すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

二人の話を、二つ続けて語る

2025年02月17日 | 絵本
 一昨年からの小さなマイブームは安東みきえである。『ふゆのはなさいた』『星につたえて』この二つの絵本を皮切りにして、児童書(物語)を読み、他の絵本も買い求めてみた。『ヒワとゾウガメ』(絵・ミロコマチコ)は昨秋に取り上げた。昨春に発刊されたのは『せっかちなハチドリ』(絵・降矢なな 文溪堂)も素敵な話だ。



 ヒワとゾウガメという対照的な二人が一つの島で暮らしている。ヒワは「ゾウ」という未知の動物がいることを知り、探しに出かけてしまう。おしゃべりなヒワを煙たがっていたゾウガメは、いなくなってから初めてその存在の大きさに気づく。途中で挫折し帰ってきたヒワとのやりとりに、時を超えた永遠性を見る。


 寿命の長さは、数々の別れを意味していた。だから簡単に「ともだち」にならないほうがいいと思ったゾウガメが、考え直す最終場面はシンプルだが力強い。「ぼくが ひゃくねん、わすれずにいるから。」という言葉をじっくりと噛みしめたい。個性的な描写が続く。荒々しいタッチゆえに落ち着いた語り口がいいだろう。



 主として熱帯に住むハチドリはとても小さな鳥で、最小は全長5㎝ほどだという。飛行力が強く一秒間に50回以上の羽ばたきをする。それゆえ、たくさんの栄養が必要で昆虫を食べるほかに花の蜜を吸い続ける。いわば急ぎ足の一生に対比されて登場するのが、マイマイつまりカタツムリ。問われているのは「心」だ。


 「神さまからプレゼントされた時間が、永遠とでもおもうの?」というハチドリの声は頷ける。しかし同時に「心」の存在を見えなくしてしまったら、時間そのものの意味は消えかかるだろう。ページごとの色調の明暗がくっきりしていて「人物」たちを惹き立てる。語りは声の高低・テンポの違いを工夫せねば…。