同シ 百世身ヲ終ルマデ觧悟ナスヿ能ハス
   亦可不憐乎 抑我日本ノ如頑固固陋世々帝王血脈相傳エ賢愚之無差別其位ヲ犯シ其國ヲ私シテ如此無忌憚嗚呼是私心浅見ノ甚
   シキ 可勝慨嘆乎 然ル二堂々タル神州三千年皇統一系万国ニ卓越ス國ナリト其心實ニ愚昧猥ニ億兆蒼生之上ニ居而己ナラス僅
   ニ三千年ナル者ヲ以テ無窮トシ後世又如此トシ思フ 夫人生三千年ノ如キハ天道一瞬目ノ如シ 焉三千年ヲ以大數トシ又後世無
   窮ト云ヿヲ得ンヤ 其興廃存亡人為ヲ以加計知乎 今日ノ如キ実二天地開闢以来興廃気運ナルカ故ニ海外ノ諸国ニ於テ天理自然
   ニ本キ悔悟発明文化ノ域ニ至ラントスル國不少 唯日本蕞示タル孤島ニ拠テ帝王不代汚隆ナキノ國ト思イ暴悪愚昧ノ君ㇳ雖モ
   堯舜鴻武ノ禪譲放伐ヲ得ヿ能ハズ 其亡滅ヲトル心セリ 速ニ固陋積弊ノ大害ヲ擾除シ天道無窮大意ニ本キ菰見ヲ看破シ宇宙第
   一国ㇳナランヿヲ欲セズンバアルベカラズ 如此ノ理ヲ推窮シテハ遂ニ大活眼ノ域ニ至ラシム者乎 方今改進自由ノ兩黨派タル
   者多クハ横井ノ門ニ出ル
四名ト東京府下酒樓ニ於テ平之助ノ出京ヲ命セラレタル離盃ノ宴會ヲ催シ居タル内内藏之允ハ突然御用ノ事起リ前キニ帰リシニ平之助平四郎四郎ノ三人ハ残リ居テ酒汲シ酒宴ノ最中何者カ面躰ヲ隠シタル者三名ノ者抜刀ニテ駈込ミ来リ斬リ懸リタルニ平四郎ハ逸シ早クモ逃走シ四郎ハ手ニ負イナガラ遁走シ平之助ハ踏ミ止リ相働キ所々ニ重創ヲ蒙リタルニモ不屈奮闘シタルゾ 三名者共モ其侭退散シタリト 平之助ハ一旦宿所ニ帰タルモ無程重創ノ為メニ死亡セリ 誠ニ其場ノ事タルヤ不慮ノ出来事ニテ何者ノ何ノ遺恨ニテ如斯狼藉ニ及ビタルヤ其事實一切分明ナラズ 其後平四郎ハ士道忘却致シ国辱ニモ係ル譴責ヲ蒙リ士席被差放都築ハ知行被没収平之助ハ前条ノ通リ相働キ死亡致タルニヨリ特典ヲ以テ家族扶助米八人口ヲ被下付セラレタリ
                  (2に続く)

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